よりみち
パン!セ
中学生以上すべての人たちへ。
キミたちに、
伝えたいこと。





今日の、ひとことパン!セ

この世に生まれてきて、赤ちゃんは、 最初(さいしよ)になにを思ったろう。 抱(だ)き上(あ)げられ、温かな産湯(うぶゆ)をつかい、 お母さんのおっぱいに しがみついたとき、 なにを感じたかな。 形があるゆえに触(ふ)れることのできる、 この世界の優(やさ)しさに 感動したんじゃないかな。 きっとそうだ。


白川 静 監修 山本史也 著『神さまがくれた漢字たち』より

「白川文字学」との出会いは
いつだったか。
ともかくこれほど仰天したことは、
そうそうありませんでした。
学校で習っていた
「漢字の成り立ち」とは、
まったく異なる世界観がそこにはあって、
遠く古代の人たちが、「自然」や、
気配だけにとどまり
けっして姿を現さない「神さま」に、
どれほど畏敬の念を持ちながら、
日々の暮らしを営み、どんな意識を持ち、
またさまざまな知恵を作り上げていったのか。
そのことがじつに明解に、
そして人間の、うつくしい物語性をもって、
目の前に現れてくれたのです。
ああびっくりした、とはこのことでした。
白川先生とその文字学が、途方もない権威として、
かの地・中国で多大な尊敬を集めていることを知ったのは、
それからそう遠くはないときでした。
学校で教えてもらったり、参考書に満載されている
「漢字の成り立ち」の説明が、
いかに現代のわれわれにとって、
じつにスムーズに理解しやすいものか。
言い換えれば、都合のよい解釈のうえのものなのか。
遠く古代に創造されたものにアプローチしようとするさいには、
まず、現在われわれがもっている世界観や価値観から少し離れて、
謙虚な気持ちになることが必要なのだな、
とこころから思いました。

(編集・清水)





その15(最終回)
本は、手編みのセーターです。
清水 こうやるしかない、という
状況で出る著者の方の力って
ほんとうに、たいへんなものですね。
糸井 著者それぞれの向かいかたで、
何を考えて書いたんだろう、というのも
このシリーズのひとつの読み方になりますね。
このタイトルで、
この状況で読み手が待っていて、
さて、どうしよう、というせつなさが
ぜったいに最初にあるわけで。
伝えようとする内容そのものと、
筆者の姿そのものの、
ふたつのたのしみがある。
これは、出版としては、
ほんとうに、うまくいっていますね。
清水 最初に考えていたよりは、
おかげさまで、うまくいっています。
平均で5万部くらいは売れていますし、
15万部の本もあります。
想定した読者層に
確実に届いているという
印象も強くありますし。
よかったと思います、ほんとうに。
糸井 見事ですよ。
出版社がそろって「良心的なもの」を出して
愚痴を言っているさなかに、
思ったことをそのままやって、
一生懸命工夫して
結果がちゃんと出ている、というのは
「ほらね!」と言いたいところです。

本ってさ、発売されると
一見有名になっちゃうもんだから、
大量に生産される商品だと思いがちなんです。
でも、すべての本が
100万部売れているわけじゃなくて、
ほとんどの本は
1万部だったり2万部だったりします。
だとしたら、それは
巨大で多量なものをつくっているわけじゃなくて、
「手編みのセーター」程度なんです。
清水 ええ、そうだと思います。
糸井 なのに、「手編みのセーター」じゃないやり方が
正しいと言われちゃう。
だから、全部がつまらなくなるんです。
「ハッ、これって、手編みじゃん!」
と気づいた瞬間に、
誰かができるんだ、という考え方ができる。
「ほぼ日」もそうなんだけど
「そんな数のものだったら
 人力で対応しますよ」
ということがありますから。
清水 効率を単純に考えても、そうです。
「効率」って何だろう?‥‥
一般に効率的だと言われているものは、
意外とそうじゃなかったりもしますよね。
糸井 そうそう、ちがうちがう。
清水 非効率的に見えたものが
結果的に、行くべきところに
きちんと行きついたりして。
そのことは、
何と言うんでしょうか(笑)‥‥。
糸井 机の上で全員が眉をしかめていたことを
「僕、やっときました!」
って、いっぺんに
解決済みになることがあるからね。
「考えてみれば、たいしたことない」
って、もっと思うべきなんです。
このシリーズの売れ方だって、そうでしょう。
本の流通の道筋からすると、
ちょっと異例なかんじがしますよ。
清水 図書館にもたくさん入っているから、
手にしてくれる子どもたちが
多いんじゃないかと思います。
小さな本屋さんも
きちんとシリーズでそろえてくれたり
していますし。
糸井 最近は映画でもそうなんだけど、
「内容はいいけど、あたらないだろうな」
と以前は思ったようなものが、
ここのところ、
これまでにはない情報の流通をして、
しっかりあたっている。
その辺の動きは、これから
ほんとうに興味深いです。
清水 ええ。
教わることはたくさんあります。
糸井 ずっとやっていってほしいです。
「よりみちパン!セ」は。
清水 そうですね。
これからも、おもいろいタイトルが
続々刊行される予定です。
楽しみになさっていてください。

(ふたりのはなしは、おわりです)

2006-02-12-SUN

「よりみちパン!セ」の
「シミズとイトイのよりみちばなし。」は
今日でいったんおしまいです。
「ほぼ日」では、「よりみちパン!セ」を
これからも応援していきたいと思います。
シリーズの、あたらしい本が出たら、
このページで、そのつど
ご案内していきますね。

ご感想など、どうぞ
postman@1101.comまで
お寄せくださいね。



さーて、おたよりを紹介します!

=
雑誌で知ったこのシリーズ。
(まだ数冊ですが)
楽しく読ませていただいております。
『いのちの食べかた』で
「知ること」の大切さを教えてもらった。
たぶん、ボクたちが本を開いたり、
何かを伝えようとするのは、
そこからきてるんだなぁっと。
たくさんのことを知るべきだと思う
ボクたち子どもはもちろん、
きっと、
いろんなことを知っているつもりになったり、
忘れちゃっている
大人たちにも読んで欲しい、そんな本たちです。
(thu)



=
この連載で、シリーズのことを知り、
すぐにでも買って読んでみたい本が
何冊もあります。
信頼できる編集者が
真摯に企画して出しているという好印象です。

このようなシリーズが意欲的に作られ、
売れているのはうれしいことです。
自分のためにも、3歳1歳の娘たちのためにも
いずれ買っていくつもりですから
ぜひとも末永いロングセラーにしてくださいね。
地道に、ゆっくりていねいに。
(紀子)



=
はじめて「よりみちパン!セ」を書店で見て、
手に取ったときの衝撃は忘れられません。
私は中学生の歳を大きく過ぎていますが、
帯の
「中学生以上すべての人向けの本のシリーズ」
に泣けてきそうでした。
第2回の対談の、糸井さんの
「中学生以上分の知性は、
 ゲタを履いてる、と言えないか?」
は、まさに、そう!
思っていたことを、
ずばり活字にしてもらったああああ!
と思いました。ちょっとすっきりしました。
清水壇さん、
このシリーズを企画して、
世に出してくださってありがとうございます。
「ほぼ日」も、ありがとう!
(s)



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著者の方へのメッセージ、
編集長の清水さんへのメールを
postman@1101.comまでお寄せくださいね。





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