よりみち
パン!セ
中学生以上すべての人たちへ。
キミたちに、
伝えたいこと。




今日の、ひとことパン!セ

この世に生まれてきて、赤ちゃんは、
最初(さいしよ)になにを思ったろう。
抱(だ)き上(あ)げられ、温かな産湯(うぶゆ)をつかい、
お母さんのおっぱいに
しがみついたとき、
なにを感じたかな。
形があるゆえに触(ふ)れることのできる、
この世界の優(やさ)しさに
感動したんじゃないかな。
きっとそうだ。

田口ランディ『ひかりのメリーゴーラウンド』より

これから飛行機に乗るという
田口さんと、
空港で待ち合わせました。
旅行の予定を語る口調は
とてもエネルギッシュ、
だけど、田口さんの茶色い瞳は、
どこまでもしんしんと、
静かに澄んでいます。
旅をしながら、この瞳で、
田口さんが見つめるもののことに
思いをはせました。

このうつくしい物語には、
出会いと誕生と、
死が描かれています。
でも、「死」といっても、
それはけして、永遠の別れのことではない。
どこに行っても、なにをしていても、
思いを抱いて深呼吸をすれば、
確かにそのひとの存在を感じられるもの。
そしてまた、きっとめぐりあうもの。
「死」を通過した魂は、きっとそのように、
わたしたちの身近にある。
ひとりでも多くの、思春期のこどもたちに、
この祈りのような物語が届くことを、
願っています。

(編集担当 坂本裕美)





その14
本は、友だちの話とおなじ。
糸井 ひと月に1〜2冊、
雑誌のようなペースで出していくというのは、
ほんとうに、清水さんの「発明」だよ。
「もういっかい書いてもかまわない」
「いま読んでもだめ。あとで読むといいよ」
なんていうのが、書き手側からも読み手側からも
アリになっている。
とにかく、いろんな可能性のあるものを
まぜて出している、という
のびのびとした雰囲気があるんです。
いいじゃん、それで。
本って「従うもの」じゃないから。
友だちの話とおなじだから。
清水 そうなんですよ。
「正しさ」とか「結論」とかと
ちがうものをめざしたいです。
でも、明確な基準が
あるわけではないですから、
このシリーズには、きっと、人によって、
ぴったりくるものも、そうじゃないものも
含まれていると思います。
それに、本は本なんですけれども、
情報重視の雑誌よりも「なにか」が書いてある、
というムードが
このシリーズには合っているような気がします。
‥‥あぁ、ペースを保たなければ‥‥(笑)。
糸井 「いままでの『知』の大転換がここにあった!」
なんていう広告で売り出していたら
これらの本は、つくれませんよ。
清水 いやぁ、もしかしてそういうふうに
宣伝したほうがよかったかな(笑)?
糸井 だめだよ!
清水 (笑)。
糸井 いわゆる「頭のいいこと」というのが
世の中にはたくさんあって、
それがちっとも役に立っていないんですよ。
清水 役に立たないどころか、
邪魔になることもありますね。
考えることが
考えていることの邪魔をするかんじでしょうか。
糸井 みんな、得意なことを
しゃべる機会がないもんだから、
いつのまにか
苦手なことについて考えることが
好きになってしまったんです。
苦手なことだからこそ、
ガチガチになって一所懸命になっちゃう。

それは、知性というものが、
「不得手なことをなくしましょう」
という形でしか
進化させられてこなかったから、
‥‥というより、
退化させられてきたというべきか(笑)。
清水 そうですね。
で、ストレスたまって
みんな、機嫌が悪くなる。
なにかをなくすより
あることを豊かにしたほうがいいのに。
糸井 うん、そうなんですよ。
そんなことよりも、
「ほんとうにそう思っている」
素(す)のものの強さは、
みんなにちゃんと届くところまで
持っていけるんだ、
ということを
このシリーズは示しているような気がします。
清水 そうですね、
清々しい気持ちで
「持っていきたい」と思いますよ。
糸井 「本気の考え」ができた以上は、
そのあとが山あり谷ありでも
人に届けたくなるからですよね。
「売れなくてもいいや」という気には
ならないもん、きっと。
清水 あ、まったくなりませんね。

(ふたりのはなしは、つづきます)

2006-02-09-THU

このページは、次回でいったん
最終回を迎えます。
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