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知識とノウハウはほどほどに


知識と知恵は違う。
コンサルティングをしていると、
クライアントさんから
「御社のもつ情報、知識を教えてほしい」
といわれることがしばしばある。
しかし、情報、知識なら、本・ネットで調べるか、
調査会社を通して調査をしてください、
ということになる。
本当の付加価値とは、知識ではなく知恵である。

同様に、例えば私の会社に
就職の応募をされてくる方々の中に、志望動機として
「御社がこれまでに培ってきたノウハウを身に付けたい」
とおっしゃる方がいるのだが、
これも全く見当違いである。
業界の最新トレンドに関する情報に
常に触れることができることに大きな意味はあるが、
「ノウハウ」に関してはそのようなレディメードなものが
ビジネスの領域に存在するわけがない。
都度自分で作っていくことでしかない。

本当の勝負どころは、そんな出来合いのものではなく、
最小限の知恵と自ら考え抜く「頭の力」と、
失敗を恐れず実際にやってみる「勇気」である。
こうしたことは、どのようなフィールドでも
すべからく当てはまる事実であると思う。

最近の世の中のトレンドであろうか。
世の中全体が、簡単にできる方法を
見つけよう見つけようとしている。
ビジネス分析の手法だとか
問題解決プロフェショナルだとか、
わけのわからないビジネス関連のハウツー本が
バンバン売れるのも、こうしたことが背景にあろう。

私自身も執筆を依頼されることが多いが、
はっきり言ってあんなものいくら読んだところで、
全く使い物にはならない。幻想を抱いているだけだ。
いや、幻想を抱くことで
自己満足をするためのものかもしれない。
本当に力をつけたければ、
実業の中で実際のプレッシャーのもとで、
努力することが必要である。

世の中全体の知能レベルが下がってきていると
切に感じるのは私だけであろうか。
以前書いたコラムで「小学校の算数で円周率が3となり、
台形の面積を教えなくなったらもう終わりだ」
と申しあげたことがあるかと思うが、
これはもはや小学生に限ったことではない。
こうした変更を平気で行ってしまう大人が
既に蝕まれているのである。

日本国の大人は
いつからこれほど幼稚になってしまったのであろう。
「知識とノウハウ」の獲得に
終始した結果ではないかと思う。
何もゼロベースで「クリエイティブ」なことを始めろ、
といっているわけではない。
国民全員がクリエイティブになんて
なれるはずもないしその必要もない。
ただ、知識とノウハウの「受け売りと横流し」だけは
きっぱりとやめるべきである。
みずから思考し、悩み、
手垢のついた解決策を創り出そうとする姿勢が必要だ。

2002-08-15-THU

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