BUSINESS
オトナ語の謎。
オレ的にはアグリーできかねるんだよね。

■■■  第55回 オトナ語専門用語編:その5 ■■■

日々、なんとなく利用しているコンビニ、銀行。
なんとなく観ているテレビ、読んでいる雑誌。
そういった行為はあまりにも日常的だから、
ややもすると利用者にとってそれは
たんなる機能にすぎないように思えてしまう。

ところが、専門用語編を始めてみて、
そういった職場からの投稿を読むにつけ、
機能のみによって成り立つ職などなく、
どんな職場にも働く人の姿があるのだなと
少々感慨深くなったりもするのである。

全国の職場で働く諸先輩方、
いつもお世話になっております。
意味もなく、ありがとうございますと
お礼など言ってみたくなります。

さあ、今日もたっぷりお伝えしよう。
まずはテーマの確認です。

 オトナ語専門用語編テーマ 

お勤めする職場、業界に、特有の言葉はありませんか?
そこでは当たり前のように使われているものの
一般社会では絶対に通用しない言葉はありませんか?
そのような言葉を、現代語訳とともに紹介します。
身のまわりにある
「冷静に考えたらなんだこりゃ?」な言葉を
どしどしお送りください!

最初の投稿は「建築史業界」から。
なんですか、その業界は?
いやあ、いろんな職種があるものですねえ。

【建築史業界:「でんけん」に行くとき】
A「来週調査に行かなくちゃいけなくて」
B「どこに?」
A「××市がでんけんの申請するらしくて」
B「え? でんけんになるの?」
A「どうもとりあえずやっときたいらしい。
  また色々変わるから‥‥」

▼現代語訳▼
A「来週、建物調査に行かなくてはなりません」
B「どこに行くのですか?」
A「××市が伝統的建造物群保存地区の
  申請をするらしいのです」
B「本当ですか? 伝統的建造物群保存地区の
  指定を受けることができるのですか?」
A「建物に関する法律の改正が行なわれたり、
  市町村合併で予算が変わる前に、
  調査だけでもやっておきたいらしいのです」
(提供者:ちー)

■へえええ。「伝統的建造物群保存地区」!
 略して「でんけん」ですか。
 それを調査する人たちがいるんですね。
 「これは伝統的な建造物ではありませんか?」
 と申請する人がいて、
 「うむ。たしかに伝統的な建造物だ」
 と調査して認定する人がいるのだということを
 「こりゃまた由緒ありそうな建造物だねえー」
 とつぶやく我々はほとんど意識しませんけれども。


【ホテル業界:宿泊表に書かれた連絡メモ】
「バンケはドンデン。アトレラヨロ」

▼現代語訳▼
「宴会場(バンケット)は
 お客様の総入れ替え(ドンデン)があります。
 後の連絡はよろしくお願いします」
(提供者:ユキ)

■呪文だ! 呪文だ! むしろわらべうただ!
 「バ〜ンケはドンデ〜ン、アトレラヨロ〜、
  うしろのしょ〜め〜ん、オリテルヨロ〜」
 そんなような歌詞のわらべうただ!


【電話業界:緊急の電話工事を担当者に依頼するとき】
「現場持ってっちゃったそうなんで、
 今日飛び込みで殺してもらえますか?
 オーダーはすぐ切りますから。
 線は柱に丸めてもらってますので、
 まず所内で止めて下さい。
 後で残置出します。
 案内は無しでOKです」

▼現代語訳▼
「(建築業者さん等が)現場事務所の建物を
 撤去してしまったそうなので、
 今日急ぎの工事で電話を止めてもらえますか?
 工事依頼の伝票は、すぐシステムに投入しますから。
 電柱から建物に引き込んでいる電話線は、
 垂れ下がって人や車に触れないように、
 電信柱に丸めてくくりつけてもらってますので、
 まずは現場に行かずに
 NTTの建物の中にある電話交換機の操作だけで
 電話を止めて下さい。
 後で現場に行って電話線を取り外す工事の
 依頼伝票を投入します。
 電話を止めた後に、その番号に電話がかかってきたら、
 『この電話番号は現在使われておりません』
 (もしくは移転先の番号案内)
 というアナウンスを流して下さい」
(提供者:モリノク)

■ああ、見たことあるよ!
 電信柱に電話線が丸めてくくりつけられてるところ。
 そうかそうか、あれは工事を待ってる状態だったのか。
 電話を使えないようにすることは「殺す」ですか。
 ちなみに、全国に支店があるので
 方言があるかもしれないということ。
 たしかになあ。こういう言葉って、
 現場現場で生まれるものだろうからなあ。


【テレビ業界:編集時】
P 「アバンのシロあがるの何時?」
AD「テッペンぐらいです」
P 「渡辺君のVは、ナレ原どうなってる?」
AD「まだきてません。
   多分26時くらいじゃないですかねえ‥‥」
P 「あっそ。じゃー今日は俺、バレるわ」
AD「おつかれさまです」

▼現代語訳▼
P(プロデューサー)
  「番組冒頭に流すVTRの、
   テロップの入っていない状態のものが
   出来上がるのは何時頃でしょうか?」
AD(アシスタントディレクター)
  「だいたい午前0時前後です。」
P 「渡辺ディレクターが担当しているVTRの、
   ナレーション用原稿の進捗状況は
   どのようになっていますか?」
AD「まだ手元に届いていません。
   多分午前2時くらいには、
   放送作家さんからメールかファックスで
   私のところに届くと思いますが‥‥」
P 「そうですか。それでは私は本日は帰ります」
AD「お疲れ様です(今日も徹夜‥‥これで3日目だ)」
(提供者:baku)

■テレビ業界の専門用語は、なんとなくだけれども
 読んでいて意味がわかる気がする。
 それはやっぱりコントなどで
 ちょっとずつ知識として入ってるからなのだろう。
 さかのぼると『ひょうきん族』くらいからですか。
 ADのみなさん、ご苦労さまです。


【化学業界:ドラム缶の洗い方の説明】
「ボール使って缶スミまで。
 リンスはコウスイで。
 そのあと蒸気蒸し。」

▼現代語訳▼
「球形のシャワーヘッドを使って、
 ドラム缶の隅っこまでよく洗うこと。
 すすぎには工業用水を使いなさい。
 そのあと蒸気をあてて、
 その熱で乾かすようにすること。」
(提供者:紙一重)

■かと思うと、このへんの言葉は
 まったく意味がわからない。
 「リンスはコウスイで」って聞くと
 すごく優雅な印象があるけど
 「すすぎには工業用水を使いなさい」なのか。


【家具業界:試作品を前に】
「このガワイタ取り、都合悪いから高くつくなあ。
 フラッシュ? ベタムク?」
「叩いてみたら?」
「ケシはいくつよ?」
「半ケシか三分(ぶ)でしょ。」
「Rもっと小さめにできない?
 できればピンカクがいいんだけど、
 ダメならイトメンで」

▼現代語訳▼
「この収納家具の側面の板は、
 1枚の企画品の板から採れる枚数が少ないので、
 価格が高くつきますね。構造は、
 格子状の芯材に薄い化粧板を張ったものですか?
 それとも板状のものを張り合わせたものですか?」
「手の甲で叩いてみると反射音でわかるでしょう」
「塗装はどの程度の艶の状態ですか?」
「50パーセント艶を消したものか、
 30パーセント程度というところではないでしょうか」
「角の処理は丸みがないほうがいいのですが?
 直角か、無理であれば糸でこすったように
 軽く角を落とした面形状で」
(提供者:サカ)

■職人言葉はなんだか気持ちがいいなあ。
 「直角」が「ピンカク」、
 塗装の艶の状態を訊くときは
 「ケシはいくつよ?」となるわけだ。
 使う場面なんてほとんどないんだろうけど、
 なぜか覚えておこうとする自分が不思議。


【小売業:同僚へのお願い】
「悪いんだけど、グリーン明けにフロア室に寄って
 『ヨジッピ』コピってきてくれない?」

▼現代語訳▼
「大変申し訳ないのですが、
 休憩が終りましたら後方の事務所に寄って
 『予算実績対比表』をコピーしてきて
 いただけないでしょうか?」
(提供者:けろ)

■なんの小売業だかわからんけれども、
 「ヨジッピ」ってかわいいね。
 「ヨジッピコピッテキテクレナイ?」
 職場に飛び交う不思議な呪文。


【法律業界:検察庁にて】
「ボウチンはどうなってるの。ボウチンは?」

▼現代語訳▼
「冒頭陳述はどうなっているのか。冒頭陳述は」
(提供者:minako)

■んまあ、なんてはしたない!
 いえいえ、お母さん。そういう話ではないのです。
 ボウトウチンジュツ、略してボウチンなのです。
 それにしたってアナタ、ボウチンだなんて!
 まあまあお母さん、落ち着いてください。
 娘さんはよくやってくださってますよ。


【主婦業界:嫁と姑の会話】
嫁「このタコ、このままにしておいていいですか?」
姑「生臭いのはまずいから、シメて殺しておいて。
  ぬらしたふきん乗せて寝かしておけばいいわ。
  あとで刺しにするから」
嫁「これ、妻のためのカツラですよね?」
姑「そう。カツラ取ったら面取りで隠し包丁いれて。
  白髪も切っといてね。
  最後には、適当にゴマすってあしらってちょうだい。
  お父さん喜ぶから」

▼現代語訳▼
嫁「この蛸はどうやって食べましょうか?」
姑「生臭いままだと美味しくないので、
  酢でしめて臭みを取りましょう。
  ぬらしたふきんを乗せて、
  乾かないように酢をなじませておいてください。
  あとでお刺身にします」
嫁「この大根は、刺身の飾りのために
  薄くむいたもの(桂剥き)ですよね?」
姑「そうです。大根の残りは、
  煮崩れないように角をまるくして、
  味がしみるように、十字の切れ目を入れてください。
  ねぎも使いたいので、
  細い千切りにしておいてください。
  お父さんが喜ぶので、
  仕上げにすりおろした胡麻を添えましょう」
(提供者:さとさと)

■「主婦業界」! いわれてみればそれも職場か。
 実際のところこれは「料理業界」に属するのか。
 なんだか読んでいたら腹が減ってきました。


【郵便局:現場での会話】
A「そこの二本線は後回しで、
  貼付から開束して処理にかけてね」
B「物調期間ですのでメンコ取っときますね」
A「そうして。あ、AP便まだ来てないの?」
B「50分位の遅着みたいです」
A「はぁ、下1便に不結束がでるじゃねーか!」

▼現代語訳▼
A「そこのダイレクトメールは後回しで、
  切手があるものから紐をほどいて
  機械なり手で区分しといて」
B「郵便物量調期間ですので
  ケースのカード取っときますね」
A「そうして。
  あ、航空便(Air Port)まだ来てないの?」
B「50分位の遅れみたいです」
A「はぁ、朝一発めの便に
  乗せられないのがでるじゃねーか!」
(提供者:マルキ)

■おおっ、最近デリバリー版で人気の郵便業界から。
 「ダイレクトメール」が「二本線」?
 「メンコ」? 「不結束?」
 そんなふうなやり取りのすえに、
 郵便物は我々のもとに届くというわけです。


【百貨店:販売員どうしの会話】
A「Bさんは今たけ? きにみ?」
C「たけですよー」

▼現代語訳▼
A「Bさんは今トイレ? 食事?」
C「トイレですよ」
私はメーカーだったので、語源はよく知りません‥‥。
百貨店いろいろまわりましたが、
「1番=食事」「2番=トイレ」とかもありました。
(提供者:わんこ)

■お客様の前で「食事」とか「トイレ」とか
 言うわけにいかないから、
 接客業ではいろいろと隠語があるんですよね。
 「1番」「2番」といった番号で
 呼ぶところもあるとかいう話。
 このへんの続報もお待ちしております。

てなわけで、いろんな業界からの投稿を
幅広くお待ちしておりまーす!

 募集中! オトナ語専門用語 

お勤めする職場、業界に、特有の言葉はありませんか?
そこでは当たり前のように使われているものの
一般社会では絶対に通用しない言葉はありませんか?
そのような言葉を、現代語訳とともに紹介します。
以下のフォーマットを参考にして、身のまわりにある
「冷静に考えたらなんだこりゃ?」な言葉を
どしどしお送りください!

〜投稿例〜
【出版業界:上司の机にて】
「この写真、眠いからピン来てるやつに差し替えて。
 キャプはトルツメして、
 キャッチだけキンアカにしとこうか。
 戻し、いつ? 今日マジケツ? 引っ張れよぉ」

▼現代語訳▼
「この少しぼけた写真をピントの合ったものに変更し、
 写真の下に添えた文章は削除して、
 見出しの文字を『マゼンタ100パーセント、
 イエロー100パーセント』にしましょう。
 印刷所に校正を届ける締切はいつですか?
 今日が絶対的な締切だというのはほんとうですか?
 印刷所と交渉して締切を延ばしてもらいましょう」
(提供者:ソフト)


あてさきはpostman@1101.comです。
表題は「オトナ語専門」としてください。
よろしくお願いいたします!!


■■■ アシスタントよりご報告申し上げます。 ■■■

こんにちは、関西生まれの美人アシスタントです。
こちらはオフィスからの自由なメールを
募集、掲載していくコーナーです。



お世話になっております。

兼業主婦の会話は、
ばりばりオトナ語に侵食されております。
先日、SE(システムエンジニア)業界のママ友達と
生協の注文について会話しておりました。

「ああ、OCRにフラグ立てるんでしょ?」

「マークシートに記入する」って言おうよ。
ワタシ、畑違うからわからなかったじゃん。
(提供者:saki)

なんやわかれへんわ。
ええっと、なんやて? 「OCR」は
「オプティカル・キャラクター・リーダー」の略ぅ?
「印刷または手書きの文字を光学的に読みとる装置」?
ああ、あれか、レジでピッてやるやつか。
それにフラグたてるてどないやねん。
なんやわかれへんわ。よーするにあれか、
「マークシートに記入する」ことを
「マークシートを読みとる装置に読みとらせる」
ゆーとるわけか。わっかりづらいて。
けどあれやな、主婦もオトナ語のひとつふたつ
言えてふつうなんやろな。



いつも楽しく拝見しております。くしろと申します。

私は数年前、とある区立の資料館で
アルバイトをしていました。
そこで目に留まった区役所からのポスターには
「さわやか接遇」というキャッチフレーズが。

接遇‥‥?

そのポスターにはさらに
「親切ていねいな応対をしましょう。
 お役所用語を使うのをやめましょう。」
というような目標が掲げられていたんです。
字面で意味は取れるのですが、
思わず職員さんに「接遇って何ですか?」と
つっこみ質問をしてしまいました。
彼らも「言われてみれば‥‥」と苦笑。
それ以前もそれ以後も、
いくつかの民間企業で働いていて
一度も使っていない言葉です。
うーん、そんなんじゃだめだぞお役所!!
(提供者:くしろ)

あかんがな、役所。
「さわやか接遇」て、そもそも読めへんわ。
「せつぐう」? どこがさわやかやねん。
だれがなまいきシャルロットやねん。
オトナ語の基本がわかっとらんようやな、役所。
もっと根本的にへりくだれよ。
精神的、根源的にへりくだったれよ。
‥‥コホン、失礼しました。
さまざまなオトナ語メール、お待ちしておりまーす!


オフィスからのふつうのおたより、
当コーナーへのふつうの感想なども
お待ちしております!
あてさきはpostman@1101.comです。
こちらのほうの表題は
ふつうに「オトナ語」でけっこうです。
みなさまからのメールが
新たなテーマをつくるのです!

2003-10-08-WED

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