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オトナ語の謎。
オレ的にはアグリーできかねるんだよね。

■■■  第40回 オトナ語発展編:その3 ■■■

いきなり結論から申し述べさせていただくとすると、
今回寄せられた回答はひっじょーにレベルが高かった。
届くメールを読みながらいちいちうなった。
自己の用いる「オトナ語」のおかしさと便利さを
客観視できていなければこのおもしろみは表現できまい。
その意味で、「オトナ語」をふだんづかいする諸先輩方は
ほんとうに「オトナ」なのだと思う。

全国のオフィスでがんばる諸先輩方、
お世話になっております。
たくさんのメールをどうもありがとうございました。

それではいってみよう、
男女の別れの場面におけるオトナ語傑作選。
まずは前回の設問を振り返る。


  実践問題その16 

 
レストランの窓際のテーブルに、
 男と女が座っています。
 ふたりとも、表情が暗いです。
 どうやら別れ話をしているようです。
 なぜか、オトナ語満載で。
 さあ、男役でも女役でもかまいません。 
 設定その他もすべて自由。
 オトナ語を使った別れの場面、
 演出してみてください!
   

さあ、たっぷりご笑覧ください。
ビジネスマンの頭が固いなんて、うそっぱちだぜ!

「あ、どうも、ご多忙中
 お呼びだてして申し訳ございません。
 実は先日来の件なんですが、
 あ、電話ですね。・・・あとでかけるから
 ・・・す、すいません。貧乏ひまなしで。
 どこまで、そう、先日来の件なんですが、
 すべてこちらサイドの手違いで、
 一旦お受けしながらなんなんですが、
 白紙撤回させていただこうと。
 ご立腹重々承知しております。平にご容赦!!」
 (提供者:まむう)

■こんなフラれかたはイヤだ!
 相手に「白紙撤回」を提示しながらも
 「貧乏ひまなしで」とへりくだる女性。
 こんなフラれかたはイヤだ!

「いつもお世話になっております。
 えー、さっそくではございますが
 今回は「お別れ」のご提案でございます。
 といいますのも、先日ワタクシ
 夏期休暇を利用いたしまして
 郷里に戻ってまいりました。
 その際にですね、
 今年のゴールデンウィークの帰省のときに
 ついナニした同窓生、
 え、こちら仮にA子さんといたしましょう。
 彼女からですね、そのー、ジュニアができた、
 というご報告を受けまして。
 もう時期が時期だけに
 物理的に待ったナシとのことで、
 きんきんに身辺整理し、
 その結果をフィードバックするように
 というのが先方さんのご要望でして……。
 ここはひとつ泣いてくれませんか。
 ……じゃあ、それでゴーしますのでよろしく。」
 (提供者:ashi)

■サイテーだ、サイテーだ! この男、サイテーだ!
 ジュニアができて物理的に待ったナシで
 きんきんに身辺整理してフィードバック?
 サイテーだ、サイテーだ! この男、サイテーだ!
 そして、つぎの投稿は、
 まるでこの男に対する返答のようでして……。

「そういうことでしたら
 婚姻届はそちらで破棄してもらって結構です。
 まあ今はちょっとアレだけど、
 きんきんに婚約指輪もお返しできるかなと思います。
 ただ、今後いい意味で弁護士さんが
 お邪魔することもなきにしもあらずかと。
 下手に現場レベルで動くと
 火だるまになるんじゃないかって声も聞こえてくるし。
 いずれにしても
 言った言わないの問題になるとなんだから
 ご挨拶だけでも。」
 (提供者:しじみめ)

■うはははは、いやあ、クール。
 「いい意味で弁護士さんがお邪魔する」って
 すごい言い回しだよなあ。
 「聞こえてくる」の使いかたも絶妙。
 つぎからは男と女の手に汗握るやり取りをどうぞ!

男「……なあサチコ、
  どうしたら二人の問題がクリアーできるか、
  オレなりにいろいろ考えてみたんだよ。
  いや、別に誰が悪いとか言ってるんじゃないよ。
  ただ実際問題、良いか悪いかはともかく、
  二人とも仕事でバタバタしているわけだし、
  もしサチコの方でアレなんだったら……」
女「――ヒロシ、私達、一旦クリアーにしない?」
 (提供者:shinko)

■うーーん、なんとも気怠い別れの場面。
 オトナ語を使って別れを演出すると
 たとえそこが新橋の飲屋街でも
 フランス映画のようになります。
 それはちょっと言い過ぎです。

男「この度は大変申し訳ない事態に陥ったことを、
  まずお詫びさせていただきます。
  私といたしましても、
  本来すぐに消去すべきであった
  メールを残しておいたことから
  浮気発覚などというケアレスミスは
  誠に不徳のいたすところでございまして、
  悔やんでも悔やみきれないというのが
  現在の心境でございます。しかしミスはミス。
  浮気は事実のことでありますし、
  この期に及んで言い訳は申しあげません。
  貴女様のお気のすむように煮るなり焼くなり、
  もういかようにしていただいても結構です。
  できるだけのことはさせていただきますので、
  よろしくご検討のほどお願い申しあげます」
女「まあ、そうですね。当方といたしましても、
  それなりの予兆はあった訳ですし、
  防ごうと思えば防げたであろう今回の事態に関して、
  何か防護策をとるとか、
  いろいろ回避できる方法があったと思うんですが、
  まあそちらにおまかせして
  全て委ねてしまったところは、
  もうちょっとなんとかできなかったのかなあと
  残念に思うわけなんですけども。
  まあ、ただ、今回のこれに関しましては、
  当方も若干責任を感じるところとはいえ、
  これに目をつぶるという訳には
  いかない状況になっておりますので、
  甚だ申しあげにくいことではありますが、
  今後おつきあいは
  控えさせていただくことにいたしたいと」
男「お怒りごもっともでございます。
  本当にご迷惑をおかけいたしました。
  長い間お世話になりまして
  本当にありがとうございました。
  また何かご縁がありましたら、
  全力を尽くす所存ですので
  何卒お願い申しあげます」
女「こちらこそ、力不足で申し訳ありませんでした。
  失礼いたします」
 (提供者:ぶっちゃー)

■おいおい、これもう、ただの仕事の話だろ。
 何回か読み直してみるといろんなところで
 笑いがこみ上げてくるよ。
 「長い間お世話になりまして」あたりが
 一周してすごくおかしい。
 つぎ、もうちょっと、感情的なやついってみよう。

女「お願いばかりで恐縮ですが取り計らってよ」
男「物理的に難しい」
女「抜本的改革が必要なのです。
  お互いウィンウィンになる道はこれしかないの。
  ゆうなれば一番ベターなの」
男「おまえの一人勝ちだろ、
  俺からあいつへの乗り換えをしたいだけだろ?」
女「ゴメンナサイして?
  誰が悪いってわけじゃないけど、
  アポ無しで家にくるからいけないのよ?」
男「はあ? お前が部屋に男連れこんだんだろ?
  なんで俺が悪いの」
女「又、ご縁がありましたら!」
 (提供者:カナ)

■いやはや、冒頭のやり取りがすさまじい。
 「お願いばかりで恐縮ですが取り計らってよ」
 「物理的に難しい」
 このふたり、いったいどういう恋愛をしてきたのか。
 興味は尽きないが、つぎ行ってみよう。

女「・・・最近モチベーション下がってると思わない?
  上半期は定時でベルサッサして
  よく会ってくれたじゃない」
男「それは前にも伝えたけど、
  今のプロジェクトが火を噴いてて、
  火消し役にオファーされちゃったからって。
  やっぱ、他のやつじゃ
  キャパが狭くて無理だってことで。
  そこはクリアしてもらったつもりだったけど」
女「問題はそこだけど、
  クリアしたつもりはこちら側ではなかったのよ。
  それに夜は国際会議にも
  顔を頻繁に出してるようだし」
男「そ、そこは誤解があるようなので言うけど、
  渡辺本部長に声を掛けられたら
  兵隊の自分は行かざるを得ないでしょ。
  そこを汲んでよ」
女「言いたい事は判るけど、
  このまま現状を続けてても
  将来に向けての方向性が見出せないので、
  私としては白紙に戻してもらおうと思って」
男「いや、その、えっ?
  ・・すぐには回答ができないんだけど、
  そこは自分の宿題として
  今後善処する姿勢を見てもらって、
  そこから再度検討してもらいたいん、だけど・・」
女「何度も検討した結果なの。
  新たな可能性へ転化するの。
  じゃそういうことで」
 (提供者:派遣8年生)

■こんな別れの場面はイヤだーー!
 別れの場面に「上半期は定時で」とか
 言われるのはイヤだーーー。
 でも、常日頃の習性で、
 「じゃそういうことで」と言われると
 ついつい席を立ってしまったりしてな。

男「僕的には、このままビジョンを見出せない方向で
  関係を継続するよりも、
  一挙にパラダイムシフトをはかるという
  選択枝もあると考えているんです」
女「失礼ですが、この場合のパラダイムシフトは
  どのような意味で使われて
  いらっしゃるのでしょうか?」
男「少し言葉たらずだったようで、
  たいへん失礼しました。
  端的にポイントをかいつまんでご説明すると、
  『別れませんか?』と言い換えることが
  可能かと思います」
女「貴殿のおっしゃることは十分に理解できました。
  しかしながら、私の方といたしましても、
  すでに30も超えているわけでして、
  すぐにはなんともご返事しようがないので、
  今日のところは
  一旦持ち帰りとさせていただけませんか?」
男「ええ、もちろん結構です。まずはご検討ください」
女「それでは、当家の顧問弁護士もまじえて
  相談してまいります。一両日中には
  ご返事申しあげられるかと思います」
 (提供者:Inu)

■仕事にしろ、恋愛にしろ、
 急展開した場面で即断できる人は少ない。
 いったん持ち帰ることが肝要なのだ。
 そして一両日中にお返事するのだ。

女「お忙しい中、
  突然お呼びだてして申し訳ございません」
男「とんでもない。
  小早川様と手前との仲じゃありませんか。
  気になさらないでください」
女「長瀬様とこういった風に
  お付合いさせていただくようになって、
  どれくらいになるでしょうか?
  いつもこちら側のわがままばかり聞いていただいて
  お礼の申し上げようもございません。
  大変申し上げにくいお話なのですが、
  今回も少し長瀬様には
  泣いて頂かなくてはならないお話で・・・」
男「・・・と申しますと?」
女「私事で恐縮ですが、今期末をもって
  寿退社させていただく事になりました」
男「えっ、それはひょっとして、
  プロポーズしろという圧力でしょうか?」
女「いえいえ、言葉が足らなくて申し訳ございません。
  内密に進んでいた話なので、
  ご存じないのは当然かと思いますが、
  実はジュニアに見初められる幸運に恵まれまして、
  先方もなるはやで
  結果をみたいとおっしゃいますので。
  ・・・長瀬様とは、残念な結果になりましたが、
  今後のご活躍を、
  蔭ながら応援させていただく所存です」
男「・・・申し訳ございません。
  おっしゃる意味がわかりかねます」
女「説明が下手で申し訳ございません。
  ぶっちゃケ、今後お付合いを
  見合わせていただきたいということです」
男「・・・・・・・」
女「私どもとしても、長瀬様の出かた次第で、
  優秀な社員を失うようなことになるのは
  大変残念ですので、
  ぶしつけなお願いだとは重々承知しておりますが、
  よろしくお願いします」
男「承知いたしました。
  ・・・今回はひとつ貸しときますよ」
女「恐れ入ります。
  それでは次が入ってますので失礼します。
  コレはこちらが持たせていただきます。」
 (提供者:ツナ美)

■おいおい、承知しちゃうのかよ。
 「今回はひとつ貸し」で済んじゃうのかよ。
 さっさと勘定を済ませてしまう女。
 席で呆然とたたずむ男。
 それでいいのか。

男「本来であれば、本日は結婚に向けての
  進捗報告のお約束でありましたが、
  当方の事情に変化があり、
  今回プロジェクトについて、
  一旦イチから見直しということで、
  ご提案させて頂ければと存じます」
女「どういうこと!?婚約破棄ってことなの?」
男「結論については、一旦双方持ち帰って
  検討ということにしたいのですが、
  その方向でご調整頂けると幸いです」
女「ちゃんと理由を言ってよ」
男「諸事情ございますが、一例を挙げますと、
  強力な競合の出現ということもありまして・・・」
女「それって二股かけてたってこと!?」
男「決してそういうつもりではございませんが、
  そちら様の方でそのように解釈されるのであれば、
  それもやむなしかと・・・」
女「どうして私の方が身を引かないといけないのよ」
男「それも諸事情あるのですが、
  特にポイントとなるのが、
  私どもの共同プロジェクトで、
  既に一部成果が上がっていることを
  高く評価せざるを得ないということでございまして」
女「妊娠させたって言うの!サイテー!!」
 (提供者:はっさん)

■お、またしてもサイテー男が登場。
 しかし、「子どもができた」を
 「私どもの共同プロジェクトで、
  既に一部成果が上がっていることを
  高く評価せざるを得ない」と言い換えるのは
 かなりのテクニック。
 あ、本気で怒っちゃダメですよー。

女「いやもう鈴木さんからのご提案、
  本当に痛み入ります」
男「いえいえ、手前どもといたしましては、
  提案の機会を頂けただけでも
  誠にありがたいお話でして」
女「それでですねぇ、大変申し上げにくいんですが、
  実は今回の件、佐藤さんからも
  ご提案いただいておりましてね。
  担当レベルでは、
  これまでのお付き合いもありますし、
  実績のある鈴木さんに
  お任せしたいところなんですけれども。
  今回は、もぉおおしわけないんですけれども、
  佐藤さんにお願いする方向で
  ゴーすることになりまして。」
男「ボトルネックは年収、ということでしょうか?」
女「や、長い目で見ればね、そんなに大差ないのは、
  私自身はよぉおく分かっておりますけれどもね。
  ただですね、このご時世ですから、
  手前どもとしても、キャッシュフローがですね、
  ちょっと…難しいんですよ」
男「田中さんとはこれまでのお付き合いもありますし、
  思い切って勉強させていただきます。
  もしくはオプションを削って、
  次フェーズで色を付けていただくとか。
  もう一度ご検討願えませんか?」
女「…実はですね、ほんっとおおおに心苦しいんですが、
  今回の決定は上マターなんですよ。
  これだけの案件になりますと、
  私個人の意向ではいかんともしがたい
  ところがありましてね。
  色々、政治的にもありまして」
男「…そうですか。ワザワザお時間取っていただき
  ありがとうございます」
女「まぁ今回の件では、
  こういうことになりましたけれども、
  ご提案には本当に感謝しておりますので、
  その点については、
  よく上の方にも申し伝えておきますから。」
男「いえいえ却ってお心遣いありがとうございます。
  今後とも、どうぞ宜しくお願いします」
女「いえいえコチラこそ却ってご足労頂いてスイマセン。
  ぜひぜひ、次回もまた宜しくお願いします」
 (提供者:Tomomi)

■うははははは、なんの話してんだよ、あんたら。
 「思い切って勉強させていただきます」って
 どういうことなんだ。
 「上マター」ってことは、
 両親が反対してるってことかな。
 「ご提案には本当に感謝しておりますので」
 というのは、「いい友だちの関係でいましょうね」
 っていう意味を含むのだろうか。
 「次回もまた宜しく」じゃないだろう。
 それにしても、見事な翻訳である。

男「あのう、むし返すようで恐縮ですが
  先ほどの件、ご再考は、もう無理でしょうか」
女「ええ、こちらとしても、もう、これ以上は…
  私ひとりの判断ではありませんし、
  ご縁がなかったということにしたいのです。
  そもそも、当初のお話ではウチ一本にしぼって
  フォローしてくれるはずではありませんでしたの?
  それがフタを開けたら、
  同業種の方を何社もかかえていたなんて…
  言った、言わないの問題以前です!
  こちらのコンフィデンシャルな資料が
  漏れていた可能性まであるんじゃありません?!
  お約束が違えば、白紙に戻すのは当然です」
男「いえ、同業種の方とは古いつきあいでして、
  こういうご時世ですので、
  自分マターの判断では断るに断りきれないというか…
  ただ、うちとしては
  それらは端数のやっつけ仕事でして、
  これからの生命線は
  そちらにシフトしていこうと考えているんです。
  それに、こう申してはあれですが、
  まだ、正式なご契約を交わしてはおりませんし、
  試験的な段階でのミスということで
  ご了解していただければ、と。
  いえ、もちろん当方の不手際を
  棚上げするということではありませんし、
  これからのおつきあいのなかで、
  精神誠意、全面的に○○様のお立場を
  バックアップさせていただきますし…
女「そうは言われても、
  一度こわれた信用問題は修復しかねます。
  ともかく、この件は私に全権委任されていますので、
  そういうことでご了解ください。
  あっ、ここは私がお支払いいたします」
 (提供者:音十)

■おっかしいなあ、これ。見事すぎる。
 いったいこの人たちはなんの話をしているのだ。
 「それらは端数のやっつけ仕事」ってのは
 「あれは本気じゃないんだよー」ってことか。
 「この件は私に全権委任されています」って、
 当たり前だよなあ。伝票をさっさと奪い取る
 最後の場面も見事。クオリティー高いなー。
 ビジネスマンの頭が固いなんて、うそっぱちだぜ。

女「それで、このたびの二重契約に関しての話に
  戻りたいと思いますが」
男「その件につきましては
  すでにご説明申し上げたとおりでして」
女「つまりこの二重契約は
  そもそも双方の合意に基づくものであった、と」
男「まあ、そう受け取っていただいても
  さしつかえないかと」
女「ですが、状況改善に向け
  早々に対策を講じるとのことでしたよね」
男「当方といたしましても
  最大限の努力はしてきたつもりです。」
女「で、今後はどのような方針で
  いつごろまでに結果を?」
男「この場ではなんとも
  お返事いたしかねるのですが」
女「わかりました。これ以上は
  時間の損失ということになりそうですね」
男「とおっしゃいますと?」
女「このあたりで関係を白紙に戻したい、
  ということです」
男「いや、そんな、
  唐突にそのような動議を提示されましても」
女「数ヶ月前から再三再四申し上げておりましたが」
男「いや、ですから、
  改善に向け誠心誠意努力している次第でして」
女「努力だけでは困るんですね。
  こう、形にしていただけないと」
男「形、といわれましても、ですね」
女「先様との絡みもある、と
  そうおっしゃりたいわけですね」
男「ええ、まあ、そのあたりの事情を
  汲んでいただけると嬉しいのですが」
女「それ故この件につきましては
  当方は手を引かせていただこうかと」
男「いや、それは、ちょっと、
  お互いにとって損失が大きいかと」
女「そのあたりは当方としては織り込み済みです」
男「…どうでしょう、
  いま少し時間的ゆとりをいただけないものかと」
女「デッドラインは本日、というお約束でしたよね」
男「ですから、そこをなんとか。
  先方とも折り合いをつけますので」
女「道義的責任というものを視野に入れますと、
  それは難しいかと」
男「他ならぬそちら様のためですから、
  それくらいはさせていただきます」
女「まあまあ、なにをおっしゃいますことやら。
  あ、伝票はこちらが」
男「まあまあまあまあ。
  なんでしたら次回チョコレートパフェでも」
 (提供者:ぬばたまの)

■仕事の話だ! こりゃ完全に仕事の話だ!
 何度読んでもおかしいぞ、これ。
 ぜひ何度も読んでくれ、これ。
 「お互いにとって損失が大きい」を
 「織り込み済みです」で切り返す様子がスリリング!

女「ところで、こんな場所で
  大変申し上げにくいお話なのですが、実は、
  今後あなたとのお付き合いを見合わせたいな、と。
  そう思っておるんです」
男「見合わせる・・・と、おっしゃいますと?」
女「今申し上げた通り、
  そのままの意味でとって頂いて結構です」
男「な、る、ほ、どー・・・。
  何か手前どもに手違いでもあったでしょうか?」
女「いや、というわけではなくてですね、
  単純に、今後お付き合いをしていく上で、
  将来的展望が見えないな、と。
  そういうことなんです」
男「うーん・・・将来的展望・・・。
  ということは、やはり、
  手前どもに手違いがあったということでは?」
女「いやいや、そうではないんです。
  逆に、『手違い』ということであれば、
  それは当方にあった、と。そう認識しております」
男「またまたまた、何をおっしゃいます! 
  それはないでしょう?」
女「いやいやいやいや。というのもですね、
  当初予測ではかなりイケると
  高めにヨんでいたのですが、
  ゴーする前後あたりで
  若干の不安要素が見えておったんです。
  で、ここでストップをかければよかったのですが、
  とはいえ、走らせてみないことには
  わからないと判断し、一旦は走らせて見たものの、
  やはり厳しくなってきた、と。
  まぁそういうことです」
男「なるほどなるほどー。
 『不安要素がありつつも走らせた』と
  おっしゃいましたが、
  そこまでわかっていたのであれば、
  逆に手前どもの場合は、
  走らせた後のリカバリーの為の
  バッファーをとっておくのですが?」
女「えぇ、おっしゃる通りです。
  バッファーはとっておりました。
  リスクヘッジとして当然です。
  ですが、この『不安要素』というのが、
  予想以上に大きくてですね、
  当方としても、もう耐えられないかな、と。
  そう判断したわけです」
男「なるほどねーぇ。」(ここでワインを一口飲む)
女「これはまさに当方のヨミ違いということですから、
  やはり『手違い』という点に
  こだわってお話するならば、
  それは当方にあったな、と。そういうわけです」
男「なーるほどー。おっしゃることはよくわかりました。
  しかし、見合わせるという
  あなた様の判断については、納得できません。
  見合わせるということは、
  つまりリスタートもあり得ると?」
女「ひょっとしたら、あるかもしれませんが、
  かなり低いですね。
  イマイマ将来的展望がないと
  当方で判断している以上、今後のあなたの動きで
  それが早々に変わるとは考えにくいですから」
男「なるほどー、・・・なるほどねー。
   ということは、つまり、今後はもう厳しいと?」
女「と、いうことになりますね」
男「そこは、なんとかなりませんでしょうか?
  手前どもとしましても、
  ここであなた様とのお付き合いが終了してしまうのは
  相当の痛手になりますし、
  今後のアレもアレなものですから、
  再度ご検討願えませんでしょうか・・・」
女「お気持ちは充分わかっているつもりです。
  ただ、当方としましても何分なる早で
  進めなければならない案件ですから
  今回の二の舞にならないようにしなければなりません。
  というところで考えると、今後がどうこうよりも、
  とにかくイマイマのレベルで考える必要がありまして、
  となると、検討するまでもなく、厳しいかな、と」
男「ええ、ですが、そこを敢えてお願いしておるんです」
女「あなた様も努力家ですねぇ(笑)
  これはあまり言いたくなかったのですが、
  実は、走らせたしばらく後に
  二の手を打っておいたんです。
  で、そちらとの提携話が
  いい方向で進んでいるんです」
男「な、なるほどー・・・そうでしたか。
  それは、よかったです。」
女「いやいやいやいやいや、とんでもございません。
  こちらこそ、勝手言って恐縮ですが、
  何卒ご理解頂きたいな、と」
男「ま、ま、ま、手前どもとしても
  いろいろまだまだ言いたいことはございますが、
  今後のこともありますから、
  ここはよしなに、ということで・・・」
女「こんなおいしいお食事までごちそうになった上に、
  こんなお話になってしまって、申し訳ありません」
 (提供者:マキコ)

■スタンディング・オベーション。
 ブラボー! ブラボー!
 遊び心といい、基本的な知識の蓄積といい、
 こりゃもう、オトナ語総決算です。
 すばらしい。ありがとう。

女「だいたい渡辺っていう女とはどうなっているのよ」
男「はい、そちらの件では先日、
  先様とミーティングの結果、
  今後取引のほうを一切やめさせていただく
  ということとなりまして」
女「この前もそういったじゃない!
  縁切ったっていう証拠をみせてよ」
男「今回で本決まりですので。
  証拠といわれましても……。
  どうにかそういうことでそちらのほうに、
  通していただけないものかと」
女「何人浮気すれば気がすむのよ。
  そもそも結婚するっていう約束はどうなったの!」
男「は、そちらは実家マターの話となりますので、
  ちょっと山形のほう擦り合わせをしませんと、
  なんともお答えできないんですが」
女「じゃあ、これだけは答えて。
  メールきてた鈴木っていう女とは
  どういう関係なの!」
男「・・・こちらに鈴木は三人おるんですが」
 (提供者:ターキー)

■おあとがよろしいようで。

というわけで、実践編16の回答例を終わります!
いや、今回はほんとうにレベルが高かった。
たくさんの優秀な投稿を、
身を切る思いで落選扱いにしました。
ちなみに、私の親戚からも、
まったく知らせなくふつうに投稿がありました。
残念ながらそれもボツとさせていただきました。
初投稿のみなさん、これに懲りず、
次回もよろしくお願いいたします!
つぎの問題はこんなのいかがでしょう?
これまた難題ですが、挑戦してみてください!


  実践問題その17 

 
『ももたろう』や『かぐやひめ』といった、
 古くから伝わる「むかしばなし」の一場面を
 オトナ語を使って自由に演出してください。
 どのお話を選ぶかも、センスの見せどころ。
 もちろん、有名なお話であれば、
 日本のものでなくてもかまいませんよー。
 誰もが知っているような場面をモチーフにして、 
 コンパクトにまとめてくださいねー。
 (もとになったお話の題名を添えてください)
   

この実践問題の受付は終了いたしました。
 たくさんの投稿、ありがとうございました!


■■■ オトナの基本用語 ■■■

基本用語のほうも、これまでどおり募集します。
あてさきはpostman@1101.comです。
表題は「オトナ語基本」としてください。
「これはもう出てたっけ?」というものでも
気にせず自由に気軽にメールしてください!
ちなみにネタの説明文は
こちらで書き起こしておりますので、
適当に書いていただくだけでかまいません。

■■■ アシスタントより ■■■

オフィスからのふつうのおたより、
当コーナーへのふつうの感想なども
お待ちしております!
あてさきはpostman@1101.comです。
こちらのほうの表題は
ふつうに「オトナ語」でけっこうです。
みなさまからのメールが
新たなテーマをつくるのです!

2003-09-01-MON

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