BUSINESS
オトナ語の謎。
オレ的にはアグリーできかねるんだよね。

■■■  第26回 オトナ語実践編:その6 ■■■

さあ、一週間の始まりである。
今週はたいへんだぞお、と気合を入れるあなたも、
先週にくらべればずいぶんマシだとホッとするあなたも、
来週はえらいことになるぞ、と準備するあなたも、
お昼のひととき、わずかばかりの清涼を
心身ともに感じていただければ幸いである。

全国のオフィスでがんばる諸先輩方、
お世話になっております。

じつはこれはほんとうに役に立つのではないかと
一部で認識が新たになっているオトナ語実践編、
今週もみなさまのメールに支えられてお送りする。
まずは前回の問題を振り返ってみよう。


  実践問題その5 

 
まずは、以下の投稿作品をお読みください。

 人に「何かをしてください!」
 と言うときのオトナ語。
 1:〜していただけると助かります。
 2:〜していただけると嬉しいです。
 3:〜していただければ幸いです。
 下にいくほど、相手を敬う感じになります。
 (提供者:はなな)

 このような、オトナ語三段活用を募集します!
 状況に合わせて、さまざまに形を変えるのが
 オトナ語。
 現場で培った叡智を活かし、
 多彩な三段活用をメールしてください。
 場面、条件、文体、長さ、
 その他もろもろ、一切自由です!
 

たんにオトナ語を使用するだけでなく、
三段活用させるという難題であったが
全国から優秀なメールが数多く届いた。
さっそくそれらを紹介していこう。

かしこまるときのオトナ語三段活用。
1:恐れ入ります。
2:恐縮です。
3:恐縮至極です。痛み入ります。
(提供者:明子、はなな)

■いきなり微妙な三段活用!
 オトナは、かしこまるだけでも
 これほどの機微を使い分ける。
 複数の投稿があったが、
 三段目に個性が表れるあたりがおもしろい。
 完璧なメソッドがあるわけではなく
 オトナ語とはあくまでも現場で
 個人が磨くものであるということの現れであろう。
 にしても当コーナー、実践編に入って
 ほんとうに実践的になっており、
 読み物としてこれでいいのかと
 自問すらするクオリティーである。

「あれ、太った?」と聞くときのオトナ語三段活用。
1:ちょっとふっくらされた感じですね?
2:最近、健康的になられた感じですね?
3:なんかこの頃、
  雰囲気がやわらかくなったって言われません?
 (提供者:pumipumi)

■そもそも「太った?」ということを伝えるわけだから
 ある程度、仲のよい人に対する問いかけである。
 それなのに人によって表現を変えるこの気の使いよう。
 そこまでして息が詰まらないのか? 
 と疑問に思うあなたはまだまだコドモ。
 オトナはこれくらいことは、
 呼吸をくり返すように自然に変換するのである。

お断りの返事をするときのオトナ語三段活用。
1:よく考えたんですが、ちょっと難しいです。
2:検討した結果、今回は、見送りという事で……。
3:熟慮を重ねましたが、今回に限り、
  ご縁が無かったとの意見が大勢を占めまして……。
 (提供者:けーすけ39才)

■これまた見事な使い分けである。
 「考えた」→「検討した」→「熟慮した」の変化は
 ほかの場面でも十分に応用が利きそうである。
 三段目に加えられた「今回に限り」も秀逸である。

外出中の人間に電話が入ったときの対応三段活用。
1:あいにく○×は外出中でして、
  ×時頃に戻る予定ですので、
  もう1度、お電話いただけますか?
2:申し訳ございません。あいにく○×は外出中でして、
  ×時頃には戻る予定ですので、
  お電話がありましたことをお伝えしておきます。
3:大変申し訳ございません。
  あいにく○×は外出中でして、
  ×時頃には戻る予定ですので、戻り次第、
  即折り返しお電話を入れさせますので、
  宜しくお願いいたします。
 (提供者:ツボイ)

■また電話しろ、電話があったと言っておく、
 折り返す、という黄金の三段活用。
 逆にいえば、自分が電話したときに
 どう言われるかによって
 先方の自分に対するプライオリティーがわかる。
 もっとも、自分のプライオリティー以前に、
 対応する人のスキルが低ければ
 すべて1の言葉が返ってくるのだけれど。

外出中の社長宛に電話が掛かってきたときの応対三段活用。
1:(いつも仕事している親しい担当者の場合)
  ごめんなさい、今日朝から現場に出ちゃってるんです。
  でもケータイ繋がりますから、電話させましょうか?
2:(いつも頼み事ばかりしてくる担当者の場合)
  申し訳ございません、本日現場に出ております。
  お急ぎでしたら、ケータイに連絡して頂いた方が
  宜しいかと思いますが。
3:(つなぐ必要ナシの勧誘電話の場合)
  あいにく出張に出ておりまして、来週に入らないと
  戻りません。宜しければ私の方でご用件承りますが。
 (提供者:shinko)

■社長の業務をアシストする人からの生情報。
 まさにいまこのときも
 交わされているのではないかという
 現場感覚あふるる内容である。
 2の「ケータイに電話すれば?」という問いかけは
 暗に電話してきた者の決意をふるいにかけるようで
 なにやら薄ら寒い気すらするクールさである。

売上額が予算に届かない旨を報告するオトナ語三段活用。
1:(社内で直属上司に)
  456(しごろ)の売り、
  400万ほど足らないんですよねー。
2:(社内の営業会議で幹部に)
  第一季度の業績は、ネットベースで400万欠け、
  予算未達。しかし………(すぐに対策を説明)。
3.(グループ内の親会社へ対する報告会議)
  第一四半期の売上げといたしましては、
  ネット額で見ていきますと、
  対予算比で400万ショート、となっておりますが、
  えー……(落ち着き払って今後の対策を説明)
 (提供者:イトー)

■「足らない」→「欠けてる」→「ショートする」の
 三段活用も見事だが、原因説明の活用もすばらしい。
 現場の上司は、いちいち報告するまでもなく
 それがわかっているから説明しない。
 社内の会議では突っ込まれるまえに慌てて説明。
 親会社への報告では、むしろゆったりと説明。
 どう考えてもこれ、経験に基づいている投稿。

「それは、できないので、勘弁してくれ」の三段活用。
1:首記の件、諸処の事情により実施不可とお考えください。
2:首記の件につきましては、実施を検討しておりましたが、
  現時点では、実施が難しい状態であることを
  ご承知おきください。
3:首記の件、先にご報告の内容に関しては、
  弊社関係各部署にて検討しておりましたが、
  実施が非常に困難な状況にあるとの
  回答をせざるをえないことについて、
  ご理解いただけますようお願いいたします。
(提供者:吉澤)

■察するに文書での使い分けであろう。
 相手に対する配慮が大きくなるにつれ、
 自然、言葉は増えて長くなっていく。
 この3つの文書を細かく分析していけば
 オトナとはなんであるかが浮き彫りになってくるほど
 優秀な三段活用である。
 だって、言ってることほとんど同じだからね。

帰社する同僚に対してかける言葉。
1:おつかれさまです。
2:おつかれぇ〜。
3:おっ!ごくろぉ〜!
(提供者:PINE)

■ああ、これはわかりやすい。
 諸先輩方にとっては当たり前すぎるかもしれないが、
 学生諸君はここから、
 「ご苦労様」は目上の人に使ってはいけない
 ということを学んでほしいものである。

帰り際の挨拶です。
1:「お先〜っ」
2:「お先です」
3:「お先に失礼します」
(提供者:キト屋本舗)

■ベテランが帰っていく。
 中堅社員が帰っていく。
 新入社員が帰っていく。
 オトナっておもしろいなあ。

今回もたくさんの投稿をいただき痛み入ります。
それでは次回の問題を発表しましょう!


  実践問題その6 

 
夕方、先方を訪れて進捗状況を説明したあなた。
 まずまず順調であり、渡辺本部長もご機嫌です。
 ところが、席を立って挨拶を交わしたところ、
 予想外のひと言が先方から発せられました。
 「駅前に美味い店ができたんだが、
  このあと一杯どうだね?」
 本来ならおつきあいすべきところですが、
 今夜あなたにはプライベートで
 どーしても外せない用事があります。
 さあ、うまくしゃべって
 なんとかその場を切り抜けてください。
 例によって設定その他は自由です!
 

この実践問題の受付は終了いたしました。
 たくさんの投稿、ありがとうございました!


■■■ オトナの基本用語:その26 ■■■

花火を上げる
(提供者:kuroron)
■季節柄、このようなオトナ語はいかがだろう。
 事業などを派手に始めること。
 スタートすることを内外へアナウンスすること。
 「とりあえず花火上げてみるしかないでしょう」
 「あいつ、花火上げるだけ上げてそれっきりだからな」
 オトナの花火大会はなんとも爽快さに欠けるなあ。

中長期的
(提供者:サカ)
■いったいそれは長いのか長くないのか。
 「中長期的にみて」というのは
 どのくらいの期日をみているのか。
 長期と中期のあいだくらいが中長期なのか、
 長期にちょっと足りないのが中長期なのか。
 あんまり長いと突っ込まれるし、
 でもすぐにというわけにはいかないしなあ、
 というオトナの思惑が見え隠れする。

リーク
(提供者:みどり)
■情報を漏らすこと。例によって「する」をつけて
 「担当者がリークしたとしか思えないんですけどね」
 などと使う。ちなみにこの場合、
 ついポロッとしゃべったというのではなく、
 わざと外へ流すという意味合いがある。

大問題
(提供者:うし)
■大きな問題、というよりも
 「そのへんが無神経で頭にくる!」という
 ニュアンスを含んでいる。
 なにしろ、投稿者が添えてきた例文が
 非常に傑作なのでそのまま引用する。
 「だいたいあいつがしゃしゃり出て
  ヨーロッパ行く自体が大問題よ」
 ……何かそういうことがあったに違いない。

○○行きますけど、なんかいりますかぁ?
(提供者:チビノワ)
■「コンビニ行きますけど、なんかいりますかぁ?」
 「スタバ行くけど、なんかいりますかぁ?」
 新入社員が買い物に行くときは、
 このひと言を忘れてはならない。
 「じゃがりこのチーズ!」「なんか、おにぎり!」
 「うまそうなパン!」「甘そうなお菓子!」
 「ラテのトール!」「モカ、グランデ!」
 「モカフラペチーノショートでホットで!」
 もちろん、「なんかいりますかぁ?」を言うときは
 あらかじめメモを持っておくべきである。
 たかがお使いとはいえ、意外にさまざまな
 人間的センスが問われていることも
 忘れてはならない。

基本用語のほうも、これまでどおり募集します。
あてさきはpostman@1101.comです。
表題は「オトナ語基本」としてください。
「これはもう出てたっけ?」というものでも
気にせず自由に気軽にメールしてください!
ちなみにネタの説明文は
こちらで書き起こしておりますので、
適当に書いていただくだけでかまいません。


■■■ アシスタントよりご報告申し上げます。 ■■■

こんにちは、アシスタントです。
こちらは、オフィスからの自由なメールを
募集、掲載する自由なコーナーです。
本日もさっそく一通紹介いたします。



はじめまして。
ほぼ日初心者の学生です。
三日程前にほぼ日に出会ってからというもの、
“オトナ語”の世界にすっかり魅了され、
「こんなに知識欲を駆り立てられたのは何年振りだろう」
というくらい一気に貪り読んでしまいました。

では、私的に「これぞオトナ語!」という一語を。
昨年末、コンパで出会った電通マンにデートを迫り
あっさり断わられた際の一言。

「当分都合つかないな。年末進行でさ。」

“年末進行”という耳慣れない言葉。
得体は知れない、だがしかし、
それは確実に社会人特有の色を醸す“オトナ語”。
社会人のみが発しうるその言葉の甘美な響きに、
フラれた事実も忘れ、しばし酔いしれたものでした。
あれ程体よくスマートに女を拒絶できるなんて…
オトナ語パワー、恐るべし。
(提供者:sasasasakai)

うははははは、スマートちゃうっちゅうねん。
おまえもええかげんに目ぇさませよ、
「年末進行」ごときで酔いしれてたら、
年がら年中酔っぱらうっちゅーねん。
……コホン、失礼いたしました。
学生さんから見たオトナ語の世界もおもしろそうですね。
みなさまからの自由なメール、お待ちしていますね。
それでは本日はこのあたりで失礼いたします。
アシスタントでした!


オフィスからのふつうのおたより、
当コーナーへのふつうの感想なども
お待ちしております!
あてさきはpostman@1101.comです。
こちらのほうの表題は
ふつうに「オトナ語」でけっこうです。
みなさまからのメールが
新たなテーマをつくるのです!

2003-07-28-MON

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