第10回
アコムレディの幻想。
祖父江 男は、おおまかな全体像を
つかむのってにがてですよね。

「これがイイ」っていうガイドラインがあると、
ちょっと、安心してしまうところ、ありますよね?
糸井 ああ・・・。
祖父江 部分は得意だけど、
世界は見えてないんじゃないかなぁ・・・。
糸井 男は、生まれた時から不安ですからね。
しり (笑)あははははは。
祖父江 女性は「これくらいがホドホド」とか、
「あ、今こう見られてるな」っていうのを、
自分のカラダで確認しながらやってるけど、
男ってそういうのが少ないから・・・。
柳瀬 男には、尺度が自分の中になくて、
誰かに決めてもらってるっていう感じが
ありますよね。
糸井 生まれた時から不安ってことで言うと、
将来、自分で食ってかなきゃなんないという
恐ろしい恐怖を、少年時代から持ってましたね。
それはほんとにイヤでした。できたら逃げたい。

で、女の子は、ぼくの時代だと、
将来の夢って、だいたいお嫁さんだったんです。
そこでの、「のびのびした感じ」は、あったなぁ。
今は、女子もはたらくから、
そのあたりで変わっているかもしれない。
祖父江 うん。そーかも。
糸井 女に男の病が移ってるかも・・・。
しり うんうん。
柳瀬 ああ・・・。
祖父江 最近は、女子が異常なくらい
がんばっちゃってますよね。
そういえば、いろんな公募や就職試験とかでも、
男って必要以上には頑張らない気がします。
自分に優しいのかなんか、わからないけど。

例えば単純に、イラストの持ちこみにしても、
女子だと、「今ちょっと見れません」と言うと、
「いつなら見れますか」って次に来ますよね。

でも、男の人から電話がかかってくると、
だいたい、
「今ちょっと見れません」
「あ、そうですか。どうもすみません」
で終わっちゃうんですよ・・・。
糸井 ああ。
祖父江 このごろの男子って、頑張らないんですよ。
過剰さが薄まってきてるみたいなんです。
なんとなく、身をひそめている。
男の頑張りって美しいというか、
何か儚くて美しいはずなんですけどね。
逆に、女子の頑張りって何となく・・・。
ちょっとうまく言いにくいけど、
女子は、あんまりがんばるとね、
「無理」になってね、
違っちゃうような気がするんだよなぁ。
糸井 違っちゃう。なるほどねぇ。
祖父江 頑張れば頑張るほど
つらくみっともなくなっていくのが女性で、
頑張れば頑張るほど、
味が出てくるのが男かなぁ、と。
糸井 この座談会、いいキャスティングしたなあ。
祖父江さんって、なんでも知ってる! すごい。
祖父江 (笑)・・・いやん。
糸井 何か、内臓が納得したなぁ。

いま、男女の差をみんなで話してましたけど、
女性の中に、男性性が寄生してるんじゃないか、
という時も、ありますよね。
祖父江 寄生、してますよねえ・・・。
「おやじギャル」でもないけれども、
親父像、幻想の男像かな?
そういうものを通して、
男っぽくしてる人が多いですよね、女性の中に。
糸井 うん。
祖父江 あれは、なぜですかねえ?
糸井 うん。
「人は、このくらい男らしかったのか」
って、俺も女の人の姿を見て思うんですけど。
しりあがり家は、女らしい奥さんですか?
しり いわゆる「おしとやか」とか、
そういうのではないですね。
祖父江 明解です。
糸井 きっぱりしてる?
祖父江 ウジウジさがなくて、
悩むよりはスッと行っちゃう。
しり そうですね。悩まなすぎ。
祖父江 それが気持ちいい感じですよね。
しり 笑い声がギャハハっていう・・・
祖父江 で、怒る時は
「もうーっ!」とか言って、怒るよね。
糸井 (笑)そういうのが、
たぶんふつうなんじゃないか、
とぼくは想像してるんですよ。
しり 最近、そうですよねえ。
みんな、「ギャハハ」って言いますし。

糸井 ただ、独身で、夢いっぱいの
いわゆる玄宗(幻想)皇帝たちは・・・
ちがう女性を求めてる。
田中 あははは。
糸井 つまり、独身男性は、
アコムのCMに出てくるような
お姉さんが好きなんですよ。
田中 (笑)ああ、悩んでるうちに、
ボールペンでおデコに跡をつけちゃったような。
(※編集部註 「ボールペンでおデコに〜」
  は、「アイフル」のCMでした。
  ここで語られているのは、
  「アコム」のCMのお姉さんです。 )
糸井 ああいう人がいるという幻想を、
サラ金は、ふりまいてるんですね。
田中 ああ、言えてる。
糸井 ああいう女の人は、見事に「いない」よね。
しり ・・・ひょっとしたら、いるかも。
見た目とか、2時間ぐらいはボロ出さないで。
祖父江 アコムってどういうの?
糸井 要するに、あのう、独身男性の好きな
「言うこと聞きそうな女の子」・・・。
柳瀬 (笑)あぁ・・・。
ハキハキしてるんですよね。
で、肝心なことは、
「言うことを聞いてくれる」と・・・。
糸井 アコムのCMを見て、
「あんな人が、かえっていいんだよなぁ」
とか、全国の幻想を抱えた男たちが
思っているに違いないんですよ。

でも、そんな姿は、
「看護婦さんの優しさ」や
「プロレスラーの殴る姿」と同じぐらい、
仕事としてのモノなんですよねえ・・・。
柳瀬 (笑)アコムレディの清潔感は
レスラーの強さと同じかぁ、なるほど。
ただ、営業スマイルには、
いいことがありますよねえ・・・。
糸井 営業スマイルは、「あってほしい」よね。
田中 向こうも商売でやってたりすると
ゲンナリしますけれど。
糸井 でも、ポテトもつけますかって言った時に、
「なくてもいいです」
とは、言えないようなチカラがありますよ。
柳瀬 うんうん。
糸井 独身男性の幻想ってことで言うと、
たとえば水着も、いったん、
どんどん裸に近くなるじゃないですか。
ヌーディストがいたりとか。
だけど絶対にキープしてる分量ってある。
しり ええ。
糸井 また戻ったり。
あんなふうに残っていくんだね。
「あったほうがいいな」という気持ちが。
しり (笑)
糸井 つまり、男どうしで集まったって、
「町の女がぜんぶハダカだったら最高だなぁ」
とは、誰も言わないですから・・・。
田中 (笑)
糸井 中学生を集めても言わないだろうね。
誰かがいったんは言ったとしても、
あとで誰かが、反論出すよね。
「脱がせるからいいんだろ?」って、生意気に。
柳瀬 (笑)
糸井 「オマエ、脱がしたことあんのか?」
「ねぇけどさあ・・・」みたいな。
しり (笑)
糸井 服の起源って、そういうところにないですか?
たぶん、答えに行き着く前の
儀式というか、演説というか・・・。
田中 スカートの、
「のれん」みたいな感じは、
あるかもしれないですよね。
糸井 ただ、
ウエストコーストのギャルみたいな、
ヘソ出し系みたいなのは、
あれは意外と男ウケ悪いですよね。
柳瀬 (笑)あ、ダメですね。
糸井 ダメですよねえ。
「答えに近すぎる感じ」ですよね。
しり (笑)あはは。
  (つづく) 

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2003-03-10-MON


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