第2回
男は、つまんない?
糸井 次は、祖父江さんですね。
祖父江さんは、最初は工作舎という
ややこしいというか、特殊な会社に
はじめは勤めていたわけですけど・・・。
祖父江 そこにいた時は、ややこしいなんて
感じなかったんですがね・・・。
しり 忙しすぎたんじゃない?
糸井 働き者だったって話ですよね。
祖父江 働き者だったねぇ!!
しり うん。
糸井 やっぱり、
しりあがりさんと祖父江さんは、
多摩美の漫研で一緒だったから、
おたがい知ってるんだ、そのことはもう。
しり そうです。
祖父江 ぼくは生まれてから、
あんまり、男と女について
考えたことがなかったんですよ。
だから、ちょうど
今日、いい機会だなぁと思って・・・。
糸井 あははは(笑)。
「ちょうどいい機会」!
祖父江 男くさいっていっても、
別に筋肉とかではなさそうだし、
何だろうなぁって・・・ただ、もともと、
「男子っておもしろ味がないな」
とは、思ってたんですよ。
糸井 おお!
祖父江 男子って、つまんないですよねぇ。

男社会の中にいたことって、あまりないんです。
大学の時に男子寮だった、
というくらいなんですよ。あとはだいたい、
男も女もいるようなところで生きてきたんです。
ただ、男子っていうか、
「男!」みたいな感じの男子って、なんか、
やってることが同じようなことばっかりなんです。

・・・「よく飽きないな」って感じでね。
糸井 (笑)うまいこと言うなぁ。
祖父江 大学の寮にいるのは全員男だったんだけれども、
毎日やることが必ずもう決まっていて、
ぼくの部屋は、麻雀を打つ部屋だったんですよ。
糸井 うんうん。
祖父江 それで、みんな食べてるものも
それぞれ好きなものが決まっていて、
この人はこれを必ず食べるし、
この時間にみんな集まるし、
同じことをやって、くりかえしの毎日で、
「ワーッと行って、ドーンとかやって、ワー!」
そういうような・・・。
田中 (笑)
糸井 その通りだよ。
祖父江 飽きちゃってねえ。あんまり寮にいなかったよねえ。
糸井 その観察は、見事です。
たとえば、経済新聞片手に
赤鉛筆使ってる人でも、毎日で言うと、
同じことをくりかえしているわけですよね?
柳瀬 そうです。毎日やってます。
糸井 で、毎日だいたい
同じような話をして、飲んだくれてますよねぇ。
柳瀬 ええ。「日本の経済について」とか。
田中 (笑)
糸井 しりあがりさんが言ってた
Gメン75たちも、
お昼食べに行く時は毎日その姿だよ。
男からすると「・・・バレたか」っていう
すごい観察ですよねぇ。
 
祖父江 だけど、工作舎の時に、男子のことを
「あ、かっこいいな」
って思ったことは、あるんです。

それは何かって言うと・・・
だいたい、女性社員って、
「ほどあい」を知ってるんですよ。

「もう疲れたから帰りたい」とか、
「それはちょっと無理です」とか・・・。
女子には、身体と仕事のバランスがあるんです。
糸井 うん。
祖父江 ただ、男は身体が壊れても
半分寝ながら原稿を書いているし、
靴の紐を結びながら睡眠してるし・・・。
とにかくね、やり過ぎるというか、
がんばっちゃうんですね。

で、がんばっていいかどうかは
わからないんですけど、
何かその夢中になるなり方っていうか、
とてつもなくハマッていくところが、
逆にかっこいいなぁと思いまして。
糸井 そこは肯定的にとらえることが
できたわけですか。
祖父江 うん。
糸井 自分もそうだったんですか?
祖父江 自分も、そうでしたねえ。
なんか、やっていくとどんどん・・・。
糸井 もしかしたら、そういう祖父江さんを見て、
他の社員たちが祖父江さんのことを
「男っぽいなぁ」って見てたかもしれないですか?
祖父江 あ、それはぜったいないんじゃないかなぁ。
女子と遊ぶのが、割と好きだったんですよ。
そのほうが、ラクなの。
男子と遊んでる時って、何か気負いと言うか、
「よしっ!」っていう気持ちが必要で・・・。
「この人とおつきあいするぞ」という・・・。
糸井 男とは、人間関係が「社会」ですよね。
祖父江 はい。社会。
男子とは、気楽にお話できないんですよね。
しり そうですね。
漫研でも、女の子といる時は
すごいキャーキャー話してるけど、
男といる時には敬語になってたりしなかった?
祖父江 してたしてた。
糸井 (笑)
祖父江 そういえば、しりあがりさんも、
「戦争」っていう
鉛筆立ててチョンチョンチョンってやるのが
すごく好きでねえ。
同じクラブだったんですけど、
部室に行く度に
「戦争やろう、戦争やろう」って言って、
みんなが「またかよ・・・」って。

「戦争」
田中 (笑)
糸井 それも、過剰にやってたわけですね。
祖父江 過剰なんですよ、必ずそれなんです。
それ、きっと鍵じゃない?
糸井 なるほどなぁ。
共通して確かに、
「過剰」っていうことについては
男像として、浮かび上がってくるね。
しり 過剰っていうか、
女の人って「自分が大切」とか
「自分」っていうのをモロに出すけど、
男の場合は仕事とか会社とか、
漫画なら漫画に燃えるっていうような
大義名分がないと、
何か、かっこつかないような・・・。

「自分のために何かをする」っていうのは、
ちょっとダメみたいな気が起こっちゃってて。
糸井 それもキーワードですよね。
ぼくも確かに「男らしい」っていうのは
基本的には、ニガテなんですよ。
でも、虚構としてはすごく好きで・・・。
さっきのGメン75の画面みたいっていうのも、
俺は絶対に「おー!」って感動するんですよ。
田中 (笑)
糸井 それに、スポーツも好きなんです。
そこのところで、過剰に男っていう
マッチョな世界をものすごく好きで、
泣いたりしてるわけ・・・でも、
自分の生活の中には、その要素がまったくない。

つまり、ポルノグラフィと同じように、
男像がファンタジーなんですよ。
勝新がおもしろいっていうのはわかるんだけど、
「ほんとは、そういうヤツは強くない」
っていうのを、同時にどこかで感じているわけです。
その「過剰の滑稽さ」を、
いつもたのしんでいるような気がするなぁ。
 
(つづく)   


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2003-02-26-WED


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