第1回
あ、男がいた!
糸井 「男はどこへ行った?」っていう、
わけのわからないタイトルの座談会に
集まっていただき、ありがとうございます。

だいたい、なんでこんな座談会を
やりたかったのかと言うと、
「ほぼ日」のスタッフが、なんだかんだで
たし算をしてみたら、20人近くまで増えていて、
ふと思ってみたら、男って
その中で4人ぐらいなんですよ・・・。
その話を、他の会社の社長にしてみたら、
「あ、ウチも、そうなんですよねぇ」と。
柳瀬 ぼくの職場も、女性、増えてます。
糸井 職場に「男っ気」はほとんどないし、
精神的な意味でも、男たちはぜんぜん、
オトコオトコしてないみたいだし・・・。
「今、男はどこへ行ったんだ?」と。

もともと、そんなにないほうだと思うけど、
自分の中でも、「男成分」は、前より
かなり失われたり風化したような気がしてるし、
あっちこっちでも、
「男だ!」みたいな姿を、
あんまり、見かけないような気がするんです。
Vシネ系の仁侠系の人たちぐらいかなぁ。
でも、それも「業務としての男」ですし。

男成分の行方を探りたいっていう時に、
思いついたのが、このメンバーでして・・・。
それぞれの人の、社会における
「男」との出会いの変遷を聞きたいんですよ。

まずは・・・誰かなぁ。
いわゆる一部上場、いかにも大会社で
会社員とマンガ家の二重生活をしつつ、
いまはマンガ家の、しりあがりさんからかな?
しり
あがり
(以下
  しり)
何だか忘れていることが多くて、
思い出しながらになっちゃいますけど、
とにかく、ぼくは、なんか、
ずっと男らしくなかったんですよ。
中学では軟庭やってたし、
高校入ったら美術部行っちゃって、
大学は美大でバトミントン部で・・・。

男っぽいのが苦手で、
当時だと梶原一騎っぽいヤツとか、
すごいイヤだったんですよ。
痛そう・・・
男って、なんか、痛そうじゃないですか。
糸井 (笑)
田中 痛いですね。
しり で、会社に入ったら、なんだかそこに・・・。
糸井 男がいた?
しり ええ。
糸井 おお!
しりあがりさんがいたのは、
酒類販売の会社だったから、
やっぱり、男は、いたんでしょうねぇ。
その出会いが知りたいです。
しり ぼくらの隣のシマが特販課っていって、
ベテラン社員4人にリーダーがひとりみたいな、
お客さんの中でも、たとえば西武球場とか
デカいところで営業をやっている、
デキる男の集まる課がありまして・・・。
糸井 「スゴ腕」だ。
しり はい。
そのスゴ腕のベテラン4人、プラス、
もっとデキるリーダーが1人いたんですけど、
その5人は、いつも昼は一緒で、
原宿の裏道の狭い道を、
Gメン75みたいに・・・。
糸井 わはははは!(笑)
目に浮かびます。背広の前がヒラヒラする・・・。
しり あれは、見て、「あ、かっこいいな」って。
糸井 すごい。
「男」のアウトプットができているわけだよね。
しり そこでまた、みなさん、
歳イッてるっていうのがまたかっこよくて。
糸井 あぁ、わかる。
しり ヘナヘナしてない。
糸井 当然、酒がらみの話はありましたか?
しり そうですね・・・。
会社に独身寮ってのがあって、
男がパンツ1丁で人がウロウロ歩いてるし、
部屋に鍵がないんですよね、だいたいからして。
糸井 あぁ、イヤなくらい、男くさいなぁ(笑)。

しり で、まぁ、その独身寮とかで、
新人歓迎っていうことで、毎日、
何かと趣向を凝らしては飲まされたんですけど、
いやぁ、あれは、けっこう吐きました。
毎朝、急行とか乗れないんですよね。
いつ吐くかわからないから各駅で途中で降りて。

会社の先輩が、
「いくら飲んでもいいし、
 会社に来たらどこかでぶっ倒れててもいいから、
 とにかく会社に来い」って言うんで、
とにかく会社に行って、
そのまますぐに2階のトイレでオオオッて吐いて。
しばらくトイレで座ってたり・・・。
柳瀬 うわぁ(笑)。
しり やっぱり男の人と女の人の違いを感じたのは、
女の人って、そういう時、
「体調が悪くて」って平気で休むんですよね。
田中 それ、ありますねぇ。
しり おい、昨日あんなに飲んでたからだろ!みたいな。
糸井 (笑)
しり 女の人は体調悪いって休むし、
男は会社に出てきて吐く。
ま、どっちが利口か全然分からないんですけど。
糸井 もともと男臭さが苦手だったしりあがりさんは、
「・・・ここは、俺のいるところじゃないなぁ」
というふうには思わなかったわけですよね。
しり あ、それはそれで、
「絵に描いたように」というか、
分かりやすくて、単純でしたから。
目上と目下、位の上下がハッキリしていて、
下の人はどうふるまう、上の人はどうふるまう、
うまくいくかどうかは別にして、モデルがあるので
糸井 なるほど、つかみやすかった、と。
しりあがりさんがかっこいいと思った
「男くささ」は、何かありました?
しり やっぱり、責任を取ってくれるところ。
糸井 そのシンボルとしての絵が、
さっきの歩くGメンですねぇ。
しり (笑)もう、5人一丸で。
糸井 責任の5人が歩いてる・・・
そりゃ確かに、見たら「おお」って思うね。
しり まぁ、そうやって歩いて
どこ行くかって言ったら、
千円ぐらいの定食を
食いにいくだけなんだけど・・・。
糸井 (笑)
しり ぼくも会社で、けっこう
いろいろ失敗してたんですけど、
怒らないで「・・・わかった」と言うとかね。
「俺を甘やかさないほうがいいよ」
とか、内心では言われながらも思ってるんですけど。
「そんなことしてると、図に乗るよ?」とか。
糸井 (笑)
しり でも、さしあたり、
「ああ、いい人だなぁ」と。
糸井 さしあたり(笑)。
しり リスクを飲みこんでくれる感じは、
かっこいいですよね。
糸井 「リスクを飲みこんでくれる」か。
それは何か、今日のテーマの
大きなヒントが隠れていますね・・・。
  (つづく) 

今回の座談会の感想や、
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2003-02-25-TUE


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