MONEY IS… vol.01 貧乏と芸術の間の千円札。 赤瀬川原平さんの、とても正直な「お金」の話。




第1回 お金に頓着していないフリ。 2010-05-25-TUE
第2回 お金は「性」に似ている。 2010-05-26-WED
第3回 通貨及証券模造取締法違反。 2010-05-27-THU
第4回 お金は「複数」が命。  2010-05-28-FRI
第5回 懲役3ヶ月・執行猶予1年。  2010-05-31-MON
第6回 「芸術」VS「社会」。  2010-06-01-TUE
第7回 本物の貧乏。    2010-06-02-WED
第8回 阿佐ヶ谷の見えない邸宅。  2010-06-03-THU
第9回 お金は「血」なり。  2010-06-03-FRI

糸井 今日は、テーマがございまして。
赤瀬川 はい。
糸井 「お金」なんですけど‥‥。
赤瀬川 ええ、(FAXに)書いてあったね。
糸井 こんど、6月6日の「ほぼ日」創刊記念の日に
矢沢永吉という人と
日経ホールで、トークイベントをするんです。
赤瀬川 その‥‥「お金」についての。
糸井 はい、その日をひとつのピークにしつつ、
「お金」について考える特集を
「ほぼ日」の創刊12周年の記念企画として
やっていこうと思ってるんです。
赤瀬川 ええ、ええ。
糸井 で、そもそもの話をしますと、
ぼく自身「お金に頓着しない」って「フリ」を
していたなぁ‥‥ということに、
あるときに、ふと、気がついたことがあって。
赤瀬川 フリ。‥‥いつごろの話?
糸井 40代に入ったくらい、だと思います。

それまでは
「オレはカネに頓着しない男だ」って
無理やり思い込んでたんですよ。
赤瀬川 はい、ええ。
糸井 と同時に「スケベ!」って言われようが
「バカ!」って言われようが
平気なんだけれども、
「ケチ!」って言われるのだけは
イヤだなってことにも、気づいたんです。
赤瀬川 うん、ケチって言われるのはイヤだよね。
糸井 ぼくがまだフリーのころの話ですけど、
請求書一枚出すのにも、悩んじゃうわけです。

「自分の仕事をいくらだと思ってるって、
 思われるんだろう」みたいな。
赤瀬川 「ケチ」の反対側には「見栄」があるんだよね。
糸井 そうそう、そうなんですよ。

で、誰も見てないところで裸になるみたいにして
ひとりで考えてみたら、
結局、ぼくは「お金」が好きだし、
同時に「お金」を怖がってたんじゃないかと。
赤瀬川 糸井さんが40代っていうと、いつごろかな。
糸井 時代としては、約20年前です。
1990年ぐらいですね、バブルのころ。
赤瀬川 ああ‥‥。
糸井 赤瀬川さんが「路上観察学会」をはじめて
ちょっと経ったくらいじゃないですかね。

※路上観察学会
 1986年、赤瀬川さんを中心に結成された、
 「路上」を観察し、写真に収めて鑑賞などする団体。
 メンバーは、南伸坊さん、建築史家の藤森照信さん、
 筑摩書房の編集者・松田哲夫さんなど。
赤瀬川 そうかもしれない。
糸井 そのころから「お金」についてきちんと考えないと、
なにか違ってきちゃうぞって、思いはじめまして。
赤瀬川 うん‥‥うん。
糸井 つまり、お金のことから「逃げて」いたんです。

そこで、
「こういうとき、オレはケチなんだな」とか、
「こういうとき、
 お金のことはどうでもいいのか」とか、
そのつどそのつど、
なるべく正直に、考えるようにしてきたんです。
赤瀬川 うん‥‥うん。
糸井 そんなときに、10年くらい前かなぁ、
邱永漢(きゅうえいかん)という人に、会ったんです。
赤瀬川 ああ、はい。邱永漢さんね。
糸井 この人、「お金の神様」と言われるだけあって、
話を聞いてると、本当におもしろいんです。

まず、お金のことを考えてきた「時間」が長いし、
それも、切迫したところで、
本気で「お金」を考えてきている人ですから。
赤瀬川 その人の言葉でね、こういうのが、あったでしょう。
「お金っていうのは寂しがり屋だから、
 大勢いるところに、集まりたがるんですよ」って。

あれ、真実だなあと思いましたね。くやしいけど(笑)。
糸井 ええ、で、そのあたりから
自分ひとりで、つまりフリーでやる仕事じゃなくて、
「ほぼ日」というチームプレイに
仕事の軸が、シフトしていったんです。

そうすると「オレは金なんて、要らないよ」なんて
自分ではどんなに見栄を張れても、
チームの仲間に
同じことを言わせるわけには、いかなくなる。
赤瀬川 そうでしょうねぇ。
糸井 ますます、
お金に対して「どう考えたらいいか」の「練習」を、
するようになってきたんですね。
赤瀬川 なるほどねぇ。
糸井 そういう目で、まわりを見渡してみると
「お金というものは、ちょっとでも多くほしいんだ」とか、
「持ってるやつはいいよ、要らないだなんて言えて」とか、
そういう言いかたばっかりで。
赤瀬川 うーん、それはまぁ‥‥どうしてもというか。
糸井 その一方で、
「お金じゃないよ」って簡単に言いすぎる人も
これまた多かったんですよ。
赤瀬川 どっちも極端なんでしょうね。
糸井 そう、どっちも違うって思ったんです。

そこで、12周年といういい機会でもあるし、
あらためて「お金」について
すこし「ぐずぐず」考えたいなぁと思って‥‥
赤瀬川さんに、ご足労いただいたわけなんです。
赤瀬川 ぼくでいいのかな?(笑)
糸井 だって、赤瀬川さんは、邱永漢さんとかとは
また別の方面から
ずっと「お金」を見つめてきた人ですから。
赤瀬川 まぁ、そうかもしれない。
糸井 あの「千円札を印刷」して起訴された
有名な「千円札裁判」の話は
おいおい、出てくると思うんですけど、
いちばん「赤瀬川さん」で思い出す「お金の話」は、
(南)伸坊に聞いた‥‥。
赤瀬川 んー‥‥と?
糸井 赤瀬川さんが
「お金をばら撒きながら歩いてた」って話。
赤瀬川 ああ。
<つづきます!>


2010-05-25-TUE