おいら。
(天海祐希の了見)

第140回 同級生が。

先日、水曜日の情事のロケを都内某所でしていた時の事。

ロケながら 割と重要な部分を撮影していた。
おいら感情を動かすべく、集中していた。

そのおいらの前を一台の自転車が通過し、止まった。
しかもおいらを覗き見た。

そして、近寄ってくる・・

「ああ・・・今は、やめてくれ。頼む。
 今だけは、声をかけないで・・」

と、おいら下を向きながら 心の中で お願いした。

これね、有り難い事だとは思うんだが、
芝居の為に集中してない時なんかは、いいのよ。
集中してたり、
本番直前には 一生懸命感情を動かしてるので、
ちと辛い時があるのよ。

声をかけられるのは・・

案の定、その自転車の人は 私の目の前に立ち、

「ゆりちゃん?ゆりちゃんでしょーう?」

甲高い声で 話し掛ける。

「ゆりちゃん・・って。おいらは今は あいちゃんよ。」
と、何とか自分の感情が途切れないように
コントロールしながら、下を向いて ・・
申し訳ないが 反応しない様にした。

「もう少ししたら 本番・・
 本番終わったらこんにちわって言えるから・・
 今はごめん。ごめん。」
心で思った。

「ゆりちゃんでしょー?ゆりちゃん ゆりちゃん・・・」
強烈な自己アピールを 自転車女は 繰り返す。

「ぐえー・・勘弁してくれぇー」
「ねーねー・・ゆりちゃん ゆりちゃん・・・・・・・
 元気?」
「・・・・えっ?
 今、元気って・・元気って言った?
 知り合いかぁー?」

泣く為の準備をしていたおいらは、
きっと眉間にしわが寄ってたであろう・・
そんな顔で、顔を上げた・・

(だ だれ?)

・・・・・・・?・・・・・

「げー・・とこちゃん?」
「そうそう・・ゆりちゃん 元気?」

・・・・中学の同級生だ・・

「ちょっと、今 大変だから 待ってて。
 このシーン終わったら話せるから。待ってて」

・・・ってな訳で、とこちゃんは、
5分ほど側で待っててくれた。

本番終了後、おいらはとこちゃんと語り合った。
すっごい久しぶり。
卒業以来だ。

とこちゃん、主婦になってた。
中学時代からの可愛い笑顔はそのままに、
しっかり逞しい母になってた。
生き生きとした母になってた。

ちょっとふくよかになってたが、
それがまた とこちゃんらしかった。

何だか素敵だって思った。

とこちゃん・・会えて嬉しかったよ。
忙しさにかまけてたおいらを
ふと我に戻してくれた気がした。
有り難う。

・・・・でも、とこちゃん。
本番直前に声かけないでね。よろしく どーぞ。
はははは・・・

因みに撮ってたシーンは、水曜日の情事7話の最後、
区役所前で詠一郎さんと別れ、
振り向き 涙ぐむアップの顔でした。

それでは また
おいらでした。

2001-11-30-FRI

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