おいら。
(天海祐希の了見)

第0回 この唐突さが、たまらない。

なんで突然、天海祐希さんの連載がスタートしたのか。
これはこれで、速度があっておもしろかったので、
その話からはじめましょう。

つい最近のことだったんですけどね。
野田秀樹さんの次の公演『パンドラの鐘』パンフレットに、
対談を掲載したいといということで、
ぼくが稽古場にむかったのが、そもそものはじまりでした。
出演のメンバーのなかに、天海さんがいたわけです。

もともと、ぼくは俳優とか歌手とかについては
詳しいほうではなくて。
野田MAPの前回の公演『半神』でも、舞台終了直後に、
「ああ、おもしろかったー」と隣にいたカグチさんに、
おおざっぱで手短かな感想を述べまして、
「ところで、どっちのこが深津絵里?」とまじめに聞いて、
そんなことも知らなかったのかとあきれられました。
松坂慶子さんの隣でごはんを食べていて気がつかなかった
ということもありましたしね。
だから、天海祐希さんについても、
それとわかっただけまし、という感じでありました。
前に、やっぱり野田くんの芝居のあとの楽屋で、
いちど挨拶はしていたしね。

ところが、縁というのは不思議なものであります。
彼女は、ぬあんと、「ほぼ日」読者だったのでありました。
うれしいじゃありませんか。
あなたと同じ、ほぼ日読者、ですよ。
それを聞くと、突然、気楽になっちゃうというか、
親しみが増量しちゃって、
「じゃ、この芝居の稽古場日記でも、他のことでも、
なんか書いてくれませんか?」と、ナンパしたわけ。

その夜のメールから、引用しましょう。



「初メール」

早速 メールします。
今日は、突然 失礼で馴れ馴れしい事を 言ってしまい
失礼しました。
パソコン買ってからと言うもの、
そうそうに「ほぼ日」を見せて頂いてたので、
つい 言ってしまいました。
以前、「半神」の楽屋で お見掛けした時
「ああ ポストマンだ」
と、思って一人で うひゃうひゃ喜んでいまして・・・
んで、今日 糸井さんが 稽古場にいらっしゃる
って言うんで、
思い切って お声をかけてしまった訳です。

それでですね、何か書かせて下さるって お話ですが。
取りあえず、マネージャーと相談してみますね。
でも、私が楽しみで やってみたいと言えば
自由にさせてもらえると 思うのです。
文を書くのは、好きなんですよ。
上手くは ないですが。

話が、まとまったら直ぐに ご連絡しますね。

Tシャツ 有り難うございました。
「ぎゃー ほぼ日の だぜ!」と 大喜びしています。
大切にしますね。ひょっひょっひょっ。

と、・・・
馴れ馴れしくすいません。
自分がいつも 読んでいるので、
つい 凄い知り合いみたいに 錯覚してしまいました。

それでは、また メールします。
今日は 凄く 嬉しい日でした。
有り難うございました。
おやすみなさい。

みんみんあまみ



話が早いねぇ。数時間後だもん。
んで、ぼくも一歩遅れちまったとあわてて返信。
その最後に、こんなことをかいた。

>おやすみなさい。
といわれたのですが、今日は日曜日で、
テレビ朝日の「Gスポーツ」という番組もあるので、
それを見て、明日あさっての仕事をして寝ます。
もし、まだ起きていたら「Gスポーツ」はおすすめです。

そしたら、こんどは・・・



「だからぁ・・・」

見ちゃってるよ。
G−スポーツ・・・

なんだか だらだらしてたら、始まっちゃった。
初めて見ましたが、お決まりのスポーツ番組じゃなくて
良い感じです。

キャスターのいる 訳の解らないスポーツ番組は、
コメンテーターと 称する偉そうな人が
個人の贔屓目や仲良しばっかりを
褒め称えるので 嫌いなんだ。
でも、これは
まるで 感動番組のようで 好きだ。

私、偉そうに見えるでしょ? 顔が・・・ 態度も?
冷たそうとか 話し掛けにくいとか
話さないと 良く言われるんです。
背が高いし、顔も 生意気そうだからかな?
でもね、高校野球とか NHKドキュメンタリーとか
純粋に頑張っている人を見ると
テレビ見ながら 泣くの。
「頑張れ!いいぞー。おいらも頑張ろう!」みたいな。

悔しかったり、悲しかったりの 涙は
その感情に更に 追い討ちをかけるようで 流したくない。
その代わり、感激や感動に弱いんだな。
まー、下町気質?そのまんま・・・
おいら 下町生まれの 下町育ち。
ちゃきちゃき・・・なんです。
もう てやんでぃ、べらぼうめ・・・って まんま・・・
祭囃子が 聞こえて来たら、黙っていられん!・・・
ああ、これでも 32になりました。
今年の実家の方のお祭りでも、
御神輿担ぐつもりは なかったの。女優・・だし。
肩が腫れるなんて もっての外。
一応 商品だし。
んー。でも、御神輿について 歩くぐらいは いいじゃん。
って、みんなが 担いでる中、ただ、見てた。
見ている筈だった。兄貴が「担ぐか?」
なーんて 誘っても いやいや、女優だし。商品だし。
もう 32だし・・・女優さんで32で
御神輿なんてさ・・・

・・・・・いた。次の瞬間。御神輿の集団の中に。・・・
それも 花棒。
あっ、御神輿の正面の一番目立つ 棒のことね。
花棒においらの肩が あった。
しかも、一番でかい声で 掛け声かけてた。

まただ。またやっちまった。ふー。

そんな、奴です。おいらってば・・・
どうぞ、よろしく・・・

それじゃ ほんとに お休みなさい。

あまみんみん



もう、これ、そのまま「ほぼ日」の原稿でしょう!
連載タイトルは、この感じで考えましょう。
ってことで、
「おいら。」というタイトルつけて、連載準備。

何度か打ち合わせをかねたむだ話がやりとりされて。



あっ!お帰りやす。
京都どうどした?おいら 京都大好き。
そーいえば、おいら 京都に向かう電車の中で
「すり」捕まえた。
笑っちゃうでしょ。でも これ まじで。
おいら 表彰されちゃったもんね。
あっ、これも 書けるか。

うほうほ、趣味ができたよーん おかーさーん。

ってな訳で・・・
とうとう 憧れのおいらの おさるくん?が、出来るのね。
ああ 感動!最近希に見る 感動。

極まれに、こんな仕事してて よかったっー!てのが
あるんだけど 正に、筆頭だね。
おとうさん おかあさん 生んでくれてありがとー。

それじゃ お返事 お待ちしていまふ。 かしこ

みんみんあまみん



わかりましたね。読者のみなさん。
こういう感じで、本日にいたるわけです。
おとうさんとおかあさんまででてきちゃったもんねー。
俺もついでに感謝しておきます。ぺこっ。

しかしさぁ。
テレビとかのイメージだけで、
どういう人間かわかったつもりになっちゃイケナイよねぇ。

メール全部は、ここに引用しませんでしたが、
この「ナイスガイ」ぶりは、
アッキイの「絵描き欲」をも燃えあがらせ、
おさるのアイコンも、すぐできちゃった。

新連載「おいら。」は、明日が、本番スタートです。

1999-10-19-TUE

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