その拾 [10] スタッフ1人ずつにインタビューしてみたい


染五郎 「踊り最強論」はかなり‥‥
糸井 説得力あるでしょ?
染五郎 そうですね。
糸井 政治の世界に行ったって
踊ってる人は大丈夫ですよ。
「こう来たらこう来る、はい、
 トントン、はい」みたいな。
それすべてですからね、人生の(笑)。
染五郎 ああ、ありですね。

somegoro
糸井 ありでしょう。
染五郎 かなり、ええ。
糸井 で、ボディ的に強い。
踊りできてれば歌歌えますからね。
染五郎 そう、すべてにつながっていきますね。
糸井 僕は自分が踊りに憧れながら、
やってこなかったし、できなかった人間なので、
それに対する憧れがもうむやみに強いんです(笑)。
今、ダンス甲子園的なものっていうのを見るのも
ものすごく好きで。
あの子たち、しゃべるの下手だけど、
あんなに表現できれば、もうさ、
不良ったって一生懸命やってるよって思うんです。
染五郎 カッコいいですよね。
糸井 カッコいいですよ。
できないよ、あんなくるくる回ったり。
染五郎 できないですね。
糸井 それを「あいつらはさ」と言ってる、
なまじ勉強のできるやつなんて、
努力のどにもなってないですよね(笑)。
染五郎 ああ。カッコいいですよね。
糸井 うん。
(画面のなかの染五郎さんを見て)
こんなことだれができる(笑)!
染五郎 (笑)いやいやいやいや。
ここ、スローがかかってますね。
糸井 かかってましたね。
ゲキ×シネならではの。
染五郎 こだわってますね。もうそれこそ、
この照明やら音効やらメイク、
衣装、小道具のこだわりもさることながら、
このDVDを作るスタッフのこだわりももう。
糸井 DVDのスタッフは
何人ぐらいのチームなんですか。
相当多いでしょう。カメラの数だけでも。
染五郎 ええ。まあ、最後テロップが出てくるんで
数数えていただければわかりますが、
冗談じゃないかってぐらい数入ってますからね。
前に『髑髏城の七人』のときは
日生劇場ってとこでやったんですけど、
あれがちょうど地下というか舞台の下が長くなって、
上でカメラが撮っているものを
下でモニター見ながらやってたんですけど、
なんか宇宙基地みたいな感じで、
カメラがモニターがブワーッとあって、
そこに何だかわからない
ボタンだらけのものがバーッと置いてあって(笑)、
凄まじいことしてるなあと思って。
普通の舞台中継の感覚とまったく違って。
‥‥それはもう意地になってますからね。
糸井 意地になってますか(笑)。
染五郎 ええ。まあ、それだけ舞台のよさというか演出のよさ、
作品のよさというものをわかってですけど。
糸井 ここまでできたっていうのは
やっぱりみんなビックリしますよね。
染五郎 いや、もう本当に、
いっつもいっつも楽しみにしてますよね。
糸井 大きい意味では、そのモニターの数があっても
流れてる中心になるお話っていうか、
オーケストラの楽器の譜面がいくつあろうが、
この1曲が支えてるんですよってとこで
集中できるっていうのが
多分、秘密なんだろうね。
一点を、中心に据えてますよね。
染五郎 うん、そうですね。
それこそ、ちゃんともう稽古から入って、
演出を把握してますよね。
糸井 なんでやってるのって
スタッフ1人ずつにインタビューしてみたいね。
染五郎 (笑)
糸井 その「役者じゃない人たち」の
DVD副音声をやってほしいね。
副副音声でいいから。
つまり、「俺、このときの光がさ」とか。
染五郎 それは面白いですね。
副副音声ね。
それぞれのパートで
こだわりは随所にあると思いますから。

糸井 しゃべり、下手でいいと思うんですよ。
染五郎 そうですね。
「言われたから、やってる」
だけでもいいですから(笑)。
「本当はね、僕はね、こうしたかったんだけど」
っていうのもいいですよね。
糸井 その意味ではね、僕、ゲキ×シネになってから
初めて思ったことは
やっぱり、顔の表情の芝居をこんなにしているのに、
舞台ではほとんど遠い人は見えないわけで、
役者さんたちがトータルに演じてるってことの
面白さをつくづく思いました。
ゲキ×シネなら
目玉の黒目の動きまで見えますからね。
染五郎 けっこうメイクの苦労も
ここで報われるようなとこありますから。
糸井 そうですねえ。
で、僕、
「ラストシーンの染五郎の顔はすごいよ」
っていうのを最初に聞いて、
舞台で見た覚えないのに
すごかったって思ったもんね。
「ああ、そりゃすごかった」って。
でも、劇場で
そんなに見えたはずないんですよね(笑)。
(わざと面白い顔をしている田山涼成さんが映る)
‥‥あ、これ、ちあきなおみじゃない?(笑)
染五郎 (笑)。僕はここ見られなかったんです。
隣にいるんで。
まあ、見ないようにしてたって
とこもあるんですけど。
もう油断するとプッといってしまうんで。
糸井 笑わし仕掛けてくるっていうのは、
やっぱりときどきは?
染五郎 ありますね。「朧」に関しては
そんななかったですけどね。
橋本じゅんさんという、
これには今回出てられないんですけども、
僕は師匠と呼んでるんですけど。
糸井 あの人は危険ですねえ。
染五郎 とても危険ですね。
糸井 危険でしょうねえ。
染五郎 それこそアドリブの入る余地のないところに
無理矢理押し込んで、
それを積み重ねていきますからね。
今日はこれで、明日はそれプラスこれみたいな。
普通、せめて、昨日のは捨てて
今日はっていうんですけど、
積み重なっていきますからね(笑)。
糸井 (笑)芝居してる人ほど、
そのことの恐ろしさに気づくみたいな。
染五郎 そうですね(笑)。
糸井 うちの妻は橋本じゅんさんの大ファンですね。
つまり、「ひどい〜!」って(笑)。
染五郎 ひどいって(笑)。
年季も違いますからね、やはり。
もう大昔の映像とか見る機会があったりしますけど、
20何年前からやってることですからね。
糸井 その意味ではこの同じ『朧』の芝居でも、
別の人がリミックスしたら全然違う(笑)。
染五郎 (笑)あ、特典映像として、
そういうこともいいですね。
すごーい安ーくなる感じが(笑)。
モーニング娘。のDVDで、
それぞれのその人用のカメラがついてて、
その人が歌ってなくても
ずっとその人のことばっかり追ってることに
切り替えられるのがあるんですけど、
そういうのもありですね。
糸井 ありですね。
染五郎 ずーっと。ともすると、
引っ込んでも追ってるみたいな。
とにかく、その芝居中のその人を
ずっと追うみたいな。
糸井 それはでも、そういうファンは
絶対いるはずですよね、同時にね。
染五郎 見たい人いますね。
糸井 いますよね。多分、
例えば僕と今染五郎さんが話してるときに、
「どうしてあの人のあの芝居のいいところを
 ここで語ってないんですか」
って怒る人いますからね。
つまり、語らないってことについて
怒るっていうタイプのお客さんっていますから。
仮にSMAPで中居君褒めたときに、
「そのときは草なぎ君がよかったんですよ」
みたいな(笑)。
染五郎 (笑)
糸井 でも新感線だとできるなあ。
染五郎 できますね。
糸井 せっかく15台あるんだったら、
ほかの日に撮っといて。
染五郎 でも、すごく演出効果を増幅するような
撮り方で集中してますからね。
ひとつになってますからね。
糸井 そうですね、これはね。




2008-01-14-MON

(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN