「ほぼ日」糠漬け部、活動中
   
モギ
モギの糠漬け
1 おふくろの味。
モギの糠漬け
透明感のある大根。

大根のおいしい季節になってまいりました。
ワタクシの糠床には、
つねに大根様がのんびり寝ておいでです。
透明感がでてきたころを食べごろとしておりますので、
毎日、大根様を起こして、
ちょっと脇によけておいていただきまして、
それから糠床をかき混ぜまして、
また元にもどす、ということを1週間くらいしましてから、
食卓に上らせるようにいたしております。

さてさて、先日社員旅行に京都へまいりました。
そして、念願の山椒の塩漬けを
入手いたしたのでございます。
自宅にもどって、
いそいそとそれを糠床にほうりこみまして、
待つこと3日ほど。
とっておきの大根をとりだしました。

「べつに、味はかわらん。」

というのが感想でありますな。

しかし、どうしたら、
深みのない青春の糠漬けから脱出できるのか!
何を糠床にいれたら、
深みのある大人の糠漬けができるのか!
いい加減にしろ! 糠床!
と、多少キレてみたりしてな。

で、思い出したのが、
糠漬けをはじめるときに、
よくわからないままに買っておいた
「ぬかみそからし」。
糠床が臭くなってきたときなどに投入すると
そのスメルがとまるというようなものであります。
原材料を見て見ると、
からし、卵の殻、陳皮、唐辛子、山椒と出ている。
ここでも「山椒」か。
どんだけ「山椒」を投入すれば気が済むんだろうか。
ま、それはさておき、まあ何入れてもかわんなかったし、
いれてみれはいいんじゃないの? 
という軽い気持ちで、
袋の裏にかいてある適量を、投下。
けっこうな量であったことを報告しておこうぞ。

ふたたび、待つこと3日。

えー、報告いたしましょう。
おいしかったということを!
味わいが出たということを
大根の味わいが深くなったということを!
そうそう、これこれ、
糠漬けはこうでなくっちゃいかん!

ご満悦で、ぽりぽりとくらっておりますときに、
ふと頭をよぎることがある。
「もしや、このなじみ感のある味は、
 母の糠漬けの味ではないだろうか。」ということだ。

こういうときは、
とっとと電話をして確認するに限る。
曰く、

「そうね、
 ぬかみそからしは、いつもたっぷりいれるわよ。」

や、やっぱり!

つまり、ワタクシが「うまい!」と
感じる糠漬けの味は、
ぬかみそからしの風味ゆたかな、
母のつくる糠漬けの味であったわけだ。

我が母は毎年冬になると
糠床をすてちゃうっていうんだったら、
私が私の糠床の祖になり、
その味を末代まで伝えるとか息巻いたり、
胡椒だのコリアンダーだのをいれてみたり、
たくさん冒険をしたっていうのに、
たどり着いたところは、
「かあさんのつける糠漬け」と同じ味ってわけだ。

なんか、無念!
しかし、うまい!

とじる