糸井重里、最初の感想

7月のある日、この映画を観た糸井重里は、
翌日の「今日のダーリン」に、
このような感想を記していました。

映画館に行く時間が見つけられなくて、
サンプルDVDで観ただけなのですが、
『ディア・ドクター』は、よかったなぁ。
もういちど、ちゃんと大きないい映像で観るために、
必ず映画館に行きます。
 
主演の鶴瓶さんの弱々しさの演技は、
『スジナシ』なんかで垣間見られたものですが、
この映画の言いたいことに、ほんとに合っていました。
脇役陣も、それぞれの持ち味がにじみ出ていたなぁ。
そして、なによりも、
原作と脚本から組み立てていった西川美和監督が、
これだけていねいに過不足なく、
しかもギスギスしないで描いた世界は、
せつなくておもしろくて、最高のあいまいさでした。
 
地味そうな映画に見えるし、実際に地味ですが、
「観てよかった」と思わせる力は、すごいものです。
青筋立てたり、大声で叫んだりする場面はひとつもない。
だけど、内臓がぴくぴく動くような映画です。

ちゃんと仕事をするって、いいよなぁ。
と、そんなことを思わせてくれました。
この映画、もう少し、しつこく追いかけてみます。

(2009年7月10日「今日のダーリン」より)

とじる