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 宮本茂が語る。
〜今思うこと、5年後のこと〜
 第2回 宮本茂が語る、子供たちへ。


「僕は話の守備範囲が狭くてね、糸井さんみたいには
 話せないから」と照れつつ、語り続ける宮本さん。

第2回目は、ご自分のお子さんの話を混ぜながら、
今の時代の子供たちに問いかけてみることなど。
「子供に与える側の役割」をあらためて自問する
このところ、なのだそうです。
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こないだの幕張メッセは盛況で、よかったと思ってます。
今年は一般のお客さんを意識して完全な「ショウ」として
やりましたから、反応が気になってたんですけど。
例年、あそこに集まってくるのは、
ユーザーのなかでも一部の濃いひとたち、
いわゆる「通」というひとたちでね、
いろいろと注意して、気をつけて見よう、
ここに出てることがすべてやないぞ、っていう目で
見てるようなひとが来てたものなんだけど、
今回は、一般的なマーケット層の一部が来てくれていると
思ってみていました。
あの会場でゲームについてのアンケートをとったら、
ぼくらが求めているような、偏りのない答えが
出てくるんとちがうかな、 という感じは持ちましたね。
 
実際に会場を回ってみて、あらためて感じたんですが、
親と子供が両方とも、ゲームがちゃんと出来るんですよ。
一緒にゲームをやっている親子がとっても多かったの。
あぁ、そうなんだ、「任天堂を卒業する」っていうけど、
途中に離れる期間があるだけで、
上と下はちゃんとついてくれてるのか、と。
そのことをぼくらはもっと大事にせなあかんな、って
思いましたね。

でもね、なかには
幼稚園か一年生くらいの女の子の手を持って、
『パーフェクトダーク』をやらせてるお母さんがいたけど、
あれはやめといたほうがいいかなと思った(笑)。
お母さんが子供と一緒にコントローラ持って、
バンバンひとを撃ち殺してるの。
この姿をみると、やっぱり考えてしまうなぁ。

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今日も久しぶりに、あるお母さんから手紙が来ててね。
子供がぼくにあこがれてて、
将来は任天堂でゲームをつくりたいって、
中学校3年生ですって。
で、ゲームばっかりして他のことしなくって、
ゲームばっかりしてることを叱るとね、
「ゲームのなかのほうが、
 人間的に深いさまざまな要素がたくさんあるんで、
 他から得るものよりもゲームから得るもののほうが多い」

と言って、親の言うことを聞かないと。
「なんかひとこと言ってください」って。
返事を出すべきなのかどうか、迷ってんねんけどもね。
明らかに、まちごうてますよね(笑)、ちょっと。
ただ、真剣にそう思ってる子供に対して、
親は言い返せないんだよね、今って。
そういう話を聞くとね、いろいろ思うことはありますよ。
それがぼくのゲームじゃなかったらええのになぁ、とも
思うわけですよ。せめて、ね。
 
最近、「ぼくのゲーム」って言っても、
「ぼくの」はどこまでのことを言うのかわからへんし、
多いですからね、任天堂のタイトルもね。
少なくとも、自分で作ってるものに関しては、
やってムダな、時間を浪費させたなっていうものは、
作らないようにしてるんですけどね。
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まぁ、例えばレースゲームなんかで、
1/100秒を縮めるためにずっとやり続けてる、
とかっていったら、ほどほどのとこでやめたほうが
いいと思いますよね。
けど、そういうもののほうが息長く流行ってるし、
支持もされてるからね。
そやから、そういうものばかりにならないように
ぼくらは対戦ゲームを作るんですよ。
4人くらいで対戦しながらワイワイって遊んでると、
その間はずっとコミュニケーションなんで、
長いあいだやっててもいいんちゃう?と思うし。
最近は表で遊べるとこも少なくなったから、ってね。
力の強い子の順に勝つというわけでもないし。
 
うちの子供らは、けっこう、友だちが何人か来てね、
みんなで対戦ゲームしてることが多いんですよ。
表で遊んだほうがいいよ、って言う事もあんねんけども、
まぁ、みんなでわいわい言って遊んでるあいだは、
そんなに悲しい感じはせえへんから(笑)。
けど、ひとりでコツコツとRPGなんかを、
しかもなんかのパラメータをあげるために
延々と同じとこをやってるってのは、
それ、時間もったいないと思わへんか、って
思いますよ(笑)。
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それと最近もうひとつ気になるんだけど、
「ゲームのお話が面白い」って言うんですよね、みんな。
でも、ふつうの小説はあまり読まへんかったりするでしょ。
ま、ぼく自身もあんまり本を読まへんので、
たいしたことは言えへんねんけども(笑)、そんなぼくでも
そういう話を聞くと、つい「小説を読んだら?」って、
ひょっとしたら小説のほうが面白いんじゃない?って、
言いたくなるとこもあって。

で、うちの子はわりと本を読むんで、いつも聞くの。
「お話は面白い?本とどっちが面白い?」って。
子供も、はっきりと比較はしてないけども
特別にゲームのほうがお話が面白いとは言わへんからね、
そこは分けて考えてるんだと思いますよ。
やっぱり、「次に進む」感じが面白いわけですから、
ゲームっていうのはね。

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だから、こないだの幕張のショウでも、
いい機会だからゼルダのアンケートを取ろうって言って、
ゼルダのところに来たひと全員に聞いてみたんです。
「どこまで進みましたか?」とか、いくつかの質問をね。
でもね、ゼルダのコーナーには、
やっぱりゼルダの好きなひとが来てるから、
ほとんど全員が「最後まで行きました」って言って、
市場調査にはならへんかったんやけど(笑)。
 
全体でいうと『炎のダンジョン』『炎の神殿』とか、
『闇の神殿』あたりで止まってるひとが、
買って遊んだひとの3割以上はいると思うんですよね。
ひょっとしたら、5割くらい、いるかもわからへん。
 
ぼくは、最後まで行った人が味わう手応えや達成感が
今よりも落ちる、というリスクは負うにせよ、
買ったひとのうちの8割から9割が
最後まで行けるようなものを、作りたいんですね。

難易度の問題だったり、ゲームにかかる時間の問題で
最後まで行けへんのやったら、
何もその、今のボリュームを守る必要も、
今の難易度を守る必要もない、と思ってるところはある。
 
もっともね、むずかしいものをがんばってクリアして、
最後まで遊んでくれたひとに対しては、
安易にそう言ってしまうのは失礼なんで、
じゃ、もっと面白くする方法はないかということを
ずっと考えてるとこなんですけれどもね。

 

 

上の子供はいま中2なんだけど、中学校に入ってから、
ゲームをひんぱんにするようになったのね。
昔は、ぼくのスーパーファミコンを貸していたので、
管理もうるさくしてたんだけど、
最近は、自分で64もプレステも持っていて、
わりと自由に遊んでる。
いろんなゲームをやってるところを見てると、
確かにね、親御さんの言われる、その、
「ゲームを遊んでる時間が不毛に見える」っていう感じは
わかるんですよね、身をもって。

で、ちょっとね、ほんとに考えるようになってきましたね。
 
それこそ、ゲームすることそのものがブームで、
猿のようにやっている時間ってのは
確かに面白かったけれども、
周りで見てる者にとっては早い段階で、
それは不毛な時間に見えてしまうし、 やってる本人も
「おれってそんなにバカじゃないよなぁ」って、
うすうすは気がつき始めてるわけでね。

そういうものを、さらにどんどんエスカレートさせて、
ちっちゃい子向けに絞って作り続けて、っていうのは、
あまりいい仕事ではないなぁ、ってちょっと思いますよね。
こんなこと糸井さんに言うたら、怒られるかなぁ。
もちろん、作ってるものによるんですけどね。
だから、なんて言うかなぁ、
作る物に対して、作る側が
「その商品のもってる役割」みたいなことを
ある程度はきちんと考えないと。
それも、今だけのことじゃなくて、5年後を考えて。
そこをきちっと考えて作ることで、ゲームが、
今の流行りすたりでなくて、
スタンダードになっていくということと違うかなあ、と
思うんですよ。

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「電子ゲーム」ということだけで嬉しかった時代は
確実に終わったし、周辺には、電子で動くものが、
もう溢れてるわけなんで。
それがこんなに安く買えるという魅力で売っていた
おもちゃの時代
も、もう終わって、
今はおもちゃがいちばん安くて高性能になってるので、
「おもちゃ」やなくて「本物」になってきてるのでね。
初めてゲームをする子らにとっては、
例えばインベーダーゲームというものは、
ぼくらがむかし、あんなに熱中したんやから、
今の彼らにも面白いはずやと信じてきたんですけれども、
ちょっとでもゲームをかじってる子たちに
今、インベーダーゲームをやらせても、
面白いとは言ってもらえない時代になってきたし。
ゲームというのは、普遍的なものとちごて、
技術的に過渡期といえる時期に現れてきた商品
なんで、
そのうえで、それに慣れて上手になっている
ユーザーだけを相手にしていくんやなくて、
新しくて面白いものでありながらも、
それが単なる刺激的なものではなく
ね、
ぼくらは、刺激的であることや、
再挑戦度が高いことなんかでゲームを売ってきたわけやし、
それをゲーム性と呼んできたんやけれども、
そこを乗り越えて、なんかひとつ、
新しいスタンダードになれるものを作っていかないと
5年後くらいには、さらにとんがった、ごくわずかな
ユーザーだけが残っていた、ってことになるんちゃうかな、
と、あらためて実感したんです。
うちの子供がゲームしてるのを見ててね。
 
もっとも大人だってね、大人のほうが、実はわがままで、
ギャンブルなんかにはまったらぜんぜんやめへんし、
好きなゲームが出たら徹夜でやってしまうし、
不毛をいっぱいやってるわけで、
それを必ずしも悪いことだとは言わないけど、
確かにそれで、時間を失っているんですよね。
もっと他のことも出来るのに、という時間をね。
それはもったいないなぁって思いますよ。
そんなこと考えたら、あかんのかなぁ。
ぼくなんか、野放しで育ってきても、
ちゃんと育ってんのやから(笑)。



宮本茂インタビュー第2回、いかがでしたか?
父親であり、ゲームの作り手である、宮本さんの素顔が
少し覗けたような気がしますね。
次回はひきつづき「プロデューサーという仕事」に
ついて語っていただきますので、お楽しみに。
そうそう、ドルフィン、でしたよね。もうちょっと、ね。


1999-10-22-FRI

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