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樹

ゲームはまだまだ新しくなる! 新世代の主役たち

「まだ誰もやっていないことが、やりたかったんです」
「今まで特別に影響を受けたゲームは、ないですね」

静かな、でも力強い彼の言葉に、
「ほぼ日」はこれからのゲームの可能性を見ました。
新しい考えを持ったクリエーターたちがつくった
新しいゲームを、今回はご紹介したいと思います。

「ピカチュウげんきでちゅう」をつくった
アンブレラの小澤宗明さんへのインタビューも、
回を重ねて第4回目。今回は、子供たちと
ピカチュウとの触れあいについて話していただきます。
開発のときに協力してくれた子供たちからも、
たくさん気づかせてもらうことがあったそうです。

(第3回の4)
「とにかく、あちこちで声をかけてみてください」


ゲームをつくるときにイメージしていたのは
小学校低学年くらいの子供たちでした。
でも実際は思っていたよりも、もっと小さい子も多かった。
幼稚園に入るか入んないかくらいの子供がね、
大人が聞いても、何しゃべっているのかわかんないような
ちいさい子供さんも、たくさん遊んでいるようです。

ピカチュウかわいい!って思える子供だったら、
十分遊べるんですよね。
自分でなんか声をかけて、
それに対して思ったとおりの反応ではないにしても
何かつながっているんだな、と思えさえすれば、
コミュニケーションは成立するんだよなぁと思いましたね。

自分たち自身が面白いものを目指したんだけれど、
もちろん子供は遊ぶだろうって思ったから
子供向けの配慮もしたし、
これが初めて遊ぶゲームになる子供たちも
いっぱいいるだろうから、
簡単な操作から序々に
難しい操作が増えていくようにしたり。
そういう工夫やアレンジは、してあります。
でも、ベースとなったのは、
自分たちがコンピューターのなかにいた生き物と
コミュニケーションできて、わぁ、おもしろい、
っていう感覚。
きみたちも遊んでみて、っていう感じですね。
子供向けだからこういうゲームでいい、じゃなくてね。


音声認識の初期の技術的な実験で
子供たちに協力してもらったことがあって。
何人かに遊んでもらっているうちに
自分では忘れていた感覚を思い出したりして
それがよい刺激になったので、それからは
ゲームがちょっと出来るたびに子供を呼んで
どういうふうに遊んでるかなぁ、
って見るようにしました。
自分たちが隠しておいたような遊び方まで、
ちゃんと見つけてくれるのが嬉しかったです。

たまたま、「花に水をやると少しずつ大きく育つ」
という遊びを作っていたときのことです。
そのときは花が水をかけられるたびに際限なくどこまでも
大きくなるという仕様に、暫定的にしていたんです。
とにかく、育つってことがどれくらい面白いかを
試してみたくて、
育った結果どうなるという部分までは
つくっていなかったのですが、
それが、子供たちに遊んでもらってて、
しばらくしてみてみたら、
すんごい巨大なものをつくって、喜んでたんですね。
ずぅっと水をかけ続けてたんですよ。
水をやり続けるといいよ、って教えたわけじゃないのに
これってどこまで大きくなるのかなあ、って
みんなで話しはじめてて。

小学校の3年、4年生くらいかなぁ。
友達どうし何人かで来てくれてたんだけど、
こうしてみようよとか、回してみたら?とか。
ちゃんと相談しながら、遊んでくれてた。
そうすると、いろんなとこに気づいてくんですよね。
面白かったですね。

作る側としては、そんなことやったって、
こんなの誰もわかりゃしねえよ、とか言いながら(笑)、
そんなの無駄だよとかいう声もありながら、
でも気づいてくれたら嬉しいじゃん、っていって
あちこちにいろんなもん隠したりしていたので
面白いと思ってあちこち遊んでくれていると、
そのうち見つかるものとか、ありますから。

ある子供に聞いたんだけど、
その子は一日に500回ぐらい声かけてるんですって。
今日はたくさん声をかけたから1000増えたとか、
気軽にすさまじい数字を言ってる(笑)。
知り合いの子供なんですけどね。
今日は70匹釣りましたとかって(笑)。
遊び続けられるんですよね、彼らって。
「もっと仲良くなりまちゅう」とか、言ってます(笑)。

ここで「ほぼ日」のために秘密の隠しネタを公開、ですか?
意識してゲームに隠しネタを入れたってのはないんです。
いつのまにかプログラマーが組み込んじゃったとか(笑)、
デザイナーが仕掛けちゃったとか(笑)、
そういうのはいっぱいあるけど。
そこをつくったひとじゃないとわかんないのが
いっぱいあるんですけど、
う〜ん、何がいいかなぁ。

「声をかけると回る」ものが
あちこちにありますけど、それなんかどうですか?
家の中だと、回るものは4つくらいあるのかな。
外に出たらもっといっぱいあります。
声をかけると、なぜか声の音波に反応するっていうのか、
風に反応するっていうのか、なんかよくわかんないけど、
いろんなものがくるくる回るんですよ。
ゲームと関係のない世界で。
一時あんまり回しすぎて、「バグです」とかって
言われちゃって。「木の枝が回ります」って(笑)。
「いや、それは回してるんです」ってお答えしたんですが。

回したのは山中君、デザイナー、ですね。
プログラムとして、もともと
「声をかけると回る」っていうものを
仕掛けとして用意してたんです。
例えば、花びらがくるっと回るように、とか。
デザインするとき、ある特定の名前をつけておくと、
プログラムでその名前をチェックして、
そこをくるくる回すっていうふうにしておいたら、
いつのまにか、あっちこっちに意味もなく
その名前が埋め込まれてた(笑)。

時計の針が回ったときには、さすがにみんなで
「あぁ、回ってる回ってる」って(笑)。
あれ、もちろんふだんは停止しているんです。
「ピカチュウおはよう」って声をかけると
なぜかうしろの時計の針がクルクルクル〜。
「おやすみなさい」っていうとクルクルクル〜(笑)。

ずいぶん減らしたつもりだけど、どうだろう?
気づかずにまだ回ってるのも、
いっぱいあるんじゃないのかな。
声をかけないとわかんないけど、実は回るってもんが。

 

(内山さん)
あと、部屋に、ベッドがあって、ラジカセがあって、
窓があるんですけど、その窓の外の景色をみながら
「ピカチュウ」とかって呼ぶと、ハエが飛ぶ(笑)

これ、めちゃめちゃ小ネタですよ。
あんまりにもくだらないんで、
雑誌にも出せねえよ、って言ってたやつですけど、
いいんですか(笑)こんなんで?

ピカチュウが朝起きるでしょ。
部屋のなかにいるときに、ベッドがあって、
その横にラジカセがあって、で、本棚があるんですけど、
そのラジカセの向こう側がちょうど窓になっていて、
きれいな山並みが見えるんです。
窓の外でもみながら一声かけると、
ブ〜〜〜〜ンって、ハエが飛びます(笑)。
これは、すっごい小ネタだよね(笑)。

うちの橋本(※「ブーメラン世界大会への道」にも
登場する「てつ」こと、マリーガルの橋本さん)が、
いとこの家の地元では
「ピカチュウのうまいおじちゃん」って呼ばれていて、
甥っ子とかにやって見せてるらしいんですよ。
おっちゃん、うまく釣れへんねん、って言われると、
おっちゃんの前でやってみ、っていって
やらせるんですって。
で、甥っ子が
「ピカチュウ! ひっぱれ〜! ひっぱれ〜! がんばれ〜!
 がんばれ〜! ひっぱれ〜!」って叫んでるのを、
おっちゃんに貸してみ、っていって
「・・・(低い声で)ひっぱれ」「・・・ひっぱれ」って。
そしたら釣れるんですよ。
それを見た甥っ子が、それから釣りのときには
おっちゃんの声をまねて、わざとひっくいおっさんの声で
「・・・ひっぱれ」「・・・ひっぱれ」って。

ようするにあれってタイミングの問題で、
ピカチュウ自身はフルパワーで釣り上げようとしてて、
ガーッとやってるときに、ピカチュウピカチュウ! って
いくら言ったって、聞きゃしないですよ(笑)。
わかっとるっちゅーに、っていう状態なんで。
「今だよ」って感じで冷静に、「ひっぱれ」って
普通に言ってあげたほうがいいんですよ。
ふつうの釣りだったら、タモ網を出せる状態のときに、
タモ網がわりに「ひっぱれ」っていうことなんですよ。

 

(再び小澤さん)
釣りのときに、ピカチュウにお弁当あげるっていうのも、
わりと知られてないネタですよね。
ピカチュウが釣ってるときに「はい、お弁当」っていうと、
ちょこちょこちょこってやってきて、受け取ります。

あ、ルビーですか?
ルビーとかあのへんは、ただのルビーなんですよ(笑)。
そのルビーをどこかに持っていくと
「なんとかのルビー」に進化する、とか、
なんとかの剣にはめるとか(笑)、
そういういわゆる「アイテム」ではありません。
ルビーが手に入ったってこと自体が嬉しい、ということ。

こうして作っていくと、
「手触り」っていうことも、考えますよ
そこまではまだ表現できていないのが、
今のコンピューターの悔しい部分でもあるんですけど。

せっかくそこにいるのに、声も通じるようになったのに、
でも、撫でられない。
なんとか撫でてみたいって思って
いろいろ考えてみたりもしたんだけど、
かえって、他の部分が自然に出来ているだけに、
撫でるときだけ、画面に指先のへんなのが動いてるっていう
ギャップがかえって悲しかったりしてね。
それはやっぱり、架空すぎる。疑似体験なんですね。
こんな感じかなと思って満足してるだけのような気もして。

でも、子どもってやっぱり、
さわれるもんだったら
さわりたいんじゃないかなぁ。
だから、画面にも張りついちゃうんだし。
なんか出来たらいいなぁって、
思いますけれども。
声をかけて通じ合えたら、
次は触った感じも欲しいし、
その次は匂いもしなきゃ、とかね(笑)、
やっぱり、そういう方向を
考えるのは自然だと思う。
それがいい方向かどうかは
わからないですけれども。

仲良くなること、
コミュニケーションをとるということを
テーマとしてみると、
そういうゲームは増えていくと
思いますし、増えていってほしいですね。

声をつかうことは、
やってみて面白かったなあ、って
みんな思ってくれると思う。
単純にコミュニケーションのツールとして、
コミュニケーションをとる手段として
今回これを使ったけれども、そうではなくて、
ほんとに入力装置のひとつとしても
ずいぶんと楽しいし、便利なものだから。

しかも、コントローラーで両手を使いながら、
声で違う入力が自然にできるっていうことは、
入力のバリエーションが簡単に増やせるということで、
既存のゲームにそのままプラスアルファとして
声でこんなことも出来ますよ、って使い方もできるので、
どんどん便利に使われていくと思いますね
自分たちが声を使ったものをたくさん作りたいって
いうよりは、他のゲームをつくっているひとたちに
じゃあどんなふうに使ってみますか?っていうのを
見てみたいですね。

実際に自分でゲームを遊んでいると、
何階層にも及ぶメニューとかで
どこに何があるのかわかんなくなることって
多いじゃないですか。
何をしたいのかははっきりしているのに。
自分が使うのはコレとコレとコレ、ってときに、
声でパッと言えれば、ゲームがもっと
シンプルになると思うしね。

小澤さん

 


というところで(第3回の4)
「とにかく、あちこちで声をかけてみてください」
は終わりです。
「ピカチュウげんきでちゅう」を持っているひとは
さっそく自分でもハエを飛ばしてみてくださいね。
次回は小澤さんインタビューの最終回をお届けします。


1999-2-25-THU


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