Sponsored by Nintendo.
ロゴ
04

(第25回の4)
ファイアーエムブレム〜封印の剣〜
そのゲームを誰が作ったか?
任天堂・西村建太郎&インテリジェントシステムズ・成広通 インタビュー その2

“ファイアーエムブレムのファンタジーは、王道です”    

 
イメージ 「ファイアーエムブレム〜封印の剣〜」の開発者である
二人の重要人物、任天堂の西村建太郎さんと
インテリジェントシステムズの成広通さんにお話を聞く
第二回目です。
 
 
イメージ ■西村建太郎【にしむら・けんたろう】
任天堂株式会社開発第一部所属。
ファイアーエムブレムシリーズの監修を行う。
穏やかながら、言うことはキビシイ、
頼れる人物である。
   
イメージ ■成広通 【なりひろ・とおる】
インテリジェントシステムズの開発部課長。
ファイアーエムブレムは
第一作からずっとかかわっている。
西村氏に負けず劣らず穏やかだが、
眼光はキラリと深くを見つめている。
   
イメージ ■武久豊【たけひさ・ゆたか】
任天堂株式会社広報室企画部所属。
ファイアーエムブレムの
宣伝全般を担当している。
   
ロゴ 成広:
「ファイアーエムブレム」のシリーズには、
“紋章”だとか“聖戦”だとか
それぞれのソフトにたいして
熱いファンがついてくれていると思うんです。
だから、それぞれに対して続編を出すのが正しいのかも、
と思うほどなんですよ(笑)。
そこまでできたらすごいと思うんですけど、
今回の「封印の剣」は
また、気持ちを新たにして作りました。

 
武久:
エムブレムは今回で六作目になるんですが
ゲームのシリーズは、
開発過程でシステムが変わることはよくあるし、
絵も違うということも、ありえるんです。

 
──:
むずかしいところですね。
漫画だと、続刊で画風ががらっと変わるというのは
あまりないことだと思うのですが、ゲームではあるんですね。
そういう意味では、二作目でキャストがかわることがある
ハリウッド映画に近いのかもしれないですね。
宮本茂さんの「ゼルダ」の次作も
画風ががらりと変わるんですよね。
 
イメージ 武久:
賛否両論になるんです、そういうものって。
新しいものは、完全に受け入れてくれる人もいれば
受け入れてくれない人も、おなじくらいいますから。

 
──:
ものをつくる、ということは、
そういうことなのでしょうね。
今回の「ユニット」たちがもっている世界観は
成広さんがメインで考えるんですか?
 
成広:
シナリオライターが担当しています。
あともうひとり、アートディレクションというか
世界観のディレクションをやっている人間もいます。
僕はシステム寄りというか、
もともとプログラマ出身なものですから。
そういう意味で「ディレクター兼雑用係」と
自分では言っているのですけれど(笑)。

 
イメージ 西村:
それは僕らも同じですよ(笑)。

 
──:
こういうソフトを作るかたの
バックボーンが気になって仕方ないんです。
いったい何を読んだり、何を聞いたりしてきたのだろうって。
何が好きでいると、こういうものが作れるんだろう?
 
成広:
基本的には、たぶん、ふつうのミーハーな人だと思いますよ。
今流行しているものだとか、
ドラマが影響しているかもしれないし
そのときに遊んでいたゲームが影響しているかもしれないし
いろんなもの……見たアニメだとか映画だとかがあったり。
でも、基本的にはファンタジーが好きだというのがあります。
いま「ロード・オブ・ザ・リングス」……
小説では『指輪物語』というタイトルのほうが
親しみがあるかもしれないですが、
映画で公開されていますよね。
指輪物語から発生した
日本のヒロイック・ファンタジーだとか
和製ファンタジーの世界で遊んでいる人間たちというのは、
こういうゲームを作るのに、強いでしょうね。

 
イメージ 武久:
「ファイアーエムブレム」のファンタジーって、
王道ですよね。
ヒーローとヒロインがいて、悪者をやっつける。
勧善懲悪、王道ファンタジーです。

 
成広:
じつはそこを「わかりやすく」考えたんです。

 
武久:
僕は「ファイアーエムブレム」をやっていて
このゲームすごい、といつも思うことがひとつあるんです。
それは、顔を見た瞬間に
「こいつは敵や!」ってわかることなんです(笑)。
こいつは倒すべきや、って。
たとえ味方っぽく出てきたとしても、
顔を見た瞬間に、敵かどうかわかるし、
最初は敵として出てきても、
こいつはすぐに味方になるぞ、ってわかるんです。

 
──:
それはゲームをやりこんでいるからわかるんですか?
 
武久:
やりこまなくても、わかりますよ。

 
西村:
だいたいわかるようにつくっているんですよ。

 
武久:
ホンマの敵は、ちゃんと悪人面してるんですよ。

 
成広:
水戸黄門じゃないですけど、
わかりやすくつくっているんですよ(笑)。

 
イメージ ──:
音楽家なども、テクニックばかりに走ると、
自分たちだけが気持ちいいという世界に行きがちなのと
同じように、ゲームをつくる人たちにも
そうなってしまうことがあるのではないかと
考えてしまいますが、そこは、さすがに
ストップがかかるんでしょうね。
 
成広:
ファイアーエムブレムは、
「お話」を、「ゲーム」に合わせるんです。
ゲームが先にあるんですよ。

 
武久:
別の言葉で言うと、「システムありき」なんです。

 
成広:
難易度設定とか、
ここに強い敵がいるな、とか、
そういうのが先にあって、
そこに話のピークを持っていこう、という作り方ですね。
シナリオがあとから追いかけるんです。
「ちゃんとゲームとして遊べないと面白くないね」
と考えて、ゲームを優先させているんです。

 
イメージ ──:
それは「ファイアーエムブレム」に関してだけですか?
それとも成広さんが作られるゲームはすべてそうですか?
 
成広:
とくにエムブレムに関してはそうなっていますが、
お話がついているゲームは、たぶん、そうです。
エムブレムは歴代ぜんぶそうです。
難易度は、すごく難しいものから、
比較的簡単なものまで、シリーズによって
違うのですけれど。

 
──:
制作時間はどれくらいかけているんでしょうか。
 
成広:
構想は長めですけれど、
作業は12ヶ月くらいです。

 
──:
このボリュームのゲームにしたら、短い?
 
武久:
過去に比べれば、ずっと短くなりましたよ。

 
西村:
前作、前々作に比べると、短いですね。

 
──:
大ドンデン返し的な、ダメ出し、
作り直しはありましたか?
 
成広:
今回は……1回だけかな(笑)?

 
武久:
前作までは、
そういうこともあったようですが……

 
成広:
前は、完成品3本分くらいつくってましたね(笑)。
表に出ていないシステムとかもありますし
『聖戦』の最初のプロトタイプは
全然ちがっていたとか、いろいろあって、
違ったゲームになっていたようなものも
たくさん作ってきましたよ。
ロゴ  
──:
労力はかかっても、財産になりそうな過程ですね。
 
成広:
今回は、たとえばエムブレムのなかに会話がありますよね。
その表示のしかた、フキダシのぐあいですうが、
プロトタイプの段階では、いままでのように
上と下に顔があって、フキダシも2つでてくるように
していたんです。
文字の見せる量だとかで、
どのパターンがいちばんいいだろうかと考えて、
どんどんよくしていきました。
そんなふうにして、会話システムじたいも
何度か作り直しました。

──:
GBAにするにあたってたいへんだったことは?

GBAは、スーパーファミコンに比べて
微妙に画面が小さいんですね。
左右が16ドット、天地が30ドットかな、
一回り小さくなっちゃうんです。
そのために、前のシステムが使えなかったり、
前の大きさで顔を書いていると小さすぎるとか
そういうことがあって、ここに落ち着くまでも
けっこう時間がかかったりしていました。
 
イメージ









イメージ
──:
西村さんの意見は?
 
西村:
ここはこうせい、ああせい、言うのが仕事ですから(笑)
数を挙げればきりがないんですが、
たとえば……いちばん大きいところで言ったら、
「背景をつけろ」ですかね。

 
武久:
戦闘のね。

 
西村:
戦闘の背景ですね。

 
武久:
最初は背景がなくて、マップ画面が広がっていたんです。
前作はちゃんと背景がついていたんですよ。
それを修正したのは制作過程も終盤じゃなかったですか?

 
西村:
最後の最後まで……容量的にちょっと、
入る・入らないというのがあったので
無理を言って「どうしても入れてくれ」と
何度も何度も話して、やっと入れてもらったという(笑)。

 
武久:
あれ、ほんとうに終盤だったので、
途中まで背景ナシで攻略本を作っていて、
突如差し替えたりして。
けっこうドタンバでしたね。

 

 
 
 
 
 
 
 
 
イメージ

成広:
エムブレムシリーズというのは、
慣れてくるとバトルシーンをオフにして
プレイできるんですよ。
簡易バトル、といって、
戦闘シーンが出てこないモードがある。
マップ上で、ユニット上でやりあって、
数字が減る、というような。
結局、ふつうにプレイしているときに
単純にゲームをクリアするという意味では
数字だけでもいいんです。
勝ったか負けたか、でOK。
わざわざアニメーションを見る必要はない、
というところまで、一回、行き着いていたんです。
好きな人は、とうぜん、見てくれていたんですが。
たしかに切りたい気持ちもわからなくもない。
そういうことは、アニメーションの長さにも影響します。
長すぎるかな、何度も同じもの見るのつらいかな、とか。
そこに対する答えの一つに、
今回のバトルシステムは、ほんとうに、なるべく
切られないくらいテンポよく、
見ていて楽しい、情報的な価値も高いというようなことが
できたらいいなというのがありました。
最初の段階で、そういう要素の延長線上として、
「マップの上で戦ったらいいじゃないか」
というのがあったんです。
背景が切り替わって、またマップに戻ると、
どこで戦っていたのかわかりにくいんじゃないかな、
と思っていたんですよ。

そういうことを、細かく、西村さんとぼくらで
やりとりをして、
「やっぱりこうしようか」「いや、このほうがいいよ」
と、決めていったんです。


イメージ
 
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 
次回はふたたび倉恒さんによるCM制作の話を
お届けします。
西村さん、成広さんのお話は、またその次に。
どうぞお楽しみに!
 
  2002-04-05
 
back