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(第25回の2
ファイアーエムブレム〜封印の剣〜
そのゲームを誰が作ったか?
任天堂・西村建太郎&インテリジェントシステムズ・成広通 インタビュー その1

“GBAでシミュレーションゲームを作る”

 
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前回は、新旧のファイアーエムブレムのCMを紹介しながら
そのCMをつくった仕掛け人・
倉恒良彰さんのお話をお聞きしました。
その続きのお話も紹介したいのですけれど、
今回のファイアーエムブレムの取材では
広報担当の武久さんにワガママを言い、
開発者である二人の重要人物、
任天堂の西村建太郎さんと
インテリジェントシステムズの成広通さんにも
会わせていただき、お話を聞いてきたのです。
というわけで、ちょっとイレギュラーになりますが
倉恒さんのインタビューと、
西村さん・成広さんインタビューを
交互にお届けすることにしました。
今回は、西村さん・成広さんの第一回目です。
 

 


イメージ ■西村建太郎【にしむら・けんたろう】
任天堂株式会社開発第一部所属。
ファイアーエムブレムシリーズの監修を行う。
穏やかながら、言うことはキビシイ、
頼れる人物である。
   
イメージ ■成広通 【なりひろ・とおる】
インテリジェントシステムズの開発部課長。
ファイアーエムブレムは
第一作からずっとかかわっている。
西村氏に負けず劣らず穏やかだが、
眼光はキラリと深くを見つめている。
   
イメージ ■武久豊【たけひさ・ゆたか】
任天堂株式会社広報室企画部所属。
ファイアーエムブレムの
宣伝全般を担当している。
   
ロゴ ──ファイアーエムブレムって、なんですか?
という直球の質問をしてみたいんですけれども。
まずは……お二人はどんな仕事をなさる方なんでしょうか。
 
西村:
任天堂の担当として、
ファイアーエムブレムの監修業務をしました。
途中、どういう方向でゲームをまとめていくかとか
中身に関する「仕様」を見て、
チェックする役割です。
もっと面白い、遊びやすいゲームにするための
意見をまとめて、成広さんに伝えて、
理想形まで持っていく役ですね。

 
成広:
僕はゲームのディレクターなんですけれど、
「雑用係」と言ってもいいのではないかと(笑)。
ゲームはひとりでできるものじゃないですから、
スタッフが集まって、どんなゲームにしよう、
絵はどうしよう、ストーリーは、ということに関して
熱い思いをぶつけてくるわけです。
それを「このあたりにまとめよう」という役ですね。

 
──GBAで出す、ということの背景を聞かせてください。
 
成広:
一番最初にファイアーエムブレムが出たのは
ファミコンでした。
いまに比べると性能や、絵のクオリティ、
表現力がすごく低かったころです。
シミュレーションというジャンルが
家庭用ゲームでどうできるんだろうというのは
任天堂では「ファミコンウォーズ」で始まったんですが、
もともとのイメージとして、ある意味、地味というか、
“とっつきにくい”とか
“堅苦しい”と思う人もいたんです。
世の中にはRPG(ロールプレイングゲーム)
というものがあって、物語をいっぱい聞かせて、
華々しくやっている。そういうものが出てきた頃です。
いちばん最初の「ファイアーエムブレム」は、
ハードでできることの限界を見ながらも、
シミュレーションゲームの地味なところに
RPG的な要素を入れる……たとえば
“ユニットを育てる”とか“お話が聞ける”とか
いう部分を入れていこうということになったゲームでした。
いままではひとつの“ユニット”と言って……

 
──“ユニット”とは?
 
成広:
ひとつひとつの“コマ”ですね。
シミュレーションゲームというのは
将棋みたいなところがあるんです。
王様なら王様のコマがあって、それを動かす。
そういうふうなゲームを、もうすこしわかりやすくして、
王将でも、ただの王将ではなくて、
名前がついているだとか……

 
──その王将がどんな人生を送ってきたかとか?
 

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成広:
そうです、そうすると
ユーザーのもっと思い入れも強くなりますよね。
ユニットのもっている性格、
たとえば王様なら、強い、といっても、
攻撃してもダメージを与えられないくらい強いとか、
素早く動いちゃうなどのいろんな要素を表現してるんですが
そこにストーリーを付け加えることで
もっとよくわかるようになる。
「大きいから強いだろう」とか
「女の子で小さいから弱いだろう」というようなことが
ただ数字だけじゃなくて、
もっと身近に感じられるようにということを
RPG的な表現で付け加えていったんです。

 
──その最初のファイアーエムブレムは
12年前に発表されています。
今回のGBAで6作目になるわけですけれど、
初めてGBAにするにあたって、
大きな変化はありましたか?
携帯機であることで、何か変わりましたか。
 
成広:
あるといえばあるし、でも、ずっと考えてきたことでも
ありましたからね。
これまでにもゲームボーイなどの
携帯ゲーム機でも、
発売して欲しいという要望は、ずっとあったんですね。
しかし、ストレスなく遊ぶためには
ある程度の画面の表示能力だとか
扱えるデータ量の最低限の大きさというのが
必要になってくるんです。
これまでの携帯機の性能はそれに見合わなかったので、
つくってこなかったんですけれど、GBAに関しては、
スーパーファミコンと同等以上のスペックを持っているし
テレビの前で構えてやるのではなく
携帯機にすることによって、いつでもどこでも遊べる。
そういうメリット、ユーザーの要望、プラス、
スタッフの要望が(笑)あったんですね。

 
──自分たちも遊びたいぞ、って?(笑)
 
成広:
そうなんです(笑)。

 
西村:
ファイアーエムブレムは、
もともと、GBAのソフトをつくろう、と、
かなり早い時期から計画されていたんですよ。
もちろんそれは「情熱」だけではなくて、
開発期間、費用などの「その他の要因」についても考えて。
GBAというのは、いろいろな意味で、
非常にソフトがつくりやすいハードだったんです。
内容的には、最初の作品からずっとやっている
成広さんがディレクターをされるということで、
前作と比較して遜色のないものができると
自信がありましたし。

 

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──ユニットの個性が深くて、それをユーザー自身が
育ててきた、非常に“愛されてきた”ゲームですよね。
逆にいうと、作り手としては、
新しい姿を提示していくのはたいへんなことではないですか?
たとえばキャラクターの設定などは
(ユーザーが)思い描いているものと違う、
というような意見もあったとか。
そのくらい、ユーザーの熱意があるんですね。
 
成広:
それは強く感じますよ。ファンの盛り上がりというのは
とてもありがたいことだと思っています。
一作目からそうだったんですけれど
シミュレーション、というジャンルじたいが
よくわからないもの、とされているところがある。
「マリオ」シリーズとかだと、ちょっと始めてみて
Aボタン、Bボタンって、カラダで覚えていく感じがある。
でもシミュレーションって、
ユニットであるとか、コマつかんで動かす、みたいなこと、
それ自体が、敷居の高い印象があるんです。
カーソル、なんていうわけのわからないものが
出てきたりとか。

 
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──慣れていない人にはわかりにくい世界ですね。
でも、ファイアーエムブレムに関しては、
CMを見たり、体験してみると、
とっつきやすい世界だということがわかりますよ。
 
成広:
「ファイアーエムブレム」は、
ある一定のラインをこえるというか
ユニットを掴んで動かして
敵と戦ってやっつけて前に進む、
というところまでやってもらえたら、
そのあとは違った快感みたいなものが
生まれてくると思うんですね。

 
──ということは、GBAにするにあたり
初めてプレイする人に対する親切さ、
ということには重点を置いたんでしょうか。
 
成広:
なるべくそうしようとしました。
チュートリアルモードをもうけたり
実際に遊んでいただけるとわかるんですが
マニュアルがいらないように、
ゲームで説明できることは
実機上でわかるようにしようと工夫しましたよ。

 
──アクションゲームと同じように、
プレイしていればわかってくる?
 
成広:
そうですね。
困ったときはRボタンでヘルプを見てもらうと
アドバイスがもらえるようにしていますよ。
最初から全部マニュアルを読んで、
ということをしなくても
遊んでもらえるようになっています。

 
ロゴ 武久:
エムブレムのマニュアルは、
それでも、分厚いんですよ(笑)。
参照したい、という人のために丁寧につくりましたから。

 
西村:
64ページはありますよ。
製品パッケージが決まっていますから
マニュアルで入る厚さも決まっているんです。
それをめいっぱい使っているほどです。
もともと、シミュレーションゲームのマニュアルというのは
分厚いんですよ。
でも、あまり厚いと「こんなの僕はできないよ」と
遠慮しちゃう人も多いと思うんです。

 
──親切すぎると、敬遠される。
 
西村:
そこで、アドバンスウォーズ……これは海外で出た、
GBAのゲームボーイウォーズアドバンスのことなんですが、
丁寧なマニュアルもつくるけれど、
ゲーム本体でルールやしくみがわかるようにしよう、
としたんです。
逆に、その部分がわかってもらえれば
かなりの割合の人が面白いと思ってくださるはずなんです。
そこまでどうたどり着かせようか、
という試行錯誤を、ずいぶんしているんですよ。
だから僕の役割は「わかりやすくしよう」と
意見を言うことでもあったんです。

 

 
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──前作と、内容的に変わったことは?
 
成広:
もともと、シリーズとしては
微妙にマイナーチェンジをしています。
同じように見えても、実は違うんだよというところが
いろいろあるんです。
そのあたりを意識して遊ぶ必要はありませんし
でもわかる人は気づいてくれたら嬉しいですし。
ゲームの初心者は初心者なりに、
いままでプレイされてる方はされている方なりに
深く遊んでもらえるようにしているんですよ。
だから、「変わった点」を特別意識しないでも
大丈夫ですよ。

 
──主人公の印象が変わった、という意見には?
 
成広:
ゲームの初心者に対しては、
それは年齢や性別に関係なく、
間口を広くしようという意味があります。
それから「見た目」みたいなもので入ってこられる
ユーザーの方もいらっしゃいます。
とくに今作は小学校の高学年くらいの男の子達にも
遊んでもらいたいという気持ちが、
作り手である僕らの中にあったんです。
だから「元気のいい男の子」にシフトしたんです。

 
武久:
前作まではどこかしら
“少女マンガ”的な雰囲気がありました。
それはそれで良いのですが、
今作は、RPG好きな方にも
是非遊んでいただきたいということで
最初の段階でイラストで
発表したキャラクターがあったんですが
それは逆に元気が良すぎて(笑)
「あまりに、エムブレムらしくない」と。
やっぱりエムブレムらしさを損ないたくはなかったので、
それでちょっと戻した、という経緯もあるんですよ。

 
西村:
シリーズを通してプレイしてきた人の
“エムブレム感”が
とても熱くあるゲームなんです。

 
──ハードの性能が低かったぶん、
ユーザーが想像力をもって補ってきた世界観が
強く、あるのでしょうね。
 

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次回はふたたび倉恒さんによるCM制作の話を
お届けします。
西村さん、成広さんのお話は、またその次に。
どうぞお楽しみに!
 
  2002-03-22
 
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