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08 (第18回の8)
ゲームボーイアドバンス・デザイン座談会
その8 ニコラさんの発想の原点と、杉野さんの目標
 
イメージ だんだん発売日が迫ってきた
任天堂の新作ハードウエア
「ゲームボーイアドバンス」。
デザイン座談会の8回目は、
ニコラさんがどんなところに発想の原点を求めるのか、
また、杉野さんはこれから
どんなデザインをしていきたいのか、
というあたりを、お聞きします。
darlingの、ちょっと横道にそれたお話も、
お楽しみ下さいね。
 
■出席者
■グエナエル・ニコラ
フランス出身のデザイナー。デザインスタジオ「キュリオシティ」
http://www.curiosity.co.jp/ 代表取締役。
イッセイミヤケの「プリーツプリーズ」のアートディレクションや、
「au」のロゴなども、氏の作品。
ゲームボーイアドバンスは、本体デザインを担当した。

■宮元玲子
デザインスタジオ「キュリオシティ」プロデューサー。
■杉野憲一
任天堂株式会社開発技術部デザイン担当。
ゲームボーイアドバンスの本体デザインの基礎をつくった。

■古庄伸
任天堂株式会社広報室企画部。
■倉恒良彰
任天堂株式会社広報室企画部。
■糸井重里
ほぼ日刊イトイ新聞編集長。
 
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糸井:
ニコラさんは、自分のデザインのソースは、
どういうところに求めることが多いですか?
ファッションデザインが多い?

 
ニコラ:
そうでもない。一番多いのは、
アーキテクチャ。建築物。

 
糸井:
なるほど。

 
ニコラ:
全部建築です。
光で形がわかるでしょ?
プロダクトデザインからは、
あまり勉強できないです。
そのままでは、あまり、
おもしろくないと思います。
今のプロダクト・デザイナーって誰がいる?
……いるけど、勉強にはならない。

 
杉野:
プロダクトデザイナーで
建築の好きな人は多いですね。

 
糸井:
建築って小さい商品を
拡大して見るのと同じだよね。
だから、悪いところも全部見えてきますよね。

 
ニコラ:
うちの事務所はほとんど建築で、
プロダクトはちょっとだけなんです。

 
古庄:
どういうふうにイメージを膨らますんですか?

 
ニコラ:
例えば新しいプロジェクト作る時ね、
いろいろ建築の本見て、形より、
どういう雰囲気作りたいとか、
温かいとか冷たいとかシャープとか、
そういうイメージを決めるために、
まず本を見ます。
わぁ、この美しさ! 作りたい! とか、
そういうことを、まず考える。
だから最後まで、ずーっとそのイメージはある。
本を見るといっても、形を真似するわけじゃない。
形、もちろん、全然違います。でも、
なんかずーっと、そのイメージは続くんです。

 
糸井:
ああ、それはおもしろいな。

 
ニコラ:
デザインをしていって、
たまにわからない時はまたその本を見て、
も一回見て、どうしてそう美しいのとか、
どうしてそうなのとか、考える。

 
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糸井:
自分どうしてそれを美しいと感じるかを
考えるんだ。

 
ニコラ:
そそそそ。それ勉強!

 
杉野:
うちのニンテンドウ64とか
スーパーファミコンのデザインをしてる
アシダさんていう先輩がいるんですけど、
その人も建築好きですもんね。
2世帯住宅だか3世帯住宅だか建てられたんですが
自分達のとこは、
自分の好みでぶぅわーっと作られたんですよ。
建築デザインいろいろ勉強して、
ものすごいパワーをかけて。
で、できあがって、もうすごく喜んではった。
家の次は何かというと、
「次は墓石だ!」
て言うてました。

 
糸井:
墓石!

 
杉野:
もう、生きてる時の家は自分でデザインしたから、
次は自分の墓石をデザインしたい、言うて、
ある時会社で、ずーっと墓石のデザインの本を
読んではるんですよ(笑)。で、
「杉野どう思う? この新しいと思えへんか?
 このテクスチュアがきれいだぞ」

 
糸井:
うんうん。

 
杉野:
でも、家族からは、
「自分も入る墓石がこんなんは嫌や」
て言われたらしいですけど……。

 
糸井:
うん。

 
杉野:
これは……内緒にしといて
もらったほうがいいかな(笑)。

 
糸井:
いや、なんにも問題ないですよ(笑)!
とてもいい話ですよ。

 
杉野:
それぐらいやっぱり建築が好きなんですね。

 
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糸井:
墓石になんて書くだろうってのは
俺もしょっちゅう考えて、楽しみにしているんだよ。
人の墓石に、なに書こうかとか、考えてるよ。

 
杉野:
おおー。

 
糸井:
うん。それ、やっぱりね、
人の一生が終わってからなにが残るかっていったら、
ちょっとしかないわけだから、
墓石って大事ですよ。
俺、墓石のアイデアあるんだよ。

 
杉野:
お(笑)。

 
糸井:
うん。××××の大きさにするの(笑)。

 
杉野:
ちっさい(笑)。

 
糸井:
ちっさい。
そうすると、いっぱい作れる。
今、お墓ないんですよ。

 
杉野:
おおおー。

 
糸井:
墓ね、足りないんですよ。
昔は都市の中にお寺もあったし、
墓場もあったんですよ。
だけど今そういうもの嫌われるから、
どんどん外へ出しちゃって、
東京の人のお墓はもう千葉とかになってる。
でそれは、ほんとは変なことなのよ。
だから、みんなで自分の××××ぐらいの
大きさの墓石を、狭いところに立てて、
例えばこう、緑の公園みたいなところに、
あっちこちにぽつぽつぽつぽつ墓石がある。
てすれば、そこは公園でもあるじゃない(笑)。
いづれ、そういう、個人の墓になると思う。
家の墓じゃなくてね。

 
宮元:
そうですよね。

 
糸井:
ゴルフ場の隅に墓があったっていいじゃない。
キノコのイメージなんです。

 
古庄:
あー。

 
倉恒:
なるほど。

 
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糸井:
で、ちゃんと苔が出てもいいし。
自分で地図をもらって、田舎の方の霊園で、
えーと6丁目8番地のあたりにあるんだなと思って、
ずーっといろんなお墓見ていって、
これだよ俺のは、って言って、
ピクニックができる。
ていうのを考えているんです。

 
杉野:
へぇーっ。

 
杉野:
そうか。究極はそこにたどり着くのか(笑)。

 
糸井:
ちょっと話がそれちゃったな。
これからやりたいことっていうのを聞こうかな。
杉野さんはこれからなにがやりたいですか?
ま、仕事としてこれやれって来るのもあるよね。
それも含めてなんだけど……。

 
杉野:
そうですね。まあ当然ゲームボーイ、
ゲーム機っていうのはこれからも
やっていくだろうし、やらなきゃいけないと
思ってるんですけど、
個人的にいえば、やっぱり任天堂らしく
ないものがやりたいですね。
ゲームとは全然違うもののデザインを
したいですよね。

 
糸井:
例えば。

 
杉野:
や、だからそういう点では、うん、あのー、
僕はあの、コーヒーカップとか。

 
糸井:
ふーん。

 
杉野:
実は個人的にはいろいろスケッチ描いたりして。
誰か作ってくれないかなとか。
自分は陶芸が下手なんで(笑)。

 
ニコラ:
機能がひとつなものですね。シンプルな。

 
杉野:
そうですもうシンプルな。そういう…。

 
糸井:
あの、中になに入れるからこうなっちゃう
っていうんじゃないもの作りたいですよね(笑)。

 
杉野:
そうです。そういうものと、逆のものっていうのを
作ってみたいなっていうのがあるんです。
任天堂が昔作ってたおもちゃ、
あるじゃないですか。ウルトラマシーンとか。
ああいうものもやりたいなーていうのは
すごく思いますよね。だから、
まあ、ちょっとちがうんですけど、
ポケットピカチュウ(万歩計)の話が
来た時には……

 

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糸井:
うれしかった?

 
杉野:
楽しくやれましたね。

 
古庄:
あれはすごく力が抜けてていいデザインやった。

 
杉野:
そうみんなから言われるんですよ(笑)。
実際に、2時間ぐらいで
デザインしたんですよ(笑)。
ゲームボーイアドバンスは
何年もかかかってるんですけど(笑)。

 
糸井:
ニコラさんは携帯電話のほかに
なんのデザインやりたい?

 
ニコラ:
僕はやっぱり、無印の車作りたい。

 
糸井:
車ねー。

 
古庄:
無印の車?

 
ニコラ:
うん。わたし今の車嫌いなんです。
だから、ほしいデザインの車がつくりたい。
でも少数だと、大きなメーカーは動かないと思う。
なら、無印はどうかと……。

 
糸井:
それは将来的にはさ、
自動車の部品とかっていうのは、
みんな同じとこから買うようになるから、
個性を出すのってデザイン以外なくなるよね。
だからそんなに遠い将来じゃなくできるね、きっとね。

 
ニコラ:
今、デザイナーが車のデザインしない。

 
糸井:
しないねー。

 
ニコラ:
それは…。

 
糸井:
やっぱり最初のコストが高すぎるんだよね。
今はね。でも光岡自動車ってあるでしょう。
パロディみたいな車作ってる…。

 
ニコラ:
クラッシックな、ジャガータイプね。

 
糸井:
あれはパロディですよね。

 
ニコラ:
それ漫画チックね。
すごいなつかしい雰囲気ね。

 
糸井:
うん。
でも、あれも、走る車作れてるのは確かだから、
やろうと思えばできるんだよね。
パオとか、Be-1や、フィガロとか、
全部あれ、パロディなんですよね、
クラシックカーの。

 
ニコラ:
新しさはないけど、
あ、あれね、かわいいね、という
わかりやすさが、あるね。

 
糸井:
うん。なるほどね。

 
宮元
ノスタルジーと。

 
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ニコラ:
だから、僕、新しい車作りたいな。

 
糸井:
建築にいこうとかっていうことないの?

 
ニコラ:
やります。もう40歳から建築やります。

 
糸井:
そうなんだ。

 
ニコラ:
そろそろ勉強しないといけないけどね(笑)。

 
宮元
そうそう。修行いかないと。

 
ニコラ:
そうそう。5、6年で。
どんどん、つくるもの、大きくしたい。

 
糸井:
そのあとは都市設計になるのかな。

 
ニコラ:
ううん、多分そこ行けない。

 
糸井:
行けない?

 
ニコラ:
わたしブリティッシュマンじゃないから。
(ニコラさんはフランス出身)
都市計画、ブリティッシュのパワーです。
地図とって、しゅっしゅっとでかい線で、
大きい道作る、その結果、美しい街になる。

 
糸井:
それはブリティッシュに向いてるんだ。

 
ニコラ:
そうそうそう。ブリティッシュマンだけは、
そのパワーある。

 
糸井:
でも、そうじゃない、ってデザインも
あるじゃない。

 
ニコラ:
あるよ。
やっぱり、パリの美しさとかってね、
デザインじゃないんです。

 
糸井:
ねえ。それをわざと、自然にこうさせといたら
デザインができるっていう
やり方もあるんじゃないかなあ。

 
ニコラ:
でも、パーツパーツでしょ。

 
糸井:
そうか、そうだねー。
ニコラさんの建築、楽しみです。

 
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ほんとうは、ここで、座談会は終わりましたが、
終了後、そのままテープを回していた部分にも
面白い発言がありました。
次回は、その部分をお届けし、GBAデザイン座談会、
最終回にしたいと思います。
お楽しみに!
 
  2001-3-9
 
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