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01 (第18回の4)
ゲームボーイアドバンス・デザイン座談会
その4 ニコラさんの手に渡り、どうなったか?
 
イメージ この春発売がアナウンスされている
任天堂の新作ハードウエア
「ゲームボーイアドバンス」の本体デザイン座談会も
いよいよ佳境に入ってきました。
任天堂社内デザイナーである杉野さんから、
フランス人デザイナーのニコラさんへと
担当がうつったことには、どんな意味があったのか?
そのあたりを、忌憚なくお聞きしていますよ!
 
■出席者
■グエナエル・ニコラ
フランス出身のデザイナー。デザインスタジオ「キュリオシティ」
http://www.curiosity.co.jp/ 代表取締役。
イッセイミヤケの「プリーツプリーズ」のアートディレクションや、
「au」のロゴなども、氏の作品。
ゲームボーイアドバンスは、本体デザインを担当した。

■宮元玲子
デザインスタジオ「キュリオシティ」プロデューサー。
■杉野憲一
任天堂株式会社開発技術部デザイン担当。
ゲームボーイアドバンスの本体デザインの基礎をつくった。

■古庄伸
任天堂株式会社広報室企画部。
■倉恒良彰
任天堂株式会社広報室企画部。
■糸井重里
ほぼ日刊イトイ新聞編集長。
 
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古庄:
ニコラさんに初めて会った時の印象も
すごく僕はおもしろかったですね。

 
糸井:
なんかおもしろいことしたの?

 
古庄:
いえ、してないですけど、ニコラさんて……

 
ニコラ:
わたし、ゲームを知らなかったんですよ。

 
古庄:
しかも、なんかすごく、
むちゃくちゃもう軽かったんです。
この仕事の依頼をしたときも二つ返事で、
「やろうやろう。はい。大丈夫大丈夫」
って(笑)。

 
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倉恒:
ぼくらとしては、スペックの状況とか、
これから待ちうけてる作業とかにたいして
意識があるわけですね。

 
宮元
ええ、ええ。

 
倉恒:
で、それを、日本人のデザイナーの方にも
何人かの中からお会いして
お話しをしたりするとですね、
「こんなとこまでできてきて
 今更頼んでくるのはどうなんだ」と、
そういった話しもあったわけです、実は。
その状況で、非常にシリアスになっている時に
ニコラさんにお会いしたんですが……
わたし行きましたよね?

 
宮元
ええ、ええ。

 
倉恒:
ニコラさんどうですか? やっていただけますか?
って確か僕が言ったんだと思うんですけども、
ほんだら「いいよ」って二つ返事で言わはったんです。
んで、ぼくらも驚いて、へぇーって。
ねえニコラさん。

 
ニコラ:
そうです。

 
倉恒:
あの深刻な状況の時に、軽く返事をいただいて。

 
古庄:
一瞬、大丈夫か? と思いましたけど(笑)。

 
杉野:
最初はね、僕らが京都なのに、
東京のデザイナーで、しかも
フランスの方っていうことを聞いた時には、
驚きました。
作業性のことを考えると。

 
糸井:
連絡は何語なんだろう? とか?

 
杉野:
しんどいぞっていう話になったんですよ。
で、倉恒たちがニコラさんに打診にいくとき、
断られる、あるいは、作業効率がネックだから
声はかけさせていただいたけれど
話しあいによっては無理かもしれないっていう
前提で話してこようって決めてたのに、
帰ってきたら、「ええで。全然ええで」。

 
古庄:
もうひとりの候補者が京都だったんですよ。
もうすごく近いんで。

 
杉野:
レスポンスがいいじゃないですか。

 
古庄:
とかなんとかそんな話をしてたんですよね。

 
糸井:
外部だけど近くの人を
ひとり抑えておきたいねっていうのは
言ってたよね。最初からね。

 
古庄:
でも、コンペにして、作品を見せていただいた時に、
ああ、これは…と思ったんです。
ふたりからまったく、
真逆のものが出てきたんで。

 
倉恒:
でしたね。

 
古庄:
ニコラさんからはすごく感性が重視されたものが、
すごいスピードで、モデルまでいっぱい
作っていただいて、提示された。

 
宮元
すごいスピードでしたよね(笑)。

 
糸井:
気持ちよかったでしょ。

 
古庄:
はい。

 
ニコラ:
僕は、依頼されて、うれしかったけどね。
すごくうれしかった。

 
糸井:
あー。うれしかった?

 
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ニコラ:
そうそう。結局、やっぱりあの、
僕のところに来るまでが、すごく長かったでしょ。
2年間のプロジェクトで、わたしたちに突然来て、
デザインしてください、って。
でもやっぱり一番わかる人は、杉野さんでしょ。
そういうものが僕のところに来ても、
正直なところ、デザインには制約があるわけです。
だから、いっそ、とりあえずこれ、なにも変わらないけど、
って、すぐにデザインを決めたんです。

 
宮元
でも、もちろん、変えましたよ。

 
ニコラ:
ちょっとだけ変えよう、と思ったよ。
例えばわたし一番嫌だったのは、
四角の画面。なんかしつこいぐらに
話してたね。絶対この形変えたいって。
これだけで全部、甘く、ちょっと優しくなるよって。
そういうディティールが大事ですよって。

 
古庄:
ニコラさん、そうだったね。

 
ニコラ:
それまでのデザインを壊すことが
どこまでできるか、ってことを。

 
古庄:
最初のモデルに結構真ん丸っぽい画面のものも
ありましたね。

 
ニコラ:
そうそうそう。結構出てる。

 
宮元
最初の時はね、「コアラ」って言ってたんです。
画面がコアラの大きな鼻に見えるから。

 
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糸井:
コアラ!

 
宮元:
で、最終的な形は、コアラというより
ちょっとライオンになりました。

 
杉野:
そうそう、ライオンとか言ってましたね、僕らも。

 
ニコラ:
ちょっとライオンになったね。

 
宮元:
最初のプレゼンの時は……

 
糸井:
もっとコアラだった。

 
古庄:
そうなんです、確かにそれ、糸井さんが言ってた、
「なんか愛称をつけられるデザイン」に
見えたんですよ。

 
糸井:
うん、僕がその前にメールで出したのは、
例えば「貝殻」とかって言ったんだよね。
ビーナスが出てくる貝殻って言ったら、
誰でもイメージできるから、
そういうふうになにか他のもので
イメージできるものでないと、
やっぱり、冷たくなっちゃうよって。

 
古庄:
ちょっと夢を。

 
糸井:
うん。だから、あの時は、貝かなー、
と思ってたんですよね。

 
古庄:
ニコラさんの作品を確か糸井さんに画像転送して、
それを見て、貝ですよ貝、とかいうメールが
突然飛び込んで来た。

 
糸井:
うん、そうだそうだ。

 
ニコラ:
貝ってしらないから、ホタテかなー? って(笑)。

 
ニコラ:
あ、ホタテ、わかるわかる、って。

 
糸井:
まあ要するに、シェルってイメージ、あの、
なんていうの、専門的にまあ外側のこと
シェルって言うじゃないですか。
だったらほんとにシェルにしちゃえ、
と、無駄な場所ができるのが、
この形にしちゃうとシェルじゃなっちゃうから、
それを、なんかこう、もうひとつできるように
するために、なんかないかな、と考えていたんです。
でもそれは、個人の力だと思ったんですよね。
話し合って決めることじゃなくて。
だからニコラさんが出した
答えを見てからいいんじゃないの? って
いうものだと思ってたんです。

 

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杉野:
だからまあこの、最初デザインの話が出た時に、
当然、まあ1年半ずっとやってきてましたから、
(ほかの人の手に渡すのが)
ものすごく、抵抗はあったんですよ。

 
糸井:
腹立ちますよね。

 
杉野:
まあ、言えば、そういうことでした。
プライドもありますから。

 
糸井:
それが普通だと思います。

 
宮元
そうですよねー。

 
杉野:
つまり、自分の出したものがダメだって
言われてるわけですからね。
「えーっ?」ていう思いで……でもまあ、
「仕方ねえなあ」っていうところで、
「しゃあねえなあ」って
やり始めたんですけど、
やっぱり、よかったですよ。あとから思えば。

 
糸井:
うん。

 
杉野:
やってる最中に、すごく気変わりましたから。

 
糸井:
最終的に、いいものができないと、
杉野さんの腹立ちは永遠におさまんないわけですよね。
いいものができなければ、
「やっぱり俺の言うとおりにしとけばよかった」
ってなるんだけど、
いいものができれば、絶対最後は大丈夫だから。
だから杉野さんに対しては、
みんな恐る恐るだけど、
怒らしてもいいやって思ってたよね。
絶対いいものができあがってくるという
希望のもとにね。

 

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杉野:
例えば、あの、画面を丸くするっていうことにしても、
最初のゲームボーイのコンセプトで、
ちっちゃい画面をちょっとでも
大きく見せようという理由から、真四角なわけです。
僕はこの10年、ゲームボーイのデザインを
ずっとやってて、
それがこびりついてるんですよね。
だから、これを丸めるっていう感覚は、
ないんですよ。
それをしたら、コンセプトからずれるんだ、
画面が小さく見えてしまうっていうことが
抜けてなかったんですけど、
最初、ニコラさんが丸めようと言ったとき、
いや、それはやり方として
間違ってるんじゃないか? とか思ったけれど、
でも、実はもう「むかしのゲームボーイ」とは
条件が、変わってたんですよ。
ゲームボーイの画面は本当にでかいんですよ。
もうすでに。
でその周りのものっていうのは、
画面を大きく見せるためのものではなくて、
液晶の保護なんです。保護とアクセント。
でも僕の頭の中は、
今までのずーっと10年間の蓄積のために
それを変えようなんて思いもよらなかった。
ところがニコラさんに実際に絵を描いてもらって、
モデルを作ってみたら、……いけるやん(笑)。

 
倉恒:
ていうか、かわいいやん(笑)。

 
古庄:
ありやん。

 
糸井:
ほぉー。

 
杉野:
完全に僕はインハウスの
デザイナーになりきってしまってるんで、
例えば、糊の、スクリーンカバーを
貼るための糊の面積が少なくなる。
そうするとはがれやすくなるとか、
もうそんなことばっかりが頭に浮かぶんですよね。
「のりの強度も上がってるし、
 意外といけるんじゃないの」
っていう感覚よりも先に、
「今まであの時に、あののり面積でダメだった」
とかいうことばっかりが頭に浮かぶ。
僕は、そういうふうに考えていることがいけないんだ、
ってやっとわかった。
そのことがやばいな、と思ったのは、例えば
ニコラさんじゃなくて僕がいきなりこれをやって、
工場とかまあそのいろんな技術部の人間らと、
チームでスタッフと話しをしたら、
同じように「糊の面積が」って
返されるんですよ。

 
糸井:
そうだね。

 
杉野:
あの時のり面積がちいさくてはがれたのを
お前どうすんねん、
これまたちいさいじゃないかと。
「ところがニコラさんていう人の意向だ」
っていう話しがあると、
また説得しやすいっていうところもありましたね。

 
糸井:
あと一から考える気になりますよね、
のりの強度が変わったとかいうことも含めて。

 
杉野:
結構自分は今まで縛られた中にいたんですよね……。

 
糸井:
無意識にね。

 
杉野:
そうですね。
そんなつもりはなかったんですけど、
ニコラさんとやってるうちに、あー、そっか。
俺はちょっと、完全に、デザイナーではなく、
技術屋になりきってたなっていう…。
ちょっとやばいなって思いましたね。

 
糸井:
それだから、最初からそういうふうに
言っちゃったら認めたくないけど、
一緒に作っていく中でわかっていったから
おもしろかったんだろうね。

 
杉野:
そうですね。だからあのー、
実際、最初古庄と話してる時も、
たぶん僕はとげとげした言い方を
してたと思いますけどね(笑)。

 
糸井:
そりゃ当然ですよね。

 
古庄:
かなりとげとげしてたよ。

 
杉野:
(笑)まあだんだんだんだんと。

 
古庄:
まあ、どうどうどう、という感じでね。

 
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こういう状況では、摩擦がないわけがない。
でも、いいものをつくろうという前提ならば、
その摩擦は無駄にはならない。
そういうふうにして、ゲームボーイアドバンスって
つくられていったんだなあ……。
次回はさらにつっこんだ内容になる予定です。
お楽しみに!
 
  2001-02-06
 
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