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「罪と罰」〜地球の継承者〜
〜最終ステージまで突っ走ろう!〜
「罪と罰」には、
“3つの初心者救済策”が用意されてるんです


新シリーズ、アクションシューティングゲーム
「罪と罰 地球の継承者」についての第3回目。
いよいよ、ゲームの中身についての話です。
ゲームの初心者に遊びやすさを提供するために、
どんな工夫がされているのか?
それは、マニア層のファンを見捨てることには
ならないのか? ディレクター山上さん、
プロデューサー前川さんが語ります。

 
「罪と罰」〜地球の継承者〜
2000年11月21日発売
定価:5800円(税別)
アクションシューティングゲーム
1〜2人用
 

座談会出席者
 
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●前川正人
「トレジャー」代表取締役社長。
「罪と罰」のプロデューサー。

 
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●山上仁志
任天堂開発第一部。
「罪と罰」のディレクター。
過去の代表作は「パネルでポン!」
「ヨッシーのクッキー」
「ゲームボーイギャラリー」など。

 
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●武久 豊
任天堂広報室企画部。
「罪と罰」のプロモーション担当。

 


山上:
ここに、初期の頃に受け取った企画書を
もってきたんですけどね。

 
前川:
あいや〜、懐かしい〜(笑)。

 
山上:
「こういうゲームを一緒に作りませんか」という話が
トレジャーさんから任天堂に来まして。
トレジャーさんはもともと「セガ」さんメインに
ゲームを作られていた会社で、
周囲にいるゲームの好きの人たちから、
「トレジャー」と言えば、セガのシューティングゲームで
すごい有名な会社で「セガの最後の良心」とか
言われてるらしい、という話を聞いて(笑)。
で、こういう企画書を受け取りまして……。

 
前川:
もう黄ばんでますねぇ(笑)。
でも、改めてこの企画書を見るとわかりますが、
最初から細かい設定まで出来ていて、
その通りに完成しているという意味で、
今回は、かなり良い感じで開発が進んだわけですね。

 
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1998年8月頃に企画がスタート
 
山上:
仮称で「グラスソルジャー」という名前だったんですけど、
この時点から、ルフィアンとか、世界観の設定が
きちっとでき上がってたんですよね。
ゲームレイアウトや、3Dスティックの使い方も
きちっとでき上がってるんですよ。
 
で、僕の頭の中でいろいろ想像すると、
「今までのゲームにないアクションだなぁ!」と。
「かなりおもしろいぞ、これは!」と。
ぜひ僕が担当でやってみたいということで、
スタートしたのが1998年の8月頃ですね。
で、それから最初の画面を見せてもらうまでが
かなり時間がありまして、
1999年に入ってからでしたっけ?

 
前川:
入ってからですね。

 
山上:
かなり高度なことをやろうとしてるゲームでしたので、
最初の作りにかなり時間かかりまして。

 
前川:
ニンテンドウ64というハード機を
しゃぶりつくしたいという気持ちがあって、
「64でここまでやれるんだ、というゲームを出そう!」
ってことで、システム作りからガリガリやり直しました。
ですから、最初の画面が出るまで、時間かかりました。

 
山上:
で、でき上がったものをポンと見たときの僕の第一印象が
「こーれは任天堂の世界とちがいすぎるぞぉ……」と、
「これは、えらいものを引き受けたんじゃ
 ないだろうか……」と(笑)。
最初の「新宿駅周辺」のシーンと、
登場人物のサキが巨大化して、
敵側のカチュアと戦うシーンが出てきて、
そのあたりを見て、
「こーれは、倫理的に任天堂は出すのかなぁ……」と。

 
前川:
わっはっは(笑)。

 
山上:
つまり、ゲームの中で、具体的に人が斬り合ったりとか、
バンバン撃ち合ったりというのが、
……とがった印象に見えたんですよね。
「ちょっとこれは、どうしたものか……」
と、思ったんだけれども、実際にゲームをやると、
これがすごく新鮮だったんですよ!
その時点では難易度はもう強烈に難しくて、
とてもじゃないけどクリアできないんですけど、
「これは絶対おもしろくなるぞ」と思って(笑)。
まず、難易度のことは置いておいて、
もう少し作ってもらわないと次の話もできない。
ということで、とりあえず制作を進めてもらいました。
 
1999年は各ステージを順番に作ってもらってたんです。
で、いろいろなステージができ上がったんですけど、
やはり思ったより制作に手間がかかるということで、
当初の予定より、ステージの数も少なくなってきまして
トレジャーさんのディレクターからも、
「ゲームのボリュームはこれで大丈夫だろうか?」
という不安があると言われて……。
 
つまり、1つのステージあたりのクリア時間を検討すると、
このままではステージ数が少なすぎると。
制作期間を延ばしてでも
ステージを増やしてもらわないと困る、ということで。
当初は、5ステージ作りたいと言っていたのを
途中で1ステージにするという話になって(笑)、
それはさすがに少なすぎるということで、
最終的に、3つのステージに決まったんですね。
で、1999年の11月くらいには、ほぼ各ステージが
でき上がってきたわけですね。
だいたいゲーム全体ができ上がった……、
ここから先が大変なんですよ(笑)。

 
──:
2つの会社の違うカラーを、どう融合させるか、
という仕事が始まるわけですね。
 
山上:
まず“難易度”のこと。
ゲームの導入部に“練習ステージ”がいるのか、
いらないのか、という話。
“ストーリー”の難解さについての僕の意見。
この3つの点について、長い、長い、
打ち合わせと説得の時間が(笑)。

 
──:
その3つの点というのが、
ゲーム初心者からすると、楽しさを感じた部分でしたよ。
“練習ステージ”からスムースにゲームに入っていける、
先の“ストーリー”が知りたくなるから、
ゲームを続けたくなる。
初心者が熱くなれる“難易度”だから、
3時間くらいで、後半のステージまで進めた、という。
 
山上:
でしょう(笑)。
で、まず僕たちがトレジャーさんに
伝えなければならないのは、
「初めて遊ぶ人の気持ちを忘れてはいけないですよ」
ということでした。
マニア層が繰り返し遊んでくれるのも大事だけれど、
初めてゲームを買った人を裏切らなければ、
必ずそのお客さんはファンになってくれるから、と。
その人を厚く守ってあげるために、
僕はこの3つの部分については譲れない、
ということでね、ずーっと打ち合わせでした。

 
前川:
「罪と罰」はコントローラの操作がやや複雑というか、
初めてゲームをやる人にとっては
ちょっと難しいかな、という部分があるので、
その3つの要素は、いつも以上に
慎重に考えなきゃならないことでしたよね。

 
──:
その3つの要素の話が、そのまま「罪と罰」の
おもしろい部分を伝えることになるかもしれませんね。
 
まず、コントローラの操作から言うと、
僕が初めてやってみて思ったのは、
すぐにゲームを始めたいと思うんですが、
とにかく操作する自信がないんですよ、初心者の僕は。
まともに、扱えないんじゃないか、と。
そう思ったので、まず「トレーニングモード」に
行ってみたんですよ。
で、実際に操作しながら、トレーニングできるので、
コントローラの操作に指が慣れてきたんですよ。
クルマの教習所みたいに、運転しながらわかる感じで。
で、「トレーニングモード」が終わると、
自分はもういっぱしのソルジャーになったような
気分になってるんですよ(笑)。
で、すぐに草原を進むという最初のステージ
(「ステージ0-0」)が始まるんですけど、
そのステージはクリアできるんですよ。
そこで思ったのは、
「オレ、イケてるよ!」と(笑)。
 
武久:
(笑)うまい具合に、いい意味で勘違いできるんです。

 
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「ステージ0-0」が実は練習モードだった……
 
山上:
でね、実は「罪と罰」には、
“3つの初心者救済策”が用意されてるんですよ。
1つめが今言っていた「トレーニングモード」ですね。
2つめが、「タイトルデモ」です。それを観ていると、
「ステージ1-1」を例にしてゲームの進め方を
すべて説明してあるんですね。
3つめが、「ステージ0-0(草原)」なんですよ。
 
この3つを入れることは、
任天堂として絶対に譲れない部分でした。
一度に言うと現場のスタッフを混乱させてしまうので、
まず最初に「練習モード」を追加してほしい、と。
その「練習モード」とは、
“ゲームに自然に入り込める形での練習モードがほしい”
という依頼をしてるんですよね。
それがつまり、「ステージ0-0」のことなんですよ。

 
──:
え!? 「ステージ0-0」って実は練習モード?
 
山上:
そうなんです。

 
前川:
もともとなかったステージを後から追加したから、
「ステージ0-0」という名前がついたんですよ。
もともと「ステージ1-1」から始まってたんで(笑)。

 
山上:
で、「ステージ0-0」を追加したこともあって、
ストーリーに整合性をもたせるために
「ステージ0-0」を“夢の中のシーン”に
してくださったんですよ。
これは僕らが提案してないですね。
トレジャーさんがきちっと考えて
作ってくださってる部分なんです。

 
──:
そうか! 「ステージ0-0」をクリアした後で、
夢から醒めるストーリーになってましたよ。
で、「ステージ1-1」へ進む……。
 
山上:
で、私は、最初のステージは絶対に、
練習とは気づかせないような練習ステージに
してもらわないと困る、と断言してるんですよ。
これは、初めてゲームをやる人は、
絶対にいきなり操作ができないから。
そこを救済しないと、その時点でお客さんは
逃げていきますよ、と。
これもずいぶん話し合いをしたなかで納得していただいて
まず「ステージ0-0」を作ってもらいました。
これが1つ目の救済策です。
 
次に、それでも対応できない人がいるから、
「トレーニングモード」を作ってください、と。
初めてのお客さんで、すぐゲームを始めた人も、
スタートして「ステージ0-0」をクリアするだろう、と。
でも、それでも操作ができなくて
「ステージ0-0」で行き詰まったときに、
ハッと我に返って、
「トレーニングモードがあるわ!」と、
そこで操作に慣れてくれる。
そうしたら、救済できるではないか、と。
「トレーニングモード」がなかったら、
64の電源を切るかもしれないんですよ。
で、これで救済策が2つになって、
かなりの人を救済できます。

 
3つめは、
任天堂のゲームでは、気をつけていることがあって、
「取扱説明書」を読まなくても、
ゲームにすんなり入り込めるような配慮をする、
という工夫がされてるんですね。
その一環として、「タイトルデモ」の中に、
ゲームの説明を入れるということを
多くのゲームでやっているんですよ。
で、当然「罪と罰」でもそれはやりましょうということを
説得して入れていただいたわけですね。
 
で、トレジャーさんの判断として“新宿のステージ”で、
つまり「ステージ1」を使って、
「タイトルデモ」を作ってくれました。
それを観ている初心者のお客さんは、
「トレーニングモード」で操作に慣れて、
「ステージ0-0」がクリアできて、
本格的にゲームが始まる「ステージ1-1」も、
すでに「タイトルデモ」でその場面を見ているので、
初めてゲームをやる人でも、
「ステージ1-1」までは、スーーーッと行けるんですよ。
その頃には、もう「罪と罰」にかなり慣れていて、
ゲームが楽しいと思えるテンポで先に進めるわけですね。

 
──:
は〜、すごい仕組みですねぇ。
 
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「タイトルデモ」が「ステージ1」のヒントに。
ステージ1の舞台は新宿駅

 

山上:
3つの初心者救済策で、遊びやすくすること、
それと、難易度「イージー」のレベルについては、
初心者が「罪と罰」の最後のステージまで進めるように、
初心者なりの上達ペースのまま、
徐々に難易度を上げるようにしてください、と。
 
難易度の設定については、
たとえば、ある敵キャラがいたら、
「イージー」では攻撃してこない、
「ノーマル」「ハード」の時だけ攻撃してくる、
ということは極力避けてください、と。
難易度「イージー」でもちゃんと攻撃してくるけれど、
その攻撃が自分に当たらない、とか。
そういう配慮によって、「自分が上手い!」と
思えるような遊ばせ方をしてください、と。
 
ということをずっとお願いして、
「イージー」という難易度を作っていったんですね。
いろいろな初心者救済策を入れておかないと、
数少ない初心者のなかで、貴重なユーザーさんを
逃してしまう結果になるので、
そういうフォローをまずしっかりやるわけですね。
 
で、当初、トレジャーさんからいただいたゲームでは、
現在の難易度「ハード」に当たるものが
「イージー」モードでした(笑)。

 
前川:
わっはっは(笑)。
今の「ハード」が当初のデフォルトでしたね(笑)。

 
山上:
その上にさらに難易度の高いモードがあったんですね。
で、僕らもとてもじゃないけどクリアできなくて(笑)。

 
前川:
任天堂さんと共に練り込んで、多くの人が遊べるように
考えられた「イージー」モードを作りましたけれども、
弊社が当初予定していたままの作りである、
コア層向けへの「ハード」モードも残ってますから。
逆に、任天堂さんと組まなければ、
この「ハード」モードだけで、「トレーニング」モードも
「練習面」も無いままに、
発売されていた事になりますね。

 
──:
やっぱり、マニア層向けに、ハードは残すと。
 
山上:
当然、私たちもマニア層を捨てるつもりは
まったくありません。
マニア層は「マニアだけ」という言葉に弱いわけですよね。

 
前川:
難易度「ノーマル」をクリアしたら、
マニアだけに用意された、特別に出てくる
「ハード」モードがあるわけなんですよ!

 
山上:
しかも「ハード」モードは、
敵の攻撃とか、視点がちがうんですね。
それによって、意図的に
「本来私たちはこのモードで遊んでほしかったんだよ」
というのが、わかるような作りになってるわけです。
するとマニア層の人たちは、それが見えるから
「あ、これが本来トレジャーのやらせたかった
 レベルではないだろうか……」と感じて、
満足してくださるわけなんですよね。

 
前川:
やっぱりウチの会社(「トレジャー」)の
コアなファンもいますんで、
昔から、ついてきてくれている人たちのためにも
難易度「ハード」を残しておかないと。

 
山上:
遊び終えたマニア層の人は、「さすがトレジャー!」と
絶対言ってくださると思うんですよ。
あと、マニア層の人は、最後までクリアするだけじゃなく、
「何点とれるのか?」「何体の敵を倒したのか?」
「どれくらいの短時間でクリアしたのか?」
そういうことをすごくストイックに、
自らを追いつめるように追求し続けるんですね。
なので、そういったスコアの表示を
きちっとフォローして残してるんですよ。

 
前川:
スコアを残すというのはウチのディレクターも
すごく大事に思っている部分で、
アクションゲームでも、シューティングゲームでも
スコアの競い合いがあったはずなのに、
最近のアクションゲームは最後まで行くと終わり、
2時間遊んだら終わり、という傾向があるんですよ。
「アクションゲームって2時間しか遊べないじゃん」
みたいな部分って、ありますよね?
一方で、ロールプレイングゲームは100時間遊べるのに。
そういう意味で、スコアの競い合い、追求ってのは
ずっと残しておきたいという思いがあるんですね。

 

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画面の上にスコア表示を残したのは、
スコアの追求をマニア層に楽しんでもらうため
 
山上:
だから、爽快感を追求するという部分だけで
「罪と罰」を見ていくと、
スコア表示がなんのためにあるのかわからないんですね。
「スコア表示なんていらないじゃん」と。

 
──:
言われて初めて気づきました。
初心者の僕は“どこまで進んだか”が楽しくて、
気持ちよかったんですよ、バシバシ先に進めますから。
先に進むのが楽しいし、気持ちいいという初心者には、
敷居を低くして、「罪と罰」の世界に入りやすくして。
同時に、マニア層の人には、
スコアをストイックに追求できる
ようにしてあるんですね。
 
(つづく)
 
 
ゲームの初心者を、そうとは気づかせずに
救済する3つの工夫。聞いてて、驚きました!
「言われてみれば、そうだった」ということばかり。
単にゲームを簡単にするのではなく、
いかに遊びやすくするか、という話はこの後も続きます。
次回は、やる人を先に進みたくさせる、
ストーリーについて話を聞いています。



2000-12-13

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