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「罪と罰」〜地球の継承者〜
〜最終ステージまで突っ走ろう!〜
2つの会社でものを作るということ。
異なるカラーをどう融合させるのか!?


樹の上の秘密基地、今回から新シリーズです!
ニンテンドウ64用のアクションシューティングゲーム
「罪と罰 地球の継承者」の開発スタッフに話を聞いてきました。
「罪と罰」……タイトルといい、パッケージといい、
今までの任天堂のゲームとは一味ちがう雰囲気ですね。
それは、このゲームが「トレジャー」と「任天堂」という
2つの会社の異なるカラーによって作られたものだからです。
具体的なゲームの話をする前に、遠回りしてでも、
「トレジャー」と「任天堂」がどのように融合して、
「罪と罰」を作っていったのかを、知ってほしいんです!
きっと「罪と罰」というゲームの魅力が、見えてきますよ。

 
「罪と罰」〜地球の継承者〜
2000年11月21日発売
定価:5800円(税別)
アクションシューティングゲーム
1〜2人用
 

座談会出席者
 
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●前川正人
「トレジャー」代表取締役社長。
「罪と罰」のプロデューサー。

 
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●山上仁志
任天堂開発第一部。
「罪と罰」のディレクター。
過去の代表作は「パネルでポン」
「ヨッシーのクッキー」
「ゲームボーイギャラリー」など。

 
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●武久 豊
任天堂広報室企画部。
「罪と罰」のプロモーション担当。

 


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前川:
では、まず自己紹介ですね。
「トレジャー」というゲーム制作会社の代表やってます。
「罪と罰」のプロデューサーという立場で、
任天堂さんとこういうゲームを作りましょうという部分の
すり合わせから始めています。
「罪と罰」を作るにあたって、
担当するディレクターがウチに別にいて、
私が現場を仕切るわけじゃないんで、
ウチのディレクターが企画を練って、
上がってきた企画を私が見て、
それを任天堂さんに提案するという、
橋渡しの部分と、進行管理ですね、私が担当したのは。

 
山上:
僕は武田久美子が大好きで……。
もう10年以上前からファンなんですけど、
結婚しちゃって悲しいです〜、って話がちがう(笑)。
僕は、任天堂の開発一部におりまして、主に今は、
セカンドパーティーと呼ばれる外部のゲーム制作会社と、
ゲームソフトを制作するときに、
任天堂側のディレクターとして参加しています。

 
初めて一緒にゲームを制作する会社の場合に
すごく多いのが、その会社のカラーと、
任天堂のカラーが合わないことですね。
で、やはり任天堂のゲームというのは
究極のマニア層ではなく、
一般に最も受け入れられるような
ゲームでなければならない、という
すごい大きなカラーがあるんですよ。
だから、そこに合致したものに
すり合わせていかなければならないんですね。
 
ところが、個性の強い方々の集団が
ゲームの制作会社ですから、やはり簡単には
それがうまくいかないんですね。
それをうまーく調整して、
任天堂と、協力していただける制作会社で、
もっとも高い妥協点を見いだすというのが、僕の仕事です。
と同時に、制作会社からいただいたアイデアをもとに、
任天堂が独自に培ってきたノウハウを加えることによって
制作会社だけ、もしくは、任天堂だけで作るよりも、
1+1が3になるようなゲーム作りをするのが
僕たちの仕事なんです。
 
任天堂のノウハウを、「ゲームに付けてください」
と言うのは簡単なんですけど、制作者には、
それを付けない意図というのもあるわけで、
どうしてそれをつけなければいけないか、
ということについて、スタッフの皆さんが納得するまで
3日でも5日でも僕はしゃべり続けるんですよ。
ひたすらしゃべり続けて、そのことが正しいと
納得されるまで。
 
言われたからいやいや作るのではなくで、
それが絶対必要なんだ、と思っていただけるまで、
ひたすら根気よく話を続けるんですね。
納得せずに作られたものというのは、
そこだけ見たら手薄なものになってしまうんです。
でも、納得されて作られたものは、
もともと制作スタッフの皆さんが
意志をもって作った部分と比べても、
まったく同じレベルでものができ上がるんです。
ですから、強制というのをせずに、必ず話しあう
ということをトコトン続けるようにしてるんですよ。

 
前川:
そのへん、すごく重要ですね。
ウチ(「トレジャー」)は
マニア層に向けて売ってきた部分があって、
独特な雰囲気でゲームを作ってきてる会社なんで、
今回もいろいろすり合わせするという面で……、
まあ、山上さんが今言ったとおりで、
ウチのディレクターも、納得しないままに
「やれ」って言われたからやってるよ、というのだと、
「言われたとおりやればいいんでしょ。
 俺たちのポリシーはこっちでとっておいて、
 それは貫くよ」みたいになっちゃいがちなんですよ。
そうなると、ゲームがどの方向に向いてるか
わからなくなっちゃうんで。
そういう意味では、ウチのディレクターも引かないんで、
山上さんと何時間にもわたるミーティングですよ(笑)。

 
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山上:
結局は、任天堂側のディレクターが言うことだから、
従わなくちゃいけないのかな、
という複雑な思いもあるとは思うんですけど、
やっぱり僕が話していることは、ある意味、
正論でもあるわけですね。
で、「確かにそれは言えてるよな」と納得してくれる。
でも、トレジャーさん側のディレクターには、
それをやらなかった意図もあるわけですから、
僕に言われてやる悔しさもあるし、
複雑な葛藤みたいなものが絡まりながら
苦渋の選択で仕事を進めていっていただいてると
思うんですよね。
いろんな思いがあると思うんですよ。

 
前川:
ぶっちゃけた話、ウチ(「トレジャー」)のディレクターは
相手が任天堂さんだから遠慮……というのはないんだけど、
いちど納得したらとことんやるんですよ。
「確かにそのほうがいいよなぁ」と(笑)。
だから、ポリシーだからやらないという部分はあっても、
「期間かかるし面倒だからやらない」という部分は
ないんですよ、クリエイターというのは。
いいものになると納得したら、やるんですよ。
で、できたものを見て、やってよかったね、となれば、
結局はいいものができてるわけです。
「任天堂」と「トレジャー」が
いちばんいい形で結びついたことになりますよね。

 
──:
任天堂とセカンドパーティー(ゲーム制作会社)が
共同でゲームを作るときの
仕事のしかたが見えてきますねぇ。
 
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山上:
やはり、いいゲームという基準が、
万国共通であれば何も問題ないんですけど、
クリエイターが思ういいものと、
お客さんが思ういいものは、
ズレがあることもあるんですね。
 
簡単な例をあげると、ゲームの“難易度”です。
私たちはずっと同じゲームを何年にもわたって
作っているわけで、ちょっとした工夫で、
全体の難易度をすごく高くしがちなんですよ。

 
──:
ゲームをやるお客さんからすると、
「これはちょっと難しすぎるよ」というくらい
すごく難易度が高くなっちゃうわけですね。
 
山上:
初めてやる人にはすごく難しくて
お客さんがゲームに対応できないときに、
「それはついてこられない人がいけないんだ」という、
そういう意識に、つい陥りがちなんですよね。
そこを、そういう意識にならないように、
ガッと難易度を下げなきゃならないんだけども、
すでにその時点で“どこまで下げていいのか”
わからなくなってしまってるんですよ。
 
必ずしも作っている人たちの思いが
ユーザーに届かないことが多くて、
そのことをできるだけわかりやすく話をするのが
任天堂のディレクター、僕の立場であり、
役目であるわけなんですよ。
 
で、「トレジャー」のスタッフの皆さんを
説得するときに最後に使う言葉というのは、
「このほうが、お客さんのためですよ」と。
結局、お客さんを満足させなければ、
あなたがいくら何を作っても、
それは自己満足の域を出ないものであって、
私の言うことは、「トレジャー」の考えに
こういうことを加えればお客さまが
あなたのゲームをより満足してくださるんですよ、と。
そのことを理解してほしい、ってことを
切々と解くわけですね。
 
で、最終的に、制作スタッフの皆さんも、
お客さんに満足していただくことが目的ですから、
任天堂的にそういうアイデアや、ノウハウが
あるのならば、取り入れようじゃないか、
ということで、すり合わせをやっていくわけなんですよ。
だから、
「俺はこう思うんだ!」
「いや、俺はこうだ!」
「いやちがう!」
「そうだ!」
と、そういう議論をやっているわけではないんです。
“どうすればお客さんが喜ぶのか”
ということを常に考えているという。
そういうのがゲームをよくしていく過程なんです。

 
前川:
それ、やっぱり重要な部分だと思うんですよ。

 
──:
目指すべき共通のイメージがあって、
そこに向かおうという考えがお互いにあれば、
協力できる部分が見つかってくると。
それを誰かが引っ張っていかないと、ということで、
まとめ役というか、説得するのが山上さんなんスね。
 
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前川:
お客さんの視点で、自分たちが作ってるゲームを
見なくちゃいけないというのは間違いないことで、
それは「トレジャー」も同じなんですよね。
ただ、具体的な部分で考え方がちがっていたりして……。
やっぱりアクションゲームって、お客さんは、
「やったぜ!」という達成感がほしいと思うんです。
その部分(達成感)の感覚がズレてるんですね。
 
「トレジャー」はマニア層に向けて
売ってきたというのがあって、
「達成感というのは、やっぱり
 これくらい難しいのをクリアして
 初めて“やった!”と思えるんだ」
という考えがあって、その難易度というのは、
今までの流れで作ってきてる部分があるので、
必ずしも万人向けではない。……難しい(笑)。
 
それを万人向けにしようとすると、
ウチ(「トレジャー」)のノウハウでは
足りない部分があって、
そこを任天堂の山上さんにお手伝いしてもらって、
いい意味で万人向けのゲームになったと。
ただ、「トレジャー」のポリシーはそのまま残ってる。
要するに「トレジャー」がやりたかったことは、
ぜんぶ入ってる、という形で消化されてます。
非常にいいゲームになったと思いますよ。
「こんなのトレジャーのゲームじゃないよ!」
ってなっちゃうんなら、最初からやらないわけで(笑)。

 
──:
そうですよね、言われたからやってる、ってなるとね。
 
前川:
そうなんですよ。
やっぱり任天堂の下請けみたいな意識になっちゃうと、
言われたからやらなきゃ、みたいな部分で作っちゃう。
クリエイターが死んだような形で作ってると、
いいゲームって絶対できないんで。

 
(つづく)
 
 
 
ほかの会社と一緒に仕事する……、
こういう場面って僕らの仕事のなかにも、
けっこう出てくることなんじゃないでしょうか。
ヒトゴトじゃないような気持ちになりますね。
次回は、山上さんが考える、ゲームに命を吹き込むとは、
どういうことなのか。初心者を満足させるために、
どういうことをやっているのか、
という話になっていきますよ。



2000-11-28-TUE

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