ニュースのご近所。
あの出来事、近くで見るとこんな感じ。

第66回 人気特急列車・線路近くのドラマ。



みなさん、こんにちは!

名鉄電車の特急「パノラマスーパー」が
乗用車と衝突したというニュースがありましたが、
そのニュース映像で、特急の車体を見ると、
なんともせつなくなるというメールが届きました。
名鉄の線路のご近所にいらっしゃる人からのおたよりです。
さっそく、ご紹介いたしますね。







・先日、乗用車との衝突脱線事故を起こした
 名鉄電車の沿線に住んでいます。
 (現場からはかなり離れていますが)
 この近所に限ったことではないのでしょうが
 線路の近くではよく、
 小さな子どもをあやすため抱っこして
 電車を見せに来た親や祖父母らしき人を見かけます。
 今回、事故を起こした『パノラマスーパー』という
 特急車両は、最前列のビューシート、
 車体のかっこよさに加え、
 ちょっとしたメロディーを奏でる
 警笛(ミュージックホーン)を搭載していることで
 子どもたちに人気があります。

 旧型も含めるとその歴史は40年と古いので
 かつて子どもだった大人達にも
 何か特別な思いを持つ人は少なくないのでは、
 と思います。(普段は気付かなくても)

 ある日、ある駅のホームにいた私は、
 行き来する電車をビデオ撮影する父子を見かけました。
 子どもは小学校低学年くらい。
 やがて、父子のお目当てであるパノラマスーパーが
 ミュージックホーンを高らかに鳴らし通過しました。
 実際そのメロディーというのは、
 新名古屋駅以外では
 そうめったに聴くことはないのですが、
 どうやら、電車に向かって手を振るその子のために
 運転士がサービスしたようです。
 子供は「鳴らしてくれた!」と大喜び。
 私はなんとなく爽やかな、よい気分になりました。

 電車の運転士という職業を選んだその人もまた
 かつて幼き頃には、親や祖父母に連れられて
 電車をみて、手を振り、ミュージックホーンに
 歓声を上げて嬉しそうに笑った一人に違いない、

 と私は勝手に想像して、
 勝手にホロリとしてしまいました。
 
 その数日後、TVのニュースに
 痛々しく傷ついたパノラマスーパーの映像が。
 私にはその姿がまるで、
 怪獣に負けたウルトラマンのように見えました。
 (TABUN)






鉄道の好きな子どもと運転士さんとのやりとりを
想像してしまうほど、歴史と憧れをともなった電車が、
あの特急「パノラマスーパー」だったのですね。

ニュース映像を見て思うことは
人それぞれなのだなぁと思い、掲載いたしました!

では次はデフレの中で、景気にまつわるメールです。
現在の不況のなかでは、いろいろな職業のかたが、それぞれ
苦労していたり工夫をしていたりするのでしょうが、
今回のニュースのご近所では、その一端として、
「職人仕事のかたで、こんな風に働いている人がいます」
と、働いている現場のご近所から送られたメールを、
お届けいたしますよ。では、どうぞ!







・大工のかみさんをやっています。
 夫大工がプランニングから手掛けた家が
 ほぼ完成を迎えました。それがとても好評で、
 嬉しくてたまらず、書いています。

 夫大工は2年前まである工務店で
 お世話になっていました。
 その工務店は、地元では大手といわれる工務店の
 下請けの仕事を主にやっている小さな工務店です。

 建築業界では
 職人が誇りを持ち続けながら仕事をするということが
 とても難しくなっています。
 大工はお客さんと一度も話をすることなく、
 家を建てます。
 職人自身も「学がないから」などと
 コンプレックスが根強く、
 現場で大きな声でものが言える存在では
 なくなりつつあります。
 お客さんのなかには、現場に来て
 職人には一言の挨拶もなく、まるでそこに
 職人などいないかのように振る舞う人もいます。
 何か疑問点があると、現場監督や、
 元請けの工務店の担当者に話を聞きます。
 夫大工はそのやりとりを背中で聞きながら
 「現場のことを一番よくわかってるのは職人なんだぞ」
 と悔しく思っていたそうです。

 そういうジレンマに耐えきれず、
 工務店を飛び出し、
 自分が直接お客さんと話ができる仕事を、と
 初めて手掛けたのが今回の一棟でした。

 夫大工には資金力がありません。
 だから今回、知人の紹介の工務店に
 元請けになってもらいました。
 けれど、お客さんとの打合せ、デザイン管理、
 現場管理は夫が自分でやりました。
 お客さん(お施主さんといいます)とは、
 どんな音楽が好きか、休日はなにをして過ごすか、
 趣味は何か、そういうことまで話をして、
 細部まで決めていきます。
 そして、図面ができあがり、工事が進んでいくと、
 こんどは元請けの工務店や
 他の職人さんとの戦いがはじまります。
 詳しく書いていくとキリがありませんが、
 まず元請けの工務店の社長の無理解によって、
 デザインの主旨が理解されず、
 生かしきれないというジレンマがありました。
 社長の方も夫大工に対し気に入らないことは
 多々あったようで
 (夫大工が全面的に正しいとはいえません。もちろん)
 「あんたにはいっぱい食わされた」
 と言われたこともありました。
 夫大工が使いたいと主張する材料は
 かなりの確率で却下され
 「木造なんて二十年もてばいいんだ」
 とまで言われたときには
 夫はぐったりがっくり来てました。
 
 家を建てる一連の流れを見ていると、
 「やっぱり世の中お金なんだな−」
 と思うことが多いです。
 お金を握っている人が一番、
 発言力が大きいのです。
 今回の例でいえば、それはもちろん元請けの社長です。

 それから他の職人さんに至っては、
 きちんと仕事を仕上げる人、
 ウソみたいにいい加減な人、
 はっきり別れたようです。
 職人自身にもちろん責任はあります。
 ただ、職人の技術を生かしきれない
 現場のシステム、安い手間賃
 (左官屋さんの手間賃は
  マックのハンバーガーに次ぐ
  デフレ率だそうです)など、
 同情すべき点はあるようですが。

 そういう毎日に潰れそうになりながら、
 自分の力不足に愕然としながら、
 それでもなんとか建てた家です。
 それがいま、反響がすごいのだそうです。
 元請けの工務店には
 たくさんの問い合わせがあるそうです。
 社長は「いっぱい食わされた」とまで言っておきながら、
 そんなことも忘れて御満悦。夫は苦笑しています。

 今回、社長に手柄を横取りされた形で、
 はっきり言って金銭的には
 ちっとも潤わない仕事でした。
 けれど、それだけの反響が得られたというのは、
 夫大工を毎日見てきたわたしとしては
 素直に嬉しいのです。
 ・・・まあとにかく、わたしは嬉しい!
 と、いうことを伝えたかったわけです。
 (大工のかみさん)






不況のなかで、職人さんを見ているこの方が、
「きちんと仕事を仕上げる人、
 ウソみたいにいい加減な人、
 はっきり別れたようです」
と感じているところが、とてもリアルだなぁと思いました。

それでは、次回のこのコーナーで、またお会いしましょう。


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2002-10-05-SAT

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