6/52 イースター島
ニュージーランドへ出発しよう!
死にゆくモアイ
石川直樹は、すっかり「せつなく」なっていた。なぜなら、ほとんどのモアイが「倒れて」いたからだ。この島には1000体ものモアイがあるというけど、そのうち「立っている」のは、せいぜい数十体。多くは仰向けに倒れ、うつ伏せに崩折れ、表情は苔むし溶けかかり、あるいは制作途中で放棄され、半ば土に埋もれている。観光ガイドには無視され、ゆえに観光客には愛想のひとつもなく、大地へ還りかけている。それが「ラパ・ヌイのモアイ」だ。石川直樹は、かつて先住民が材料の石を切り出した山をバックに、そのなかの一体を写しとる。倒れたときの衝撃だろう、首が折れていた。まさに、遺骸。静かに、息を引き取っている。さっきまで、スズメのような小鳥が鼻先にちょこんと止まっていた。んー、せつない。
2010-12-13-MON