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第16回 なんで、誤解していたんだろう?

タモリ こないだの発見で
縄文かどこか知らないけど
すごい古い女性の骨が
発見されましたよね。

推定年齢21歳なんだけども、
すこしちいさくて、
小児まひのかただったんだろう、
と類推されているのだそうです。

当時の小児まひの方が、
21歳まで生きていけること自体が、
介護っていう概念のあらわれだと。

そうでなければ
生きのびられなかった、
ということがわかったんです。

つまり、単に
「あー」とか「おー」とか
言っている人間じゃないということが、
どんどんわかってきて。
中沢 だって
3万年くらい前の旧石器時代で
小児まひの人を
介護してる旧跡があるんですよ。
タモリ もっとさかのぼってもそうなんだ。
中沢 ええ。
もっとさかのぼっても
体の不自由な人を
人間は、介護したわけです。
弱いものを育ててるんですね。
糸井 つまり、一見、
けだもののようだといいますか、
その弱肉強食といいますか、
強いものだというふうに思われていたし、
そんなふうにイメージされてきたものが、
実はちがっていた、ということですよね。
中沢 まったくちがっていたんです。
ぼくらよりも、もっと繊細だし、
やさしい感覚を持ってるはずの人たちですよね。

あーとかうーとかじゃなくて、
言語も、深いところでは
今と同じ構造を持っているんです。
ボキャブラリーもかなり豊富だったし、
ことに自然界のものや、
動物に関するボキャブラリーは、
ぼくらよりもっと豊かだったと思います。

役に立つ動物や植物についての知識も豊富だし、
社会構造だってかなり発達していました。
すごいですよ、親族構造なんて複雑で。

ぼくらは、ふつう、
おじさん、おばさん、
その先になると
よくわかんなくなるでしょう?

だけど、縄文時代の人達の知識では、
もう5親等、6親等くらい、
広大な親族の図が頭の中に入ってるんです。
結婚相手をどこにさがすとか、
この中で操作していたわけですから。
そういう意味で、ある部分は、
ぼくらよりもずっと発達してたと思います。
糸井 なんで俺たち、
そんな誤解してたんだろうね。
中沢 一つは進化論じゃないですか。
近代になって、
人間は原始人から進化してきて、
宗教もアニミズムから多神教になって、
キリスト教が最高、みたいな……。
進化論は、近代の社会に
ものすごく影響を与えてますから。
糸井 今がいちばんいいんだ、
と思わせるための仕組みだもんね。
タモリ そしてこれからの世界が
かならずかわるんだ、
という仕組みは
近代のヨーロッパの論理から
きてると思うんですけども、それは、
行き詰まってるということが、
みえてますよね?
糸井 実際、変化してないですもんね。

(明日に、つづきます)
 
2006-01-04-WED