(これまでの「はじめての中沢新一」連載はこちらです)




  第8回 聖地は岬なんです

(中沢新一さんの、イベントでの
 ひとり語りをおとどけしています)
今、大学になっている土地は、
原野だったり
林であったり
かなり広大な領域であったところです。

その理由を尋ねてみると
縄文時代の遺跡であったり、
長いこと聖地の歴史が
続いていた場所だった、ということが
見えてきたわけですね。

その目で
慶應大学や早稲田大学や
青山学院大学や東京大学という、
都内の主要な大学の
ポイントを見てみますと、
ほとんどがそういう場所でした。

東京大学に至っては、
あそこから
最初の弥生式土器まで
発見されているわけですからね。

それから、もうひとつ
気がついたことがあったんです。

それはテレビ塔の場所なのですが、
いちばん気になるのは、
東京タワーでした。

そもそもこの
『アースダイバー』という本を
作るにあたっての
いくつかのきっかけの中で、
ひとつの重要なきっかけになったのは、
フランスの
ロラン・バルトという思想家が書いた
『エッフェル塔』
という見事な本です。

エッフェル塔が、
パリの街で、
いかに重要な神話的な存在であるか、
というのを書いてありまして、
そして、
なんとなく自慢してるんです。
こんなタワーを持っている国民はいないだろうと。

ぼくは、その自慢がイヤだったんですね。
東京タワーだって、いいじゃないか、と。

あの形は、たしかに
エッフェル塔にくらべると
ちょっとダサいとは言わないまでも
きゃしゃな感じはするし、
ゴジラとかモスラとかには
さんざん踏み荒らされるし、
ちょっと
かわいそうなところもあるけれども、
あのタワーの形っていうのは、
見事に東京の芝の地形とあっています。

そして、よく見てみますと、
東京タワーにのぼっていくと
お気づきになると思いますけども、
まわりはぜんぶ、墓地とお寺ですね。

その意味をさぐっていくと、
東京タワーが建っていた場所は、
長い時間、広大な墓地であり、
そしていくつかのスポットは、
聖地であったらしい、
ということが、見えてきます。

その目でものを見てみます。

東京タワーは芝に建ちましたけども、
もともと
東京タワーを建てる予定だったのは
上野だったようです。
上野も古墳地です。
これも因縁ですね。

それから、
もとのTBSが建ってるあたり、
という地点を結んでみますと、
テレビ塔が建つあたりというのは、
なぜかいつも聖地のあたりなんです。
この聖地の場所というのは、
岬なんですね。

(明日に、つづきます)
 
2005-12-27-TUE