はじめての中沢新一。
アースダイバーから、芸術人類学へ。

とんでもなく大きい視野のイベントができました!
友人たちが関係者席に座りたがってタイヘンです。
タモリさんと、糸井重里の依頼で、
中央大学教授の中沢新一さんが、登場するんです。

30年間の研究を、徹底的に濃縮し、
糸井重里に邪魔されながら、
タモリさんに突っこまれながら、
旧石器時代から現在につながる人間たちを、
そして未来に向けての人間たちの希望を……
たぶん、目の前に、想像させてくれるはずです。

「対称性、という道具を持って世界を見るうちに、
 自分の思考の中でなにか決定的なことが起きた」

縄文地図を手に東京を歩く『アースダイバー』や
全5巻の大傑作『カイエ・ソバージュ』の内容を、
いい会場、きれいな座席、長丁場で、語りつくす!

イベントがどんなにおもしろくなるか、
想像できそうな、打ちあわせの会話を、
「ほぼ日」では、連載してゆきますね。

第10回 土地の記憶
糸井 江戸時代の日本では
タクアンのしっぽとか
冷えたメシが
ごはんだったというような話が
ありますよね。

あれはそもそも、
当時の日本人たちが、
「旅人さんたちの集団」
みたいだったからなんだろうなぁ。
中沢 あぁ、都会に出てきて……
糸井 うん。
出稼ぎでずっと飯場にいるみたいな。
東京そのものが飯場じゃないですか。
中沢 家だっていいかげんだし。
糸井 大道具みたいな家に
住んでましたもんね。
タモリ 江戸はほんとにそうですね。
単身赴任の土地で、
女性が極端に少なかったという。
糸井 (笑)全体的に
カプセルホテルみたいな町ですね。
中沢 長屋ってカプセルホテルですよね?
タモリ 調べてみたら、江戸に住んでいた
女性の四人にひとりが売春婦なんだよね。
糸井 (笑)いい町だね。
中沢 いいねえ。
糸井 江戸時代から、権田原は
ゲイのたまり場だったんだよねぇ。
中沢 (笑)
タモリ 歴史は守られてるんだなぁ。
中沢 四谷もそうね。
糸井 場所の雰囲気が、ずっと
変わらないっていうのは、
不思議だよねえ。
タモリ その生活がずっとつづいているんだ。
中沢 ぼくら、もうあれだけど、
ゲイでそういうこと
まだ知ってる人、いるみたい。

きいたんだけど、
四谷にあった
オカマ専門の連れこみが
かなりおおきくて、
大部屋でみんなで寝てたらしいです。
タモリ そうらしいです。
中沢 こうやって
上向いて寝るんでしょ?
糸井 (笑)「でしょ?」
って俺にきかれても……。
中沢 顔をのぞきに行って、
すっと布団に入るみたい。
タモリ 大部屋で寝て、
男役と女役が
その場の雰囲気で決まるって。
糸井 今はもうないんですか。サウナとかも。
中沢 今はもうないですね。
糸井 四谷四丁目、
新宿二丁目というあたりには、
その界隈があるじゃないですか。
中沢 うん。公園になってる。
糸井 変わらないんだよね。
中沢 この「変わらなさ」っていうのはね。
お寺もズラせないけど、
ゲイのたまり場もズラせないという。
タモリ 土地の記憶なんだね。
糸井 意外と残ってるもんですね。
タモリ 東京を歩いていると
スラムだった場所にいきあたるんですよね。
糸井 うん。
開発しやすい場所って、安い場所だから、
新開発の土地は
いわくのある場所だったりするんだよね。
タモリ ちっちゃなほらあながあったりするの。
ほんとにその間際まで
高級マンションがあるような場所でも。

坂の下に住む人と
坂の上に住む人は
意識がそうとうちがいますね。
糸井 高い場所に
スラムってないですよね?
中沢 ないない。ありえない。
タモリ ありえないね。
糸井 お寺とかはどういう高さ?
中沢 お寺は、
ちょっとさがったところです。
いちばん上はない。
タモリ ちょっとさがった
斜面に、お墓がありますよね。
糸井 なるほど。
自分が骨を埋めるとしても、
てっぺんに埋めないもんな。
中沢 てっぺんはまずいんじゃないですか。
ゴルゴダの丘とか、よくないですよ。
あれは後世のことを考えたキャンペーンです。
糸井 うん。目立ちたがり屋だよねぇ?


(明日に、つづきます)

2005-10-03-MON

(C)Hobo Nikkan Itoi Shinbun