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| ほぼ日 |
ところで先生、どんな世界にも
「変りダネ」って、いると思うんです。
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| 仲谷 |
いますね。
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| ほぼ日 |
そこでこんどは、サメ界の「変わり者」というか、
おもしろそうなサメを
いくつか、教えていただきたいんですが。
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| 仲谷 |
そういうことなら
まずはメガマウスザメでしょうね。 |
ネコ・パブリッシング『世界サメ図鑑』より
※クリックすると大きくなります。
和名：メガマウスザメ
目 ：ネズミザメ目
科 ：メガマウスザメ科
英名：Megamouth shark
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| ほぼ日 |
あ、メガマウスだ！ 知ってます！
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| 仲谷 |
その名の通り、大きな口が特徴のサメですが、
ハワイのオアフ島沖で
はじめて発見されたのが、１９７６年のこと。
つまり、われわれ人類に見つかってから
３０数年しか経ってないんです。 |
８４年、カリフォルニア捕らえられた２例目のメガマウス。口がデカイ！
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| ほぼ日 |
サメ界のニューフェイスというわけですね。
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| 仲谷 |
それも、全世界でまだ４０例ちょっと。
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| ほぼ日 |
ええと、３４年で４０数例ということは‥‥
平均すると１年に１匹くらいしか
見つかっていないサメ、ということですか。
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| 仲谷 |
そうなりますね。
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| ほぼ日 |
この「メガマウスザメの発見」というのは、
サメ界にとって、どれくらいの衝撃だったんですか？
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| 仲谷 |
２０世紀最大のニュースです。
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| ほぼ日 |
それほどまでに！
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| 仲谷 |
だって、こんな、全長５メートルを超す巨大ザメが
すぐ目の前の海にいたなんて
２０世紀を半分以上も過ぎるまで、
だーれも、知らなかったわけですから。
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| ほぼ日 |
そうですよね‥‥。
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| 仲谷 |
だから、このメガマウスザメについては
わかっていないことがたくさんあるんですけど、
基本的な特徴を挙げてみますと‥‥。
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| ほぼ日 |
お願いします。
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| 仲谷 |
まず、とても大きな口を持っています。
ごらんのように。
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| ほぼ日 |
メガマウスという名の所以ですね。
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| 仲谷 |
５メートルを超える巨体で、からだはぶよぶよ。
筋肉にしまりがありません。
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| ほぼ日 |
はい。
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| 仲谷 |
さっきのジンベエザメやウバザメと同じく、
主食はプランクトン。
昼間は水深１８０メートルくらいのところに
いるんですが、
夜になると、海面から１５〜２０メートルまで、
浮上してくるんです。
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| ほぼ日 |
はぁ、はぁ。
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| 仲谷 |
その他、生殖方法、妊娠期間、子供を産む数、
子どもの大きさ、寿命など、いっさい不明。
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| ほぼ日 |
本当にナゾだらけですね。
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| 仲谷 |
だからそのナゾを解いてみたくなるでしょ？
そこで、メガマウスの「エサ」と
「食事の方法」を、調べてみたんですよ。
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| ほぼ日 |
へぇ。
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| 仲谷 |
三重で獲れたメガマウスが
鳥羽水族館から北海道大学に寄贈されていたので、
その標本を調べました。
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| ほぼ日 |
どのくらいの大きさだったんですか？
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| 仲谷 |
全長で５.５メートルありました。
大きすぎてまともに解剖ができないから
巨体をプールに浮かべて
５〜６人の学生といっしょになって
汗だくで調べたんです。
初冬だったんで、
ホントは、すごく寒かったんですけどね。
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| ほぼ日 |
そりゃあ、たいへんでしたね。
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| 仲谷 |
でも、メチャクチャおもしろいことがわかった。
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| ほぼ日 |
え、何ですか？
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| 仲谷 |
メガマウスザメは
何と、ヒゲクジラのような食べかたをするんです。
つまり、食事のときに
「ゴム風船」みたいにプクーっとふくらむ。
こんなサメ、見たことも聞いたこともなかったな。
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| ほぼ日 |
じゃ、新発見というわけですか？
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| 仲谷 |
そう。すぐに論文にして
イギリスの雑誌に発表したんですけど、
『ネイチャー』にも紹介されてね。
一般の人にも興味ある結果だったんでしょう。
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| ほぼ日 |
ほう、ほう。
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| 仲谷 |
だから、メガマウスザメが
「実際にエサを食べているシーン」を
なんとか見てみたいんだけど‥‥。
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| ほぼ日 |
でも先生は、
この、たいへんめずらしいメガマウスザメを
食べたことがあるとか。逆に。
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| 仲谷 |
あります。
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| ほぼ日 |
お味のほどは‥‥。
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| 仲谷 |
まずかったです。
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| ほぼ日 |
あの、お聞きしたいことは山ほどあるんですけど、
まずは、どのような経緯で、
そんな貴重なサメを食べることになったんですか？
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| 仲谷 |
１９９４年１１月、メガマウスの「メス」が、
福岡・博多湾に打ち上がったんです。
第７例目のメガマウスだったんですが、
メスが見つかったのは、世界ではじめてでね。
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| ほぼ日 |
ええ、ええ。
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| 仲谷 |
ぼくら、すぐに国際的な調査チームを組んで
いろいろ調べたんだけど‥‥
そのときのあまった肉を、ちょっとね。
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| ほぼ日 |
それ‥‥どうやって食べたんですか？
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| 仲谷 |
プロの料理人に
「てんぷら・ムニエル・唐揚げ」に
調理してもらったんですけど。
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| ほぼ日 |
ええ。
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| 仲谷 |
水っぽいわ、肉にしまりはないわ、
味はしないわで、もう、ぜんぜんダメでしたね。
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| ほぼ日 |
ははー。
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| 仲谷 |
たしか写真が‥‥ああ、あったあった。
これがメガマウスの唐揚げです。 |
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| ほぼ日 |
見た目はふつうですね。あたりまえか。
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| 仲谷 |
でもこれが、ほんっとにまずかったの。
泊まっていたホテルのシェフに
調理してもらったから、腕はたしかなんですよ。
だからやっぱり、素材の問題だよな‥‥。
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| ほぼ日 |
わかりました。それでは先生、
次なるヘンなやつを、ご紹介ください。
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| 仲谷 |
ミツクリザメです。 |
ネコ・パブリッシング『世界サメ図鑑』より
※クリックすると大きくなります。
和名：ミツクリザメ
目 ：ネズミザメ目
科 ：ミツクリザメ科
英名：Goblin shark
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| ほぼ日 |
あ、以前、ＮＨＫの特番かなんかで
たまたま見ました！
幻のサメを追え‥‥みたいなやつ。
註‥‥ＮＨＫスペシャル『幻のサメを探せ』
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| 仲谷 |
あれには、ぼくも出てましたけど。
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| ほぼ日 |
あ‥‥ああ！
そういえば、出てらっしゃいました！
最後のほうに出てらっしゃいました！
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| 仲谷 |
ミツクリザメという和名は
明治時代、日本の動物学の指導的立場にあった
箕作佳吉（みつくり・かきち）さんに捧げられて
つけられたんですが‥‥。
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| ほぼ日 |
ええ。
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| 仲谷 |
英語でいうとゴブリンシャーク。
つまり「悪鬼ザメ」です。 |
ネコ・パブリッシング『世界サメ図鑑』より
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| ほぼ日 |
そんなに悪いやつなんでしょうか‥‥？
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| 仲谷 |
いや「ゴブリン」というのは
主にその姿からの、ネーミングでしょうね。
深海性のために、身体がブヨブヨしていて
陸に上げると変なピンク色に変色するし、
ようするに、見た目がおぞましいんですよ。
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| ほぼ日 |
ははぁ。
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| 仲谷 |
でも、いちばんギョッとするのは、
こいつのアゴが飛び出すところでしょう。
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| ほぼ日 |
なんか、すごいらしいですね。
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| 仲谷 |
うん、さっきのＮＨＫスペシャルで
撮影に成功したんだけど、
スライドがあったかな‥‥ああ、これこれ。
まずは、これがふだんの状態。 |
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| ほぼ日 |
ふつうですね。
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| 仲谷 |
ええ、この時点ではまだふつうです。
ここから、ガバーっといきますから、
ちょっと見ててください。
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| ほぼ日 |
は、はい。
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| 仲谷 |
いきますよ‥‥。 |
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| ほぼ日 |
わ。 |
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| ほぼ日 |
わわ！ |
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| ほぼ日 |
わわわっ！ |
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| ほぼ日 |
ええっ！？ |
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| ほぼ日 |
うわーっ！ |
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| ほぼ日 |
うわー‥‥。
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| 仲谷 |
おもしろいでしょ？
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| ほぼ日 |
最後、まったくの別人になってましたけど‥‥。
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| 仲谷 |
この間、０.２秒から０.３秒くらい。
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| ほぼ日 |
すごいスピードで、バクっといってるんですね。
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| 仲谷 |
ああやってエサを捕ってるんです。
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| ほぼ日 |
ははー‥‥。
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| 仲谷 |
天狗の鼻みたいに尖った頭の先っぽには
感度の高いセンサーがついているので、
ほとんど光の入らない深海で
エサを探したりすることができるみたいですね。
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| ほぼ日 |
なるほど。
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| 仲谷 |
まあ、このサメもめったに捕獲されないので、
まだまだ、未知な部分が多いんですけど。
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| ほぼ日 |
‥‥先生、サメって、おもしろいです！
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| 仲谷 |
こんな感じでよければ、他の変わったサメも
ザザーッと紹介していきましょうか。
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| ほぼ日 |
ぜひともお願いします！
＜つづきます＞ |
