バフンウニの嘆き。  Nageki Of Bahun-uni


和名 トリノアシ
ウミユリ目
科名 ゴカクウミユリ科
体長 20〜30cm
生息場所 水深100m以深
嘆きその22 トリノアシ

ほとんどのみなさま、はじめまして。
トリノアシです。
漢字まじりで書けば「鳥の足」。
「どういうこと? 動物のからだの一部が嘆く?」
そう思われた方にはシンプルな解説が必要でしょう。
わたしは、トリノアシという生き物です。
トリノアシは、わたしの「名前」なんです。
ウニやヒトデの仲間でして、
海の深いところでプランクトンとか食べてます。
‥‥実はわたし、
以前に一度、こちらで嘆かせてもらおうと、
海の深いところからやってきたことがあります。
(長旅でした)
ようやくたどり着き、順番を待っていましたら、
前のかたの嘆きが、もれ聞こえてきました。
嘆いていたのはブタクサさんです。
あのときブタクサさんがおっしゃっていたこと、
忘れもしません‥‥。
「深海に人知れず棲んでいて、
 ほとんど誰もその名前を口にしないような
 変わった生き物をわざわざ引っ張り出してきて、
 自分の名前について嘆かせるなんていうのは、
 ちょっと違うでしょう」
‥‥おっしゃる通りだと思いました。
しょせんわたしはマイナーな生き物。
そんなわたしが嘆いたところで、
みなさんの共感を得られるはずもなく‥‥。
嘆くのをあきらめたわたしは
予約カードを受付のバフンウニさんに返却して、
ゆらゆらと深海に帰っていきました。
(長旅でした)
しかし‥‥しかしです。
それからずーーーっと、
こころのモヤモヤがおさまりませんでした。
マイナーな生き物にだって、
くやしい気持ちはあるんです。
モヤモヤ‥‥モヤモヤ‥‥モヤモヤ!
やっぱり、嘆きたい!
そんなわけで、
わたしは気を取り直し、再びここにやってきました。
(長旅でした)
マイナーですが、嘆かせてください!!
トリノアシって!
もう一度。
ト・リ・ノ・ア・シってっ!!
あまりにも、てきとうじゃないですか?
手抜きにもほどがありませんか?
こんなにいい加減な名前をつけられて、
誰にも知られず海の底でひっそり生きる悲しさよ!
やりきれません、せつないですよ‥‥。
だいたい、トリノアシっていうけどですね、
いったい何鳥の足ですか?!
せめて、そこははっきりしてくださいよ!
何の足だ、わたしは?!
ああ‥‥すっきりしない、モヤモヤがとまらない‥‥。
すみませーん、係の人!
モヤモヤの量をいつもより多めにしてもらえませんか?
その、わたしの右側で動いているモヤモヤを。
そうそう、はい、そんな感じで。
‥‥ひととおり嘆いたので帰りますけどね、
やっぱり、モヤモヤしたままだなぁ。
ああ、また長旅かあ‥‥モヤモヤ、モヤモヤ‥‥。

(つぎなる嘆きへつづく)

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2010-06-01-TUE