NAGATA
怪録テレコマン!
hiromixの次に、
永田ソフトの時代が来るか来ないか?!

第42回 テレコマン、宇宙へ行く 〜その6〜

どの取材でもそうなのですが、
話しているうちに、取材相手の方がしだいにうち解けて、
取材上の役割を超えて個人的な言葉を
発し始めることがあります。

そういう取材が僕は非常に好きなのですが、
今回の取材はまさにそういう感じでした。

宇宙開発事業団の職員として
完璧な応対をしてくださっていた中川さんが、
取材の終わりに口にした個人の言葉を最後にお届けして、
この長いレポートの終わりにしたいと思います。
それでは、どうぞ。

永田 でもあれですね、こういう、宇宙の話って、
わくわくする人と、
まったくピンとこない人がいますよね。
僕はもう、少なくとも男の子であれば、
必ず宇宙って憧れるもんなんだろうとか
思ってたんですけど、まわりの人と話してると、
意外にそうでもない人も多いみたいで。
中川 それはもう、
人間らしい心を忘れてるんじゃないですかねえ。
永田 (笑)
中川 本来はやっぱり憧れるもんだと思いますよ、
宇宙とか、星空とか。
永田 うんうんうん。
中川 それはきっと、ずっと昔に生命の源が
地球の外からやって来て、それをたぶん
体が覚えてるんじゃないかと私は思いますけど。
永田 あああ、なるほど。
中川 体というか、DNAが覚えていて、
それで空を見上げると「美しい」と思ったり、
「宇宙に行ってみたい」と思ったり
するんじゃないかと私は思います。
ふるさとに憧れるような気持ちと
似たような気持ちを、私は感じますけれど。
永田 わかります。
わかりますと言うと変ですけれど、
わかります(笑)。
中川 (笑)
永田 う〜ん、外に出て、
外から地球を見たらもう、どうだろうって、
ホントどうなんだろうなって思いますよね。
帰ってきたあとどうなっちゃうんだろうって、
逆に心配になるくらい(笑)。
そういえば、なんかよく、
帰ってきたら厭世的になってしまうとか、
宗教に入ってしまうとか、聞きますけれど。
中川 初期の宇宙飛行のころに
そういうことはあったみたいですね。
それこそアポロのころですけれど、
地上に帰ってきたあと、
宗教家になったりだとか、画家になったりだとか。
最近は、そういうことはありません。
NASAの宇宙飛行士だけでも
160人くらいいるわけですし、
そんなに人生の一大イベントっていうか、
そういう意識は薄れてるみたいですね。
飛行機のパイロットと似たような、
普通の仕事になりつつあるようです。
永田 高度な仕事というか。
中川 そうですね。最近の若い宇宙飛行士に接してても、
普通の職員というか、
エンジニアという感じがします。
その意味では、だんだん宇宙飛行士も
一般の人になってきているような気がします。
少なくとも宗教家になるようなことではないと
私は思いますけれど。
永田 なるほど。
中川 宇宙へ出たといっても、
ちょっとドアを開けて外に出たくらいですから。
その向こうには深淵な宇宙が広がってますから。
きっと軌道上に出ても、そこが終わりじゃなくて、
「もっと遠くに行ってみたい」と
思うんじゃないですかね、きっと。
永田 ああ、なるほど。
中川 いまはその第一段階というか。
違う例で言うと、いま我々が宇宙に出ているのは、
温暖な海で誕生し、育まれた生命が、
初めて陸に上がったときと同じだと思うんですよ。
地上のほうが環境としては厳しいわけですけど、
やはり、海の中だけでは物足りない種が、
おそらく、一歩地上に上がってみたんでしょうね。
それはホント大冒険だったんですけど、
あとに続くものたちは環境に適応して
どんどん進化したんだと思うんです。
我々が地球から、大気圏外に一歩進んだことは、
それと、似たような段階なんだと思うんです。
永田 そうかもしれません。
中川 …原始の水棲生物が海から陸に上がって、
ヒレが四足に進化し、
四足歩行の両生類、は虫類、ほ乳類へと
進化していったわけですよね。
四足だと、当然、立って歩くことはできません。
だから、そのころって、やっぱり、
地面しか見てなかったと思うんですよ。
それが、前足で道具を使うようになり、
だんだん進化して、二足歩行できるようになった。
そのとき、地面に立って初めて、
生物は空を見上げたんだと思うんです。
初めて、地上よりも外に、
もっと広がる空間があるんだと
感じたんじゃないかな、と。
永田 …いいですねえ。
中川 ですから、まあ、
いま宇宙に行ったとしてもほんの入り口で、
今後もっと、深淵な宇宙に、
人間は進出していくんじゃないかと思います。
永田 はー、そうですねえ。
いや、ありがとうございます。
いろいろうっとりしちゃいました。
中川 (笑)
永田 中川さんは、自分で行きたいと思ったことは?
中川 ぜひ行きたいですね。
永田 ああ(笑)。
中川 ちなみに、宇宙開発事業団の職員で
応募している人間もけっこういるんですよ。
永田 あ、そうなんですか。
中川 もちろん事業団だからといって、
選考のときにメリットがあるわけでは
まったくないんですけどね。
永田 普通に、いち応募者として。
中川 はい。やっぱり宇宙開発事業団に入ってる人は、
宇宙に関心が高い場合が多いので(笑)。
永田 あははははは。
ちなみに、中川さんは応募した経験は?
中川 私は……あります。
永田 そうですか。いや、うれしいです、それ(笑)。
中川 あははははは。

ちょっとした躊躇のあとに、
「あります」と口にした中川さんは、
強さと照れくささの入り交じった独特な表情をしていて、
瞬間に根拠なく共感した僕は
なぜだか少し感動を覚えたほどでした。

最後の質問は、反則でした。
でも、答えてくださって、ありがとう。

うっとりするような話をしながら、
気がつくと2時間が過ぎていました。

中川さんと広報の方にお礼を言って席を立ち、
外に出るとやはり雲ひとつない晴天です。
正門までの長い道をうっとりしながら歩き、
僕は筑波宇宙センターを後にします。

交通整理するおじさんに会釈し、
道路を渡ってバス停に立つと、
眼前には広々と筑波宇宙センター。

バスを待ちながら僕は
はくしょん、とくしゃみをひとつ。


Love & Space!!


2002/02 筑波宇宙センター

2002-03-13-WED

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