NAGATA
怪録テレコマン!
hiromixの次に、
永田ソフトの時代が来るか来ないか?!

第18回 
江口寿史さんの家に和田ラヂヲさんとおじゃまする 
 〜その2〜


漫画家の江口寿史さんと和田ラヂヲさんが
のんびり語らっています。
僕は当たり前のようにテレコを回しています。

さて、今回はギャグ漫画家どうしの
苦労話のようなものについて。


永田 江口さんと和田さんは、
どういう関係で飲み友だちに?
和田 最初は集英社のパーティーで。
江口 ラヂヲがまえに
『スカの群れ』っていうのを描いてて、
そのときにオレがすごくおもしろいなあと思ってて、
「ちょっとコイツに会わせて」って編集に言って、
紹介してもらって。
もうけっこうまえだよね。
和田 デビューしてすぐだったから。
江口 もうだいぶ経ったね、デビューして。
いつの間にか。もう大御所じゃん(笑)。
和田 どこがじゃ(笑)。
江口 だってもう10年? すごいじゃん。
ギャグで10年って言ったらすごいよ。
ギャグ5年説っていうのがあるからね。
和田 定説ですからね。
江口 でも最近の人は昔みたいな
感じじゃないけどね。
和田 何がですか?
江口 いや、俺たちのころのギャグマンガっていうと、
なんていうか……身を削ってたというか。
田村(信)さんとか鴨川(つばめ)さんとかさ。
和田 ああ、本当に昔は小説家に近い
ノリがありましたよね、雰囲気が。
永田 『マカロニ』とか、いまにして思うと、
そうやって描いてたのかなって
いうのはありますね。
江口 まあ、鴨川さんとかは特別だよね。
和田 無頼派みたいな感じですよね。
永田 絵にだんだん精神状態が
反映されていったりして。
当時僕はその頃小学生だから、
そんな世界はわからないんだけど、なんか……。
和田 でもわかるもんね。
いまなら感じ取れるもんね。
永田 そういや江口さんも、原稿に詰まると
マンガに白いワニが
出てきたりしてましたね(笑)。
江口 オレのはまだわざとやってるところがあるんで。
ここらで気が狂ったフリでもするか、
みたいなのがあったんですけど(笑)。
やっぱりバランス感覚なんじゃないですかね。
和田 あと、いまはシステムも変わってきてますしね。
編集と作家の関係も
変わってきたじゃないですか。
永田 昔はどうだったんですか? 
和田 昔はやっぱり詰めたりしてたんでしょ?
江口 してたよ。
和田 最近そういうの聞かんもんな。
最近はバイク便の世界やもんな(笑)。
バイク便の人が詰めてるような。
よけい気になる(笑)。
永田 (笑)
江口 オレはいまだに詰められてるからな(笑)。
永田 江口さんはよく「江口が逃げた!」
みたいな話が(笑)。
江口 あれね、一回だけ本当に逃げたことある。
永田 あはははははは。
江口 一回しかないんですよ、本当は。
しょっちゅう逃げてるみたいな印象だけど(笑)
永田 読者のイメージでは。
江口 『ひばりくん』のときに
一回だけ本当に逃げたんだけど、
あとは逃げてない。
永田 和田さんは?
和田 オレはマジメにやってますよ。締切守って。
江口 どうしてもできないときってどうしてる? 
なんらかのモノを描いちゃう?
和田 うん。でもあれってやっぱりイカンですね。
中途半端なもんはあとで後悔する。
江口 ギャグはとくにね。
自家中毒になっちゃうから。
自分でわけわからなくなっちゃうからね、
おもしろいんだかおもしろくないんだか。
和田 でもそのときのほうが
おもしろかったりもするんだけどね。
江口 あ、そう? オレはやっぱり
自分がおもしろいと思ったときは、
けっこういい。
和田 週刊連載のノリってあるじゃないですか。
江口 ああ、あるね。
和田 あれにハマるとけっこういいですよ。
そこまで持っていくのがたいへんなんですけどね。
なんか鮫みたいに泳いでないと
死んでしまうみたいな。
江口 止まるとね。
週刊ペースでマンガを描くって
尋常じゃないもんね。
だからあれだけ身を削ってやってるんだよね。
どこかを犠牲にして。
すると何か出てくるんですよね。
体痛めつけて、疲れてくると
脳内麻薬が出てくるじゃないですか。
それで描いたときとかあるしね(笑)。
描いたあと忘れてることもありますし。
永田 そういうときのほうが
いいモノができてるんですか?
江口 う〜ん。まあ、自分がいいと思っても、
よくないこともあるんですけどね。
でもとりあえず自分でいいと思わないと
描けないんですよね。手が動かないんで。
永田 描いては消し描いては消し、っていうよりは
真っ白っていう感じ?
江口 真っ白。
和田 できるときはアッという間にできるもんね。
江口 そうそう。何でも作るものはそうだもんね。
和田 ひらめきだよな、一種の。
でもなんかありますよね? こう……。
江口 あ、あるある。なんか降りてくるみたいな。
和田 あれ不思議ですよ。
江口 あれ気持ちいいよね、来たら。
永田 なんか共通してますね、そういうところ。
和田 それはみんな同じじゃないかなあ。
どんなジャンルでも。


そうか、江口さんは1回しか逃げてなかったのか。
昔読んだマンガの作者に会うのって、
なんだか不思議ですね。
「そんなバカな!」っていう不思議さを
すごく感じてしまうのだけれど。
明日も続きますよ。

2000/07西荻窪

2000-09-01-FRI

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