ほぼ日が、ヘアメーキャップアーティストの
岡田いずみさんといっしょに、
肌とメイクと道具の
トータルビューティブランドをつくりました。
名前は、Shin;Kuu。シンクーと読みます。
大手化粧品メーカーを経て、
フリーランスとして活躍してきた岡田さんには、
「きれい」の知恵とアイデアがたくさんあります。
こんな化粧品があったら素敵じゃない? と
夢中で話していたら、いつの間にか、
ひとり、またひとり、メンバーが集まって、
ほぼ日らしい形でチームが立ち上がりました。
Shin;Kuuのことを知ってもらうには、
岡田さんを知ってもらうことが近道。
塗り重ねるのではなく、魅力を引き出すメイク。
五感にふれ、ごきげんになれるスキンケア。
Shin;Kuuで大切にしようと決めたこれらの姿勢へとつながる、
岡田さんが歩んできた道を、全5回でお届けします。
- ──
- ヘアメイクの仕事って、サロンもあれば、
映像に進むかたもいたり、さまざまです。
どんなふうに道を決めるんでしょう?
- 岡田
- きっかけはいろいろだと思うんですが、
私は実家が化粧品店だったということと、
花椿のようなアートな雑誌も好きだったし、
舞台での強烈なときめきにも出会っていたし。
ファッションも好きだったので、
パリコレのヘアメイクにも憧れていましたね。
- ──
- 化粧というものに、
いろんな場所で触れていらした。
- 岡田
- はじめはファッションをメインに
仕事をしたいと考えていましたが、
専門学校の頃、夏休みに帰省して、
母の店でアルバイトしてたんです。
そのときに、不思議なおばあちゃんに出会って。
- ──
- すごく気になります。
- 岡田
- そのおばあちゃん、
農作業のためのアイテムを身に着けたままで。
手ぬぐいを巻いて、麦わら帽子を深くかぶって、
腰をかがめてお店に入ってきたんです。
まるで低空飛行するように。
- ──
- 顔がまったく見えない。
- 岡田
- 日焼け止めをサッと手に取って、
お金をすっと出して。
ちょうど母が戻ってきて、
「ありがとうございました」と、
二人でお見送りをしたんですけれど、
早足にお帰りになられて。
その不思議な光景が忘れられなくて。
- ──
- ええ。
- 岡田
- 冬休みにもまた帰省して、
母の店に行ったんです。
そうしたら、母が、
「いずみちゃん、覚えてる?」って、
となりの女性を紹介してくれて。
- ──
- それって、ひょっとして‥‥。
- 岡田
- そう、あの低空飛行のおばあちゃんです。
白い小花柄のワンピースを着て、
薄紫の布の靴をはいたおばあちゃんが、
白髪をうっすら紫に染めた姿で、
ふわああって笑っていたんです。
- ──
- 秋に何があったんでしょう。
- 岡田
- のちのち分かったことなんですけど、
そのかたは、色が白いのがひそかに自慢だったのに、
農家に嫁いで、長年の農作業で
日焼けしてしまったそうなんです。
ずっとあきらめていたけれど、やっぱり、
どうにかしたいと思い立って、
夏に日焼け止めを買いにいらしたんです。
- ──
- お母様のお店を頼りにして。
- 岡田
- 母はそのかたが、奥のエステルームを
興味深く見ていらしたのを察して、声をかけたら、
エステも受けたそうなんです。
エステのあとは、ご自分の肌を、
こうね(大事にほほを包む仕草で)、
ずっと触っていたんですって。
- ──
- ふかふかになって、
うれしかったんですね。
- 岡田
- それからエステに通ってくださるようになって、
冬になる頃には、顔色もぱっと明るくなって。
私、今まで素敵な笑顔はたくさん見てきているけれど、
あんなきれいな笑顔は初めてでした。
- ──
- 肌だけじゃなく、心まで変わった。
- 岡田
- 素直な女心をもって願えば、
何歳からでも美しくなれるということを
教えてくれたひとなんです。
だから、人を美しくする力がついたらいつか、
あのおばあちゃんみたいな人たちの力になれる
ヘアメイクになろうって、
あのとき心に決めたんです。
- ──
- そこから、サブファ(※)を経て、資生堂に入社されて。
- ※美容師の資格保有者を対象とした、資生堂のプロのヘアメイク養成学校。
(続きます)
2021-02-12-FRI