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#13 タイルと春の文化祭

この漫画のもとになった投稿

高校生でクラス替えしたばかりなのに
なぜか文化祭準備。

まだクラスの人とはぎこちない中、
少しこわごわながらも自分から話しかけ、
受け入れられなかったら
それでも別に平気だし‥‥と
ぼちぼちと
自分の趣味や本性をあらわしていく
図々しさもあり。

あたりさわりのない会話に終わるも、
明日はさっきの子たちと
もう少し楽しくおしゃべりできるかなと
怯えやあきらめよりは
期待の方を少し多く胸にもって、
下校の途に着いた。

ふと我に帰り、ああ、わたしもうすぐ50じゃん。
また中身は大人、見た目は高校生の夢だ。

目を覚まして横に寝ている
学校嫌いで内弁慶で、
友だちが欲しいのに
人とどうやってなかよくしていいのか
わからないらしい次男に、
きっと大丈夫だよ、
でも50年の中で少しずつ
身につけたこの図太さを、
今のきみに少しわけてあげたいよ、と
寝顔を見ながら切に思った。

(じま/いつかの「今日の夢」より)

 

 

通勤時、地下鉄の改札から続く地下通路。

都内でもおそらくかなり長い、
地上に出ればオフィスビルばかりの地区。

周囲の人々より
1段も2段も歩くスピードの遅い、親子連れ。

幼稚園にあがったばかりくらいの男の子が
右手を母親に引かれている。

彼の左手は、
バリアフリー目的で作られたスロープと
ふつうの通路を分ける
「高さ1mくらいのタイルを貼った壁」
に触れている。

周りよりは遅く、
でも、母親に手を引かれるままのペースで
歩かされながら、
タイルの継ぎ目の感触を楽しむのか、
その壁に触れながら歩いている。

さて、バリアフリーのスロープが終わる。
つまり、その壁がなくなる。

と、その男の子は
振り返って「バイバイ」と手を振った。

(おばちゃん、なぜかうれしい/いつかの「今日の気になるあいつ」より)

2023-02-04-SAT

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    2005年から連載を開始した読者投稿コンテンツです。2022年時点ですでに17年以上、「今日のコドモ」「今日のダンナ」「今日のじーばー」「今日の気になるあいつ」….などの20以上のカテゴリから、日替わりで毎日欠かさず3ネタを更新してきました。アーカイブを残していないため、その日のネタは、その日にしか読めません。2016年には、過去の傑作から選りすぐって書籍化もされました。ほぼ日に来たら、まずはここからという読者も多い、大人気のコーナーです。今日の「今日のコドモ」は、こちらからどうぞ。

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    今日マチ子

    漫画家。1P漫画ブログ「今日マチ子のセンネン画報」の書籍化が話題となる。文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に4度選出。戦争を描いた『cocoon』は「マームとジプシー」によって舞台化。2014年に手塚治虫文化賞新生賞、2015年に日本漫画家協会賞大賞カーツーン部門を受賞。『みつあみの神様』は短編アニメ化され海外で23部門賞受賞。コロナ禍の日常を絵日記のように描いた近著『Distance わたしの#stayhome日記』が、2022年1月『報道ステーション』にて特集された。

  • 漫画:今日マチ子

    編集:奥野武範(ほぼ日)

    デザイン:杉本奈穂(ほぼ日)

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