鎌倉にあるケーキ屋さん、
POMPON CAKES(ポンポンケークス)と、
ヨシタケシンスケさんがコラボした、
とくべつなクッキー缶ができました。
「こっそりがまんした日のごほうび」を
コンセプトに、新作のクッキーや
人気の定番クッキー、
そしてちいさな紙の「おまけ」もついて、
「ごほうび感」のある詰め合わせになったんです。
生活のたのしみ展 2026」で発売する前に、
この企画に携わった4人が集まって、
これまでのことを振り返りました。
それぞれの仕事観も垣間見える座談会、
全4回でお届けします。

>立道 嶺央さんプロフィール

立道 嶺央(たてみち れお)

POMPONCAKES(ポンポンケークス)代表。
神奈川県生まれ。
2011年に鎌倉でPOMPONCAKESを立ち上げ、
カーゴバイク(三輪自転車)にてケーキの移動販売を開始。
現在は鎌倉で3店舗を運営。

webサイト:POMPONCAKES

>ヨシタケシンスケさん プロフィール

ヨシタケシンスケ

イラストレーター、絵本作家。
神奈川県生まれ。
筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。
日常の一コマを切り取ったスケッチ集や、
児童書の挿絵、装画、
イラストエッセイなど、幅広く作品を発表している。
これまでに、『りんごかもしれない』
『もう ぬげない』(ブロンズ新社)、
『りゆうがあります』『なつみはなんにでもなれる』
『おしっこちょっぴりもれたろう』(PHP研究所)、
『あつかったら ぬげばいい』(白泉社)、
『あんなに あんなに』(ポプラ社)の7作品が
「MOE絵本屋さん大賞第1位」を受賞している。
『つまんない つまんない』(白泉社)の
英語版『The Boring Book』で、2019年の
「ニューヨーク・タイムズ最優秀絵本賞」を受賞。

初の大規模展覧会、
ヨシタケシンスケ展かもしれない」を全国で開催中。

webサイト:ヨシタケシンスケ公式web

>吉竹 祐子さんプロフィール

吉竹 祐子(よしたけ ゆうこ)

デザイナー。
兵庫県生まれ・女子美術大学卒業。
株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメントにて
アーティストのオフィシャルサイトの
企画、制作、ディレクションに携わる。
2006年、長男出産を機に退社。
フリーランスのデザイナーとして活動。現在に至る。

>石川 智隆さんプロフィール

石川 智隆(いしかわ ともたか)

TOP Factory株式会社 代表取締役。
神奈川県藤沢に工場を構え、デザイン、
撮影、印刷、加工までを一貫して行っている。
自社でデザインした漢字の日めくりカレンダー「Koyomi」にて、
2022年度 グッドデザイン賞、
2023年度 OMOTENASHI Selection金賞、
2026年度 iF DESIGN AWARDを受賞。

webサイト:TOP Factory株式会社
(※2025年10月より東湘印版からTOP Factoryへ社名変更)

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第2回 アイデアが生まれるまで

──
まずは、これまでのことについて、
お話をうかがえればと思います。
なんだかトントンと順調に進んだ印象があるんです。
祐子
順調でしたね。
──
実は最初に、この企画が持ち上がって、
ヨシタケさんのオフィスにうかがう前に、
レオさんと私たちがこのお店に集まって、
ちょっとした作戦会議をしたんですよね。
覚えてます?
レオ
あんまり覚えてないですね。
一同
(笑)
石川
いやいや、そこは覚えてるって言いましょうよ(笑)。
ヨシタケ
きょとんとしてる(笑)。

──
もっとさかのぼると、2022年に、
ほぼ日が「POMPON CAKES」さんと
一緒にクッキーボックスを作ったんです。
お菓子チーム、つまり私たちは、もともと
POMPONさんのケーキの大ファンだったので。
そのときレオさんから
「いつかヨシタケさんと何かできたらうれしいです」
というお話があったんです。
「ヨシタケさんがご夫婦でお店に来てくださっていて、
いつかご一緒できるといいなと思うんですけど、
ほぼ日さんならお声がけできると思うんです‥‥」って。
レオ
なんかぼく、めっちゃせこい感じじゃないですか(笑)。
石川
ここ、ぜひ載せてほしいですねえ。
やっぱりね、いつもレオさんは
良い部分が出過ぎてるから(笑)。

──
それで、今年も「生活のたのしみ展」を
開催するにあたって、
私たちは「焼菓子の店」をやることになり、
真っ先にレオさんにお声がけしたんですね。
そこにプラスして、「わぁ!」っていう
要素がほしいね、ということで、
ヨシタケさんとも何か‥‥というお話をしたら、
レオさんも「ぜひ!」と。
レオ
それはそうですよ。
──
そのときはレスポンスも速かったです。
いつもはかなり‥‥(笑)。
石川
遅いですよね(笑)。
ぼくも遅いほうだけど、レオさんは‥‥。
レオ
公開処刑じゃないですか(笑)。
──
それで、私たちからヨシタケさんに
ご連絡した方がいいか、レオさんからしていただくか、
どちらがいいですかね、ということを訊いたら、
「いやもう、ぼくからは言えません。憧れの方なので」って。
レオ
それはもう、そうですよ。
──
それで私たちからヨシタケさんにご連絡したところ、
窓口になってくださっている祐子さんから、
快くお返事をいただいたんです。
祐子
私たち、めちゃくちゃうれしかったんですよ。
ヨシタケ
それこそPOMPONさんも好きだし、
ほぼ日さんも好きだし。
好きな人同士の案件がきた、と思って
「ぜひぜひ!」って。
そのころ、ちょっとしたストレスを
抱えていたんですけど、
こういう、いい話もあるじゃないかということで、
世の中捨てたもんじゃないなと思えました。
我々はやっててよかったんだという、
勇気をもらえたメールだったんです。
石川
いいですねえ。心のオアシスを見つけたような。
ヨシタケ
だからもう二つ返事で、
「やらいでか!」って。
祐子
もちろん、レオさん、ほぼ日さん、
どちらからご連絡がきてても、
その経由は全く問題なく、本当にうれしかったです。

──
2025年の11月末にメールで
お話させていただいたんですが、
12月頭には早速ヨシタケさんのお宅へ
おうかがいすることになりました。
祐子
私たちレスポンスは速いからね。
一同
(笑)
レオ
何だろう、この感じ(笑)。

──
ヨシタケさんたちも、POMPONさんの
お客さんだったんですよね。
ヨシタケ
はい。もともとはイチお客さんとして通ってました。
だからご一緒することになって、逆に緊張しましたね。
ぼくは絵は描けるんですけど、
お菓子に詳しいわけでもないですから、
POMPONさんとこちらの、お互いのいいところを
出し合うにはどうすればいいかな‥‥と。
ただ、変に無理をして、普段の良さが出ないような
形にはしたくないなあと思いました。
──
集まって話し合った後、ヨシタケさんが
「ぼくのほうで少し考えてみます」とおっしゃって、
その後、12月末にラフを見せてくださったんです。
ヨシタケ
そのラフに至るまでの、
いろいろなアイデアを考えた紙も一応持ってきました。
案件によっては、もっとたくさんスケッチを
描くときもあるんですけど、
今回の案件に関してはわりとすぐ決まったので、
少ないほうですね。
ぼくの描くものって色が薄いので、
ちょっと濃くしたバージョンも用意しました。

──
ああ、ありがとうございます。
石川
ヨシタケさんは、こんなにちっちゃく
絵を描かれてるんですか。
ヨシタケ
はい。これが原画なので。
もともと、絵と字が小さいんです。
石川
えーっ、原画!
めちゃくちゃ貴重じゃないですか。
ヨシタケ
これはペンで描いてるんですけど、
細かい字を書くときはシャーペンです。
たまに、自分でも読めない。
石川
描いてるご自身が読めない(笑)。
このサイズで描かれているんだと思うと、
ちょっとびっくりしました。
──
本当に、ヨシタケさんには
いろんなアイデアをいただきました。
ヨシタケ
いろいろと考える中で、
クッキーを小さな缶に入れるという方法も
ありますよね、という話があって、
ぼくもそういうお菓子の缶が好きなので、
食べ終わった後も、何かを入れるために
使えるものがいいかなと思ったんです。
──
最終的なラフが届いて、
「こっそりがまんした日のごほうび」
というキーワードが、
ものすごくよかったなと思うんですけど、
どういうふうに考えてくださったんですか。

ヨシタケ
「生活のたのしみ展」に来てくださるのって、
「大人」の方が多いと思うんです。
お仕事が忙しい方も、
子育て中の方もいらっしゃるでしょうし、
日々、思った通りにいかないことが
きっとありますよね。
そういう方たちが買いものに来ると考えたら、
何か、ちっちゃいけど、
「あるとうれしいもの」にしたいと思って、
「ごほうび」というキーワードを思いついたんです。
「携帯用ごほうび」とか「即効性ごほうび」とか
タイトルもたくさん考えて‥‥。

石川
ぼく、これ好きですよ。
「不足しがちなごほうび」。
確かに不足しがちだなぁって。
──
(笑)
ヨシタケ
何のごほうびなんだろう、と考えたときに、
大人って、こっそりがまんすることが
多いだろうなあと思ったんです。
ぼくは根が暗いので、ポジティブな人というよりは、
嫌なことがあっても、周りの人に気をつかって、
それをあんまり言わない人、そういう人が好きなので、
「外に出せないがまん」に寄り添える商品があったら、
自分だったらうれしいなと思ったんです。
──
ああ。
ヨシタケ
「言い返さなかった自分、えらい」みたいな。
場を荒立てないために、言いたいことを
自分の中にしまっちゃいがちな人に対して、
「わかってるよ。グッジョブ!」
みたいなものになるといいなあと思いまして、
「こっそりがまんした日のごほうび」っていう。
──
いいですね。そのタイトルだけで、
いろいろな想像ができます。
ヨシタケ
「センスのいい人がセンスのいい人に贈る用」
という言葉も最初に考えたんですけど、
それはちょっとトゲがあるなと思って。

石川
センスのいい人‥‥
めちゃくちゃハードル高いじゃないですか(笑)
ヨシタケ
ですよね(笑)。
ちょっといやらしいなと自分でも思いました。
ただそういう一番トゲがあるアイデアをまず出して、
そのトゲを徐々に丸くしていく作業が
けっこう重要なんですね。
最初から「いいでしょう」じゃなく、
「うーん、悪くはないね」みたいなやり取りをしながら。
そうすると、いい感じにエッジのあるものが
できるんじゃないかと思うんです。
──
たしかに。最初から角のないものだと、
発想がそれ以上には広がらないかもしれないですね。
祐子
なんで鍵穴のついたこの子になったんだっけ?

ヨシタケ
「ごほうびを渡してくれる誰か」を考えたとき、
人間じゃない方がいいなとまず思ったんですね。
人って何かの派閥に属してることが多いですし。
だから妖精のような存在が、
ちゃんと「人に言えないがまん」を
見てくれているといいなと思ったんです。
後は単純に、ただポコッと穴が空いているのは
ちょっと怖いかなと思って、鍵穴にしました。
祐子
鍵穴の意味は特に深くはないんだ。
ヨシタケ
そう。結果的にそうなっただけで。
昔の鎧には、鍵穴のような形を
しているものがあるんですよね。
それで、ごほうびを渡しに行くときに、
素性がわからないように、これをかぶるんです。
カバンの中にはクッキー缶がいっぱい入っていて。
お子さんを働かせるわけにはいかないから、
子どもというわけでもない。
何かわからない存在が、黙ってこう、
クッキー缶を押し付けて帰って行く、みたいな。
──
押し付ける(笑)。
祐子
「ふんっ」って。
ヨシタケ
そう。あなたががまんすることで、
みんなが荒れずに済んだということは、
あなたの功績なんだよっていうメッセージが
実は込められている。
「今日はよくがんばったね。
せめてこのおいしいクッキーでも食べて
パワーをつけてください」って。
20まで減ってしまった体力が
100まで回復はしなくても、
35にはなるかな‥‥くらいのことですけど。
石川
西洋の騎士みたいに見えますよね。
ちっちゃいのにがんばってて、
勇気づけられるというか。
ヨシタケ
ああ、よかった。
そういうふうに読み取っていただけて。
その通り、気高い職業なんです。

──
レオさんは、どう思われました?
レオ
こちらも最初にイメージだけを
ヨシタケさんに伝えていたので、
どういうものが上がってくるのかも
全くわからなかったんですが、
この「こっそりがまんした日のごほうび」を見て、
これから作るクッキーの中身が想像できました。
それから、ヨシタケさんの作品の中に、
「POMPON CAKES」と書かれてあったんで、
それはもう、すごくうれしかったですね。
──
にやけちゃいますよね。
ヨシタケ
ぼくがやらなきゃいけなかったのは、
絵を見ただけで、
「何かストーリーや設定があるんだろうな」って
感じてもらうことだなと思いました。
石川
すばらしいですね。
レオ
ちょっと話がそれちゃうかもしれませんが、
ぼくは、お菓子というわかりやすいものを
日々作っている中で、考える余白みたいなものが
大事だなと思っているんです。
世の中には、わかりやすいものがあふれていて、
説明しすぎていたり、逆に「かわいい」という
感覚的なものだったり‥‥
それの最たるものがお菓子なんですよね。
ただ、ぼくは、「かわいい」の向こう側に
何かしらのストーリーを感じ取ってもらうことが、
お店や会社のミッションだと思っているんです。
──
ああ。
レオ
ヨシタケさんの作品って、
哲学的ですし、考える余白がたくさんありますよね。
ぱっと見ただけですぐにわからなくて、
大人も子どもも何かを考えられるというのが、
魅力的な部分だと思います。
「かわいい」って手に取ったけど、
「がまんした日のごほうび? 何だろう?」って、
立ち止まって考えられるというか。
──
一瞬、考える時間がありますよね。
レオ
その余白みたいなものを
ぼく自身がすごく欲しているんですよ。
ヨシタケさんの作品にはそういう部分があって、
そこに、お菓子というわかりやすいものを
上手に組み合わせて、何かを伝えたいという思いは、
ほぼ日さんもヨシタケさんたちも石川さんも
ぼくらも共通して持っていたように思うんです。
祐子
最初にレオさんがヨシタケに
「ヨシタケさんに頼む意味」みたいなことを
お話されたときに、かわいいだけじゃない何か、
ということをおっしゃっていましたよね。
ヨシタケ
そうでしたね。ただの入れものに
何かのストーリーがほしい。
ほしいっていうか、「あるはず」だっていう。
そういうところを期待してくれたのが
うれしかったです。

(つづきます。次回は、紙の「おまけ」について)

文・藤田 亜紗美

2026-05-23-SAT

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  • こんなクッキーが入っています

    ●苺のジャムサンドクッキー

    発酵バター香るリッチなクッキーに、
    自家製ジャムをサンド。
    ジャムには、POMPONのケーキでもおなじみの
    「はやしふぁーむ」さんの土耕栽培の苺を
    ぜいたくに使用した、ごほうびクッキーです。

    ●アーモンドクッキー

    バターとアーモンドの甘さが引き立つシンプルな味わい。
    香ばしさとカリカリとした食感が口の中で広がります。

    ●ココアのアーモンドクッキー

    人気のアーモンドクッキーにココアパウダーをプラス。
    上品な味わいに焼き上げました。

    ●メープルナッツ

    香ばしくローストしたオーガニックナッツ
    (クルミ、カシューナッツ、アーモンド)に、
    メープルシュガーを丁寧にまとわせました。


    ~「生活のたのしみ展2026」 焼菓子パラダイスにて
    販売します!~

    焼き菓子パラダイスバナー