「車のことならあのひとに聞いてみな」と、
糸井さんに言われ私はゾッとした。
なにせ、あのひとというのは、
ここ(鼠穴)の、行ってはいけない場所に生存している、
恐怖の隠れキャラなのだ。
ちゃんとくちをきいた若いもんなんて、まだいないのだ。
私はビビッってしまって、大切な取材のアポ取りを
隠れキャラさんに比較的つよいといわれる
斎藤さんに頼んでしまったのです。
そこから、私の取材の悲劇は、始まったのだった。
まずは、「君は軽のなにを知っているのか?」
とのおことばでした。
「なにも知らないのですが」と
また斎藤さんに伝言をしてもらいました。
今度は、「自分で聞きにこない奴に話すことなどない」
とのお返事。
怖かった。
しかし、ここで逃げるのはどっっっしてもイヤだった。
「今まで、スウィートな世界で生きてきて、
こんなに強烈な試練を与えてくれた
ヒトはいなかったじゃないか、チマ!」
(スイマセンおおげさで...。)
私は自分にそう問いかけ、強行突破することにした。
階段をとんとん、10段くらいのぼっただけで、
すぐに行ってはいけない場所についてしまった。
ドアをノックしても返事がない。
勇気を出して、もう一度ノックしてみた。
低い声で、「ナニッ?」。
「あっ、あのー、千間と申しますが、
入ってもよろしいでしょうか?」
また低い声で、「ドウゾッ」。
(しゅ、取、取材ができる!!)
どうやってドアをあけたのかも憶えていません。
私 「あのー、度々申し訳ありません。
軽のことについて、
お聞きしたいことがあるのですが」
隠れキャラ「だから、君は軽のなにを知っているのか?」
私 「なにも知らないのですが、最近の軽は、
性能が良くなっていて、
速度が速くなっていると思うのですが」
隠れキャラ「そんなの最近のことじゃないでしょ」
私 「えっ?そうなんですか?」
隠れキャラ(しばらく、無言。そして)
「10年位前からだよ」
私 「そ、そうでしたね(知らないくせに)。
そ、それと、
チューニングしてる軽のボディは、
その速さについていけるのでしようか?」
隠れキャラ「そんなチューニングして
どうのこうのなんてことは、
個人の勝手だろう。
君がそんなことを知って、どーするわけ?」
私 「.....。」
隠れキャラ「だから君は軽のことを知って、
なにを言いたいの?」
私 「そんなに強く言いたいことは
ないのですが...」
とまあ、こんなハラハラするような
会話が繰り広げられた末、
恐怖の隠れキャラさまは「軽の歴史」から
とても分かりやすく教えて下さったのだった。
とにかく、もう、すごく色んなことを教えて下さり、
初めて知ることばかりで、目からウロコだった。
親切、なのかもしれない、キャラさま。
(そこで教わったことをここで言いたいのですが、
なんせ私が中途半端にしか理解してないものですから、
そんなレベルで語るのはあまりにも危険なのです)
だから、省略。
しかし、わたしが最初に思った疑問、
「そんなに速くて大丈夫なのか?」
の答えだけは自分なりに出ました。
大丈夫じゃない! らしい!
危ないに決まってる、らしい。
それを知っていて、
みんな「ムリしたい」ってことらしいんです。
チューニングとかして、ボディがついてこれるかなんて、
軽に限らずどんな車だってムリらしいんです。
わざとムリにしてるんです。
「速度についてこれちゃう
バランスのいいボディ」なんて、
面白くないってことみたいです。
曲がる時に、倒れそうになる、
そんな不安定さがあったりするから面白いんです。
なんでも、言った通りになったり、
こうすればその通りになるなんて、
おとなっぽすぎると思う。
チューニングとか(なにか車をいじってたり)
するひとびとは、
そーゆーこと(思い通りにならない)を楽しんでいて、
いい車を所有したことで「満足」するヒトとは違うんだ。
いじった車で走り、どっかに行くこと、
そのことが「満足」なんだろう。
どんな車でも限界を楽しめればイイみたいな、
そんなヒトがチョッパヤな「軽」に
乗ってるヒトなんです。
やっと分かった。
そんな気分でいっぱいです。
説明の註のほうがながくなっちゃった!