80's
80代からのインターネット入門。
前橋の母Aが、Eメールで原稿を
送ってくるまでの物語。

第9章 レッスン5・接続の苦闘(1)


南波あっこ先生についても、
ぼくも読者も、かなりおなじみになってきた。
まだ、会ってないのにねぇ。
なんなんだろ? こういう親しみって。
メールの交換をしていても、新しい発見があるものだ。
ぼくが、あっこ先生の親切にまた驚いたのは、
送られてくる原稿のスタイルだ。
「ほぼ日」は、(まるで業務連絡みたいだけど)
掲載のスタイルを、
1行27文字以内で改行するものと決めている。
いろんな人の新しい原稿が届いてから、
スタッフが、そのカタチに原稿をつくりかえるのだ。
ところが、南波あっこ先生の原稿は、
その改行の手間が圧倒的に少ない。
おそらく、「27文字の規則」まで気付いていなくても、
きっと、そのあたりのことを考えて
改行してくれているのだろうと思う。
それとも、もともと27文字くらいの改行だったのかな?

ま、そういうところも、
ぼくらをニコニコさせちゃうんです。
では、レッスン5の前書き的なところから、
読んでいただきましょう。んじゃ、よろしく。


第4回目のレッスンから何日が過ぎたのであろう。
いつの間にか雨の多い季節になっていた。
今にも泣き出しそうな空のもと、
愛しのミーちゃんの笑顔を思い浮かべては心の中に
ひだまりを見つけようとする。

ミーちゃんに会いたい。会えない。

なにも「先生」役を解雇されたわけではない。
物理的に会えない状態なのだ。
まるで「遠距離恋愛中」との張り紙を背中に貼って
時を乗り越えているかのような私。

ミーちゃんは、今、「旅人」となっていた。
あぁ、私だけがこの日常に置いてきぼり・・・

・・・な〜んて感傷にふけっていたいものだが。(笑)

その「日常」、実は私にそんな余裕も与えてくれない。

タイミングよく、保育所の息子は風邪を引き、咳コンコン。
私の自由行動の機会が奪われた。
やっと保育所に復帰して、やれやれと思っていたところ、
今度は本来の仕事依頼。

押し寄せてくる原稿FAXを眺めながら、
『あぁ、なんていいタイミングでミーちゃんの旅と
私の用事がかち合ってくれたのだろう・・・。
天の神様がアレンジしてくださったのかしら』と。

仕事を納品した直後にかかってきた電話。
「無事、旅行から戻りましたので、
またご都合のいいときにレッスン、お願いします」
ミーちゃんは「千里眼」であることが判明した。

この20日間、ずっと前橋を離れてらっしゃった
というわけではない。
この期間中に、旅は、実に二回に渡って実行されていた。
そして、家に戻っても、多忙な日々に変わりはない。
そこには、お隣のお菓子屋さんの仕事を手伝う
アルバイトまで含まれている。
ターボエンジンが搭載されているに違いない。

さて、やっと待ちに待ったレッスン日がやってきた。

雨降りの前日とは打って変わって「ミーちゃん日和」。
吹く風が心地よい。

ミーちゃん、相変わらずの爽やかな笑顔。
旅の余韻は残っていても、
旅の疲れなんてものはどこにも見えない。
ノリコさん、玄関前、二階への階段の最上部分から
「どうも〜。ご無沙汰しましたー!」
この方も、人に元気と勇気を与えてくださる存在だ。
今日はいつもの見学参加者の皆さんの姿が見えない。

iMacはすでに起動中。
クラリスワークスのファイルが開かれている。
おー、やってる、やってる、ご子息さまのコメント通りの
「あっこのいないまにiMac」!

大切なのは、それである。
日常的にiMacをいじくり回すということだ。

突如、目の前に現れた、わけのわからない物体・・・
生まれたての赤ん坊のようなものである。
触ってみるのも、おっかなびっくり。
壊れてしまうのではないか、と。
そして、どうにか触れ合っているうちに、
扱い方がわかってくる。
たまには、ご機嫌斜めになることもある。
でも、意外と図太く生命力はあるものだ。

ミルクを与える手間がかからないだけ
iMacの方が楽であろう。
最低限、摂取すべきは電力だけ。
オムツだって必要ない。排出するのは熱と電磁波ぐらい。
オムツをしたらかえって危険だ。

こんなことを書いていると、「システム終了」するたびに、
「はい、Macちゃ〜ん、お昼寝の時間よ〜」
CD-ROMを入れるたびに、
「はい、お口、開けて〜。おやつよ〜」
そんなことを口に出してしまいそうだ。
気を付けてください、人前では。(笑)
iMacもかわいい顔してわりと腹黒い奴かもしれない。
甘やかす必要はない。好きなだけ触れ合っていただきたい。


やっぱり、マシンも「赤ちゃん」のようにイメージして、
育児のようなある種の「優しさと乱暴さ」で、
つきあっていくのがコツみたいだねぇ。
女の人、特に子供のいる人は、
この感じって、経験済みなので得意なんじゃないかな。
男性方の、ぎこちない扱い方と比べると、
そっちのほうがよさそうだと思わせてくれるよね。

(って、また明日につづくんです)

1999-07-12-MON

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