80's
80代からのインターネット入門。
前橋の母Aが、Eメールで原稿を
送ってくるまでの物語。

第6章 もう2度目のレッスン(1)


南波あっこ先生のレッスンは、
生徒である母Aの好奇心に合わせて、テンポよく進む。
日を置かずに、熱をさまさないようにと、
すぐに2度目のレッスンに出向いてくれた。

2度目は、はじめての時以上に、
登場人物のキャラが立ってきておもしろいんですよ。



第2回めのレッスンは、
私を迎えるお母上Aのとびきりの笑顔と・・・
そして、スイカで始まった。

みずみずしくて甘〜いスイカが
本日のウォーミングアップ・メニュー。

「私、スイカが大好きで。
で、それを人に公表しちゃうから
夏にはスイカがいっぱい届くんですよ。
でも、一番好きなのは伊勢の赤福!(笑)」
そっか、覚えたぞ、スイカと赤福。
「赤福と言えば、うちの主人が
毎年鈴鹿にF1を観に行って買ってきます」
「あらー、F1! うちのノリコなんて
イタリアまでF1を観に行って・・・」

このあと、タイミングよくノリコさん登場。
しばらくイタリアでのF1話に花が咲く。
涼風も笑いながら通り抜けてく華やかな昼下がり。

そしてあるとき、皆、ふと我に返る。
「なんでイタリアの話なんてしてるんだっけ?」
記憶をたどり、意識はスイカに戻る。
スイカはすでに皮と化していた。

「iMac、君もスイカ食べたかった?」
流線型ボディが一瞬うなずくのを見た
・・・ような気がした。
(Macはかわいがってあげないと焼き餅やくから!)

iMacは予想に反してまだダイニング・テーブルに
居座っていた。じゃあ、あれから毎日
iMacがメイン・ディッシュになっていたわけだ。
そういえば、テーブルからは
ビニールシートが外されている。
テーブルに危害を与えるような奴じゃないと
認められたんだね、iMac。

パソコン・ラックがまだ届かないらしい。
代わりに分厚いカタログが届いたという。
ラック選びにもこだわりを見せるお母上A。
このため、プリンタの接続はちょっと延期。

ちなみに今日も見学者が2名。
前回お会いしたジュンコさんとユキエさん。
お姉さまノリコさんはお忙しそう。

お約束通り持参したマウスパッド。
キース・へリングのポップな絵が描かれている。
以前、県内の某美術館のショップで購入したものだ。
お母上A、興味を抱く。
「見たことあるわ、このタイプの絵」
おっと、いけない、今度はアートな話で盛り上がりそうだ。
個人的にはたくさんいろんなお話をしたいところだが、
今日は都合により短時間しかいられない。
さて、スイッチ・オンいたしましょう。

お母上A、すでに慣れた手つきでiMacのスイッチをオン。
デスクトップがちょっと先日と変わっている。
遊んでくださった証拠。

「こんなのが3つもできちゃって、
消せなくて困ってるんです」
見れば「新規フォルダ」が3つ。
意地悪な「先生」はちょこちょこっと操作をして、
また2つばかり余計に作ってみる。
「あら〜、増えちゃった(笑)。
いったい何なんですかぁ? これ」
お母上A、笑顔の中にかすかな困惑。
ダブルクリックの復習を兼ねて、
フォルダを開いていただく。
予想通り、全て、空っぽのフォルダであった。

「なるほど・・・」私にはなんとなくわかった。

先日軽くご紹介しておいた
クラリスワークスでワープロの練習でもされたのであろう。
そして、クラリスの新規ファイルを開こうと思いながらも、
一度ファインダをクリックしてしまったか何かで、
そちらが選ばれた状態だった、と。
代わりに作り出された新規フォルダたち。
「確かこの場所をクリックすれば
ワープロの新しいファイルの画面が
出てくるものだと覚えたはずなのに・・・」
お母上A、焦る!
やってもやっても求めるものが出てこない。
光景が浮かぶ。「ノリコ〜、大変よ〜〜!」

あ、そういえば、そのノリコさん、
「クラリスがいくらやっても開かなかったのよ。
困っちゃった」と、後でおっしゃっていたっけ・・・。
ということは、ノリコさんが
問題の「新規フォルダ」をたくさん作った
「犯人」だったのかも。
実際は「おかあさーん、大変よ〜〜!」(?)

「メニューバーの右上にご注目ください」
と私は説明を始める。
そこをクリックしてみると、下に、現在起動している
アプリケーションが全て表示されるということ、
また、そこで選択マークが付いているものが
メニューバーに表示され、そのアプリケーションが
現在作業しているはずのものなのだということ、
この二点について、ご説明。

「机の上にたとえばノートがいくつか広げられている。
どのノートを一番上にもってきて作業をしているか、
それと同じです」
これで納得してくださったようだ。

話は戻るが、その「新規フォルダ」の山が
とにかく邪魔で仕方がないとおっしゃるので、
全てゴミ箱に入れてみせた。
「長くお待たせいたしましたが、はい、消えました」
「あら〜、捨てちゃえばいいの〜?
簡単に消えちゃったわぁ(笑)」
「要らないものは何でもゴミ箱へポイでいいんですよ。
もちろん、アプリケーション本体は
(と言ってあるアプリのフォルダを開け、
どういうものが本体かお見せする)
捨てたら困りますけど、ご自分で作ったファイルや
フォルダは、要らなければ何でもゴミ箱へ」
数日間の悩みがやっと解決され、
晴れやかな笑顔のお母上A。



いいなぁ。生徒さんったら。
先生のこない日に、自分の意志で触って遊ぶというのは、
習い事の基本というか、とても大事なことですよねぇ。
ぼくは、何年か前に「三味線」を習っていたんだけど、
忙しくてという言い訳で、おさらいも予習も、
まったくしていなかった。
そうすると、お稽古の日がくると緊張してくるんだよね。
どうにもならないんだもん。おさらいしてないと。

ある時なんかは、先生の視線の死角に隠れ、
息を殺してじっとしていた。
「先生、もうしわけございません。
イトイに急用ができまして。どうしてもということで、
外出してしまったんです」というサイトーさんの声を、
不在のはずのぼく自身も聞いていたとは、
まさか先生も気が付かなかったろう。
いまさらながら、もうしわけございませんでした。

でも、母Aは、そんなことないようだ。
好奇心は、習い事の必須要素だし、上達のコツだね。
もっと言えば、好奇心は長生きのコツでもあるかもね。

(明日の日曜日につづく、です)

1999-06-26-SAT

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