HOST
いっそあのホストに訊こう!

第21夜 相手の女性に自慢させるんです

糸井 本当の手負いの狼的な部分ってことで、
たとえば零士さんだって、
10代の頃とんちんかんな格好して、
東京に出てきて浮きに浮きまくってた話を
平気でできてるじゃないですか。

零士 ええ。

糸井 それ、若い子、できないですよね。

零士 たぶん、できないでしょうね。
当時の僕は大まじめで行ってたんですから、東京に。
でも、浮いてることに自分で気づいて、直して……。
でも、その経験はエピソードとして
自分に誇りをもっていて、
「だから今があるんだ」っていうね。
だから、さっきちょっと出た話で、
“難しい相手”に遭遇しても、
その時こそ自分の得意技で行くしかないですよね。
あえて、まとめる必要ないですよね。

糸井 でもさ、自分の得意技がなんなのか
自分が知ることって、
本当はなかなかできないですよね。
むずかしいんじゃないかなぁ。

零士 だからいつも
「自分はなーにを考えてるんだろう?」
「自分はどれだけ異性のことを考えてるんだろう?」
とか、考えるんですよね。
「考えちゃいけない」って決まりないですから。
「私いっつも、男のことばっかり考えてるのよね」とか、
「俺っていっつも女のことばっかり考えてるんだよ」と。
それって悪いと言えることじゃないですよね。
はっきり言って、
「ああ、すごくいいんじゃない!」って、思う。

糸井 実際に、若いときなんて、
そればっかり考えてますよね。
俺、そうだったもん。

零士 そればっかでいいんですよ。
変にまとめなくていいんですよ。
で、若いうちからうまくまとめようとしたヤツは、
だいたい、そうですね……25歳で、
もう昔話始めちゃうんですよね。

糸井 はぁ〜〜〜。

零士 「俺が若いときはさぁ……」って、
オマエまだ若いだろ!って(笑)。
「昔は渋谷センター街でブイブイ言わせちゃって、
 まあ、当時はねぇ……」って、
オマエ、それ最近だろ!
「当時、俺の名は通ってたよ」なんてね(笑)。

糸井 そういう子、店の面接に来ますか?

零士 来るんですよ。

糸井 そういうとき、零士さん、なんて言うの?

零士 いや、もう、だいたいそういう人は……、
夢を語ってて目が爛々としてるんだったら
いいんですけど、
もうだいたい死んだ目しちゃってるんですよ。

糸井 はぁ〜〜、終わってるんだ?

零士 たとえば、僕が昔話をしても、たぶん、
目が爛々としてると思うんですよ。
「昔やったことは今の自分のルーツで、
 これからもっと行くんですよ!」
という感じが相手に伝わると思うんですよ。
でも、そうじゃない昔話をするヤツには、
「だからなに?」ってなっちゃうんですよ。
女性はもっとすごいです。
「俺って昔さぁ、ああで、こうで……」なんて
自分だけ楽しくて、自分だけウケてるような
そんな話を男が女にしても、
女は「だからなに?」で終わりっていうね。
その時点で、まあ10歩のうち、6歩、7歩は
引いちゃいますよ。

糸井 そういえば、しないほうがいい自慢話をして
失敗するヤツっていっぱいいるよね。

零士 いっぱいいるんですよ。

糸井 自慢話ってのも、ひとつキーですよね。

零士 俺がよく使うのは、さっきの話題で言うと、
自分より上に見える男とつきあってきた女に対しては、
「俺は、こんななんだけど」ってことを
まず最初に明確に示すことですね。
「わぁ素敵……」って思うんですよ、人間として。
「俺はこんななんだけど、こういうことが好きだよ、
 こういうことができるよ」って言う。
それって誇りですからね。
自慢も、誇りのある自慢もあるんですよ。
なんか立証できないような、ただのへんな自慢話とは、
ぜんぜんちがいますからね。

糸井 ああ、「カネ持ってるぞ!」とか、
「クルマいいの乗ってるぞ!」とか……。

零士 そういう話にしても、
「僕はこのクルマが好きだから……、
 このクルマ高いかもしれないけど、そうじゃないんだ。
 僕が乗ってるこのクルマには、こういう歴史とか、
 思い出があって、それで大事にしてるんだよ。
 あなたにとって、そういう物ってない?」って訊く。
相手の女性は、話し始めますよね。
だから、自分だけ自慢するんじゃなくて、
相手の女性に自慢させるんです

糸井 はぁ〜〜。
相手に自慢させる面積を残しておくんだ?

零士 そうなんです。
だから、自慢話をするには、自分に誇りがあって、
相手にも誇らせなきゃいけないんです

誇りがあるはずなんです。
それを自分だけが言うと、
「そんなもんアタシはないわよ!」とかね、
「自分の自慢話ばっかりして!」ってなるでしょ。
なると思うんですよ。おそらく。
だったら、女に言わせないとダメですよ、自慢話を。
たとえば、僕ら若い世代にとっても、
なんか、そういう物ってあるでしょ。
たとえば、フェラーリに乗ってたとしても、
「みんなフェラーリ、フェラーリって言うけれども、
 実は僕はこのシフトレバーが好きなんだ、これが。
 このアルミのシフトレバーが好きなんだよ」と。

糸井 俺は焼き肉ではレバーが好きだ!

零士 ……(笑)。
「でも、クルマなんかまあいいじゃん、なんちゃってー」
なんて自分からアホなこと言って。
で、自分の核の部分を明確に示しておきながら、
相手の誇りとか、自慢話をしゃべらせるのもいいし。
やっちゃいけないことって、ないと思うんですよ、俺。
でも、それなりにちゃんと裏付けがないと、やっぱり。

糸井 けっこうまともな話ですねぇ。

零士 まともなんですよ。
いい加減に考えてるんだったら、
最初からいい加減にしてたほうがいいですよ。
中途半端はよくないですよ。
マニュアルどおりは、いい加減ですよ。
自分で考えてないですから


(つづく)

2000-07-02-SUN
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