HOST
いっそあのホストに訊こう!

第12夜 男と女は結局は、第三者は関係ない

零士 たとえ場所がどこであっても、
会うべき人と会うかもしれないんですよ。
で、たとえば釣り具屋で、
会うべき人とばったり会ったとすると、
その人がルアーをとろうとして、
こう手をかけたところを
「あ、すいません……」って
ちょうど手がこう重なったりして。
「あ、このルアー買うんですか?
 僕もこのルアーにはねぇ、思いでがあるんですよー」
なんて。

糸井 そう話しかけるんだ?

零士 普通の状況よりは話しかけられますよね、
その女性が釣りが好きだったら。
まあ、釣り具屋はたとえ話なんですけど、
そういうふうに、あらゆる状況を想像してて、
本当にそうなっちゃうことがいっぱいありますから。
俺はそう思ってるんです。

糸井 こう、ルアーに手を伸ばしてるのを見てから、
“あとだし”になってもいいわけだ。

零士 もーちろん、いいんですよ。
ピタッと合わなくてもいいんですよ。

糸井 いまいち自信がないと、ピタッと合わなかったら
ダメな気がしますよね。

零士 ええ。
「あ、いらんことやっちゃった」って思うんですよね。
でも、いらんことじゃないですよ。
それをやったことは、いいことですよ。
客観的に見た場合に、
「アイツは何をわけわかんないこと言ってんだ」と、
思われても、そこにいた当の本人と、
言われた相手はマジになっちゃうんですよ。

糸井 外側は関係ないんだ?

零士 関係ないんですよ! これだけは。
読者のみなさんからの質問も、ぜんぶそうでしたよ。
質問を読んでいて言えることは、
“第三者は関係ない”ってことなんです。
質問のなかに第三者は登場人物として出てこないんですよ。
私は、僕は、俺は、って質問に書いてあるんですよ。
人がどうでこうで、これは私の友だちの話なんですけど、
とか、そういうことは、まずないんですよ。
第三者は関係ない、
その人自身から見た“見方”があって、
それに対して、零士さんはどう思いますか?
という質問が非常に多いんです。
あと、年齢によってちがいますね、やっぱり。

糸井 若い人からの質問のほうが、
悲しみがこもってましたよね。

零士 そうですね、こもってます。
で、40代の女性とかだと、
私はちょっと目を細めながら物事を見られますよ
っていうのを前提にして、質問書いてますよ。
20代だと……24、25の適齢期を越えて、今26、27で、
なんとなく30歳がくるのがこわい、びびってんな、
というようなコメントの人もいます。

糸井 質問を読んでいると、
ホストという人に対する、こわい、ずるい、きたない、
というイメージからくる怖れを、
「実はそうじゃないんだ!」って
零士さんにパーンと言ってほしいみたいな気分が
全体的に感じられたんですよ。

零士 ええ、僕も読んでてそれは感じましたね。

糸井 こわくも、ずるくも、きたなくもないよ、っていうのを
本人の口から言っちゃったら、根拠なくっても、
「やっぱりそうでしょ!」ってなるような気がしますね。

零士 僕らは自分のなかにモラルがあるんですよ。
基本的には、男と女は結局は、第三者は関係ない、と。
ただし、「男としてこれは普通じゃないな」って
自分が思うことに手を出すと火傷するんですよ。
ホストでも。

糸井 それ、たとえば、どういうことですか?

零士 男女の間のことで、
なにかその状況を女の人が何も言わずに
のんでいるような状態でつきあってても、
普通に考えて、
「きっとこれは本当の愛じゃないな」とかね、
「本当は俺は好きじゃないのかな……」と思う場合は、
自分のことがわかんなくなっちゃうんですよ、結局。
自分のなかでちゃんとモラルがあるんですよ。

糸井 つまり、商売であり、職業ではあるんだけど、
その職業をささえる動機があるわけだ?

零士 あるんです、ちゃんと。

糸井 それは、どういうふうに説明するんですか?

零士 ホストはですねぇ、自分を支えてくれる女性に対して、
要するに夢を売るわけですよ

夢を売って、その女性の
明日の張りになればいいわけですよ。
で、客観的に自分を見たら、なんかすごく
自分が悪いような感覚になる時ってあるんですよ。
「なんか俺って、お金使わせちゃって悪いのかなぁ」とか。
でも実際は、その女性が、
「今日はこうでね、ああでね」って
電話をしてくることが、結局本人がよければ、
俺たちは一生懸命よくしてあげよう
って思うんですよ。

糸井 宗教のお布施みたいなもんですね?

零士 そうなんですよ。
入り込めない部分があるんですよ。
相手側の女性に。

糸井 坊さんとか、看護婦さんとか、
そういう職業に近いですよね。

零士 近い部分あるんですよ。
それを、ずるいとか、きたないとか、こわいとか……。
でも今はね、だいぶなくなりましたよ、そういうイメージ。

糸井 マイナスのイメージがなくなってきたのは、
会計制度のせいもあるんじゃないですか?
むやみにお金を絞りとられるんじゃないかという
漠然とした恐怖があった時代があったけれとも、
実はビジネスのシステムとして、
ここまでしか掛からないというのが見えてきた
というのがあるんじゃないですかね?

零士 もちろんそれもありますね。
広くマスメディアを使って、
お茶の間にも広く伝わるようになりましたからね。
僕なんかがバラエティ番組に出演して、
「そんなことないんだよ」って。

糸井 化け物じゃないんだよ、ってことはわかるよね。

零士 それは伝わると思うんですよ。
僕が出演した番組を観てくれて、
「あ、この人、これ、天然で言ってるな」とかね、
「天然で今照れてたね」とか、
「マジで顔ひきつってた」とかね。

糸井 裸になっちゃったほうが、
ビジネスはやりやすくなってるっていうことですか?

零士 そういうことです。

(つづく)

2000-06-01-THU

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