COOK
鈴木慶一くんと、
非時事放談「月光庵閑話」。

●お蔵出し月光庵
その5 イラン人とゆっくり話す。
(ゲスト:渡辺祐)


鈴木 糸井さんとこは絡みあってるからなー。
下町と山の手がさー。
糸井 慶一くんとこだってそうだよ。
大森の下町と、大森の山の手が絡み合ってる(笑)。
渡辺 シャネルズは大森ですもんね。
糸井 俺、羽田近辺の女の子と付き合ったことあんだけど、
よかったよー、スリリングで。
もう、わかんないの、動きが。
急ブレーキ、急カーブ、急発進!
昨日と違うじゃーん、みたいな毎日。
鈴木 それ中学入って感じましたよ。
・・・氷屋さんの娘じゃないだろうな・・・
糸井 やっぱり?
鈴木 工業地帯から来てるわけだよね、わたしなんかは。
片や羽田は漁師町から来るわけだ。
何するかわかんないのよ。
手裏剣投げられたりさー、
今日と明日で考え方違うというかさー、
昨日言ってたことと違うじゃん!
とか、こないだまで、いたヤツがいなく なる。
鑑別所送り。
糸井 そんなの(羽田あたりじゃ)常識よ。
鈴木 常識常識(笑)。
でも、あれカルチャーショックだったなあ。
糸井 そうかー。
地元にいながらにしてカルチャーショックだったんだ。
鈴木 そう。羽田の奥の方は、
工業地帯的考え方じゃないんだなー。
なんていうのかなー、朝8時に行って、5時に帰る、
ナイン・トゥ・ファイヴ じゃないんだよ。
8時ってのが労働者ってもんでしょ。
昼休み1時間は労働時 間にはいらない、
というようなものがあんまりないんだよ。
ほんとバクチ打ちばっかなんだもんねー。
糸井 思えば、第一次産業と第二次産業の
マージナルな場所じゃない。
境界線。
鈴木 そう。実に。
糸井 第二次産業と第三次産業のマージナルな場所が
いまのワサワサを作ってるんだね、きっと。
鈴木 それどこなんだろう?
糸井 たとえば町田とか。
鈴木 所沢とか。
そういう16号線沿い的なところかな。
糸井 たっぷり工場はあるんだけど、
それがこのまま(工場地帯)じゃいけなくて、
新興住宅地ができて、多摩とかさー。
鈴木 町田って面白いよ。
糸井 やっぱり?
鈴木 駅も変だし・・・
変っていうか、強引に作った感じがするんだよ(笑)。
町田にリス園っていうのがあるんだよ。
渡辺 ありますよー。
僕地元なんですよ。相模原ですけど。
鈴木 相模原に僕の地元の工場がほとんど移転したんですよ。
だから、中学の同級生はみんな相模原へ行っちゃった。
渡辺 リス園はありますよ。
うちの子供は遠足で行ってましたもん。
鈴木 そこ(リス園)はねえ、
リスの量たるや尋常じゃない。
糸井 (笑)大量のリス!?
鈴木 リス用の手袋をしなくちゃいけないんだけど・・・
糸井 噛まれないように。
鈴木 そう、噛まれないように。
そんで、えさをやる。
糸井 たとえば、喧嘩がそうじゃない。
町田と言えば、暴走族がパラパラパパッー
って言ってるところじゃない、昔から。
渡辺 あそこは“町田・相模原連合”ですからね。
糸井 なぜ喧嘩が起こるのかというと、
同じ価値観を持っていない人が
その地域にいるからなんですよ。
つまり、工業社会の価値観と
農業社会の価値観がぶつかって
そこにさらに情報社会の価値観がぶつかって、
3つの価値観が並列に並ぶから
許せないんだよ、きっと。
渡辺 並列に同級生にいるからね。
鈴木 そう。
だから、ほんとに喧嘩が絶えない。
毎日、血が流れる。
だって、漁業でしょ、工業でしょ、
さらに工業の情報ものでしょ、
さらにあるスチュワーデスの学校でしょ、
なーんていうものすごい絡みあいをしているわけよ。
スチュワーデスの学校は子供が来るわけじゃないけど、
そういうのを横目で見つつ・・・・
しかも、スチュワーデスが交通事故で
亡くなった交差点ってのが、
長きに渡って語り継がれる。
なんで、夜中に一人で歩いてたんだろう、なんてね。
あと、運河に死体が浮いてて、
ちょっと離れた場所で、
ワニが発見されたりしたんだよ、
関連性は疑問だけども。
糸井 スチュワーデスが学校に来たりして(笑)。
“ランドセルをしょったスチュワーデス”(笑)
渡辺 (笑)なんかいまのゾクッとしましたねえ。
鈴木 (笑)それ見てみたいねえ。
糸井 給食の時間はエプロンしてるの(笑)。
小さいスチュワーデスいいわー(笑)。
みんな子供が親と同じ格好してたら面白いね(笑)。
大工の子供は大工の格好してるの。
鈴木 “大工っ子”(笑)
糸井 思えば、カウボーイなんてそうだよなー。
後に作ったもの(後の時代にできた職業)は
そういうのがないんだなー。
鈴木 落語家の息子は落語家の格好したりして。
糸井 和服で、「どうもどうも」とか言って(笑)。
小学生が。
渡辺 「これはまた、どうも」なんて(笑)。
「せんせい、授業お上手!」なんて言ったりして。
糸井 いまは、工業社会の行き詰まりのところに
新しく情報社会のストレスが出てきて、
このままでいいべか、っていう状態が
あっちこちで起っているから、
どこも面白いんですよ。
居づらいし。
鈴木 居づらいから面白いんですよね。
ちょっとタフじゃないといられない。
糸井 俺、あんまよく知らないけど、
フランスはいま、元々のフランス人と、
その後移民してきたフランス人と、
最近やってきたフランス人と3分の1ずつなんだって。
鈴木 いいバランスじゃない(笑)。
糸井 ものすごいんだって。
もうねえ、えらいことになってるらしいよ、
フランスはいま。
サッカーのフランス代表とかいって、
黒人いっぱいいるじゃん。
鈴木 そうだねー。
糸井 あれ、いまふつうらしいよ。
鈴木 (ヨーロッパ系の名前じゃないから)
名前読めない人いっぱいいるよね。
民族離散じゃなくて拡散。
渡辺 アフリカ系の人が多くなってるようですね。
糸井 (フランスに)オランダの人が入ってきてる時代が
あったじゃない。
エマニエル夫人のように。
あんな農業国に3種類の人がいて、
ごちゃごちゃなんだって。
たぶんこれからはどこもそうなるんだよね。
日本もね。
鈴木 人種的にはまだなってないけどね。
工業とか、産業とかって考えると
日本も層が分かれてきてるね。
糸井 そうね。
鈴木 あっそう言えば、10年くらい前に俺実家帰ったとき、
びっくりしちゃったんだよ。
あんまり黒い肌の人が多いんで。
糸井 ほおー。
鈴木 パキスタンとか、そっちの方の人が多いんで、
たまげたけど。
そしたら、またすっとその人たちが
いなくなっちゃったんだけど。
どんどんいなくなったり、入ってきたりするわけ。
黒磯とかはブラジル人が多いでしょ。
大田区の海側は、東京の大ローカル。
糸井 イラン人とゆっくり話したことって
誰もないでしょ。
俺ねえ、それやりたいのよ。
“イラン人とゆっくり話す”
だーれもちゃんと彼らの話を聞いたことないんだもん。
鈴木 “イラン人”ってイメージはあるけどね。
渡辺 イラン人のサンコンさんみたいな人いないですね。
糸井 いないんだよ。
だから、イスラムってまた特別なんだと思うんだよ。
鈴木 イスラムの人とじっくり話す?
糸井 うん。で、いまイスラムって思想的に面白いなあ、
って思ってるから、
つまり、戒律中心じゃないですか。
戒律中心だからこそもっていた、
あの大量の人の数。
興味あるよねー。
渡辺 いま、都内にいっぱいモスクができてるんですよ。
彼らはモスクがないと
生きていけないわけですよ、基本的に。
だって、朝(モスクに)行って、
朝ごはんそこで食っちゃうんですから。
で、昼はまた仕事場からモスクに行って、
モスクでお昼ごはんを食べる、
っていう生活が本来の生活だから、
モスクがないとほんとはやっていけない。
そのことに気付いた在日の長い人が
少しずつモスクを作りはじめているんだけど、
モスクを作るって言ったって、
壮麗な建築はできないから、
マンションとかにモスクを作っちゃうわけですよ。
「この部屋はモスク」っていう部屋ができてるの。
鈴木 それ見たことある。
“モスク部室”ね。
渡辺 そういうのがいっぱいあるらしいですよ。
糸井 “渡辺モスク”(笑)
渡辺 ダジャレです、それは!(笑)

(この回、了)

2001-01-02-TUE

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