COOK
鈴木慶一くんと、
非時事放談「月光庵閑話」。

いよいよ第2シーズンのラスト、第6回です。
引き続きポカスカジャンの話題。

糸井 じゃあ、進化させて、ポカスカジャンの今後の
活動について、展望を語り合おう。
鈴木 アコースティックギターを、エレキ化する。
糸井 とうぜん持ってますよね。
鈴木 彼ら、すべてエレキの弾き方だから。
すべてとは言わないけど、ほとんどエレキの弾き方
なんだよ。エレキのほうが、音量と喋りの問題がね。
糸井 そうか。やってる曲も、
全部エレキの曲ばっかりだもんね。
エレキになったからって邪魔になるわけじゃないよ。
モト冬樹さんみたいなやり方あるもん。
そうしたら、ベース音での遊びもできるしね。
ソウルフルなこともできる。
それ、慶一くん、いいよね。……人のことなのに(笑)。
鈴木 エレクトリック化。
糸井 俺はね、
今のテレビはネタをやらして
くれないでしょう?
そのなかで、お笑いの人たちが、
せっかくお笑いとして突き進んでいっても、
やがてカーブしちゃうんですよ。
つまりね、最高のゴールが司会者なんだよ。
鈴木 司会だね。
まずテレビに出るのが好きだ、っていう気持ちが
すごい多い感じだよね。だからさ、
最終的に司会者でもいいんじゃない?
糸井 だって司会者いちばん長く出てるだもん、みたいなさ。
「カンムリ番組がほしい」って、
みんなお笑いの人たちは言うんですよ。
『ナイナイのナントカ』みたいなのに憧れちゃう。
それは違うよね。だからネプチューンなんかは、
うまいこと擦り抜けているとは思うんですよ。
ネタやったり、バラエティ化してったじゃないですか。
でも、その道以外にないのかよ? 
という気分は、あるんですよね。
そうなったときにね、ポカスカジャンって、
俺、そのへんのカンいいんだけど、
司会者の流れでは使いにくいバンドだな、と。
鈴木 あ、使いにくいと思う。
糸井 つまり、レスポンスで生きているわけじゃないから。
やっぱり、発信するバンドで、
反射するバンドじゃないんですよ。
反射性がいちばん要求されているいまのテレビ時代には、
ホントはもうフィットしていない。
でも、それが、希望がないわけじゃないなと思うのは、
そのテレビに、みんなが
「違うな」と思い始めてるんですよ。
鈴木 いま?
糸井 うん。だからいま売れてる出演者だって
「いまのドラマはヤバイよ!」って、本気で言ってる。
それ、たしかにそうだよ。
いつでも、始まったときは面白かったものが、
安定して、衰退していくカーブで、口当たりのいい、
おざなりな、というか、当たり障りのないものが
「全部」になっちゃったじゃないですか。
テレビの全部がそうなっちゃった。
そんときに、意外に、ある一部の人は
ドキュメンタリーに目が行ったり、
NHK見ることが多くなった。
鈴木 俺、NHK見ること多いんだよね。
糸井 そういう人が、前より多くなっているっていうのは、
次への予感でもある。テレビとのつきあいをやめる、
ってことではないんだけど、
テレビは、やっぱり対等に出るもんだと思うんですよ。
出してください、じゃなくて。
そこんとこの距離っていうのを、ポカスカジャン、
これから、草の根活動をするらしいから、
俺、大賛成ですね。
全国を、地味に、ハイエースで回るっていう
ツアーをやるっていう。
鈴木 ハイエースで回るっていうのは
すごいバンドっぽいね。

(注:7、8月にかけて、全国20個所を回る予定)
糸井 呼んでくれた人の家に泊まったりとかっていう。
俺の(ポカスカジャンの応援活動は)最終的に、
欲をいうと、『ほぼ日テレビ』だね。
『ほぼ日テレビ』があったら、
「今日はポカスカジャン。どうぞ1時間勝手に
やってください」ってね。できるよなあ……。
鈴木 ラジオは?
糸井 ラジオってのはやれると思うんだけどね、
そのラジオで、ばらまく面積に比例して、
手間はおんなじにかかると思うんだよ。
鈴木 いや、たしかにそうなんだよね。
糸井 ラジオの可能性はずっと考えるんだけどね。
そういうときのお手伝いにはなかなかなりにくいんだよね。
ラジオって、待ってて聞く、っていうのって、
AMの夜の時間帯だけでしょ。しかも、高校生とかだけ。
鈴木 ウン。
糸井 あれを突破する方法をうまく考えられないと、
ラジオ、だめなんだよ。
鈴木 世田谷の、ケーブルテレビの世田谷版なんてのは、
とんでもない番組やってるけどね。70歳くらいで、
ドラムをやってます、ってバアさんが出てきたりさ。



糸井 初期のころのスペースシャワーなんかに
ゲストで行ったときも、
「これホントに誰が見てんだろう?」
って思ったよ。
3人くらいしか見てないから自由にやってください、
なんて言い方されてたけど、
今は、スペースシャワーっていうのは、それなりに、
音楽の紹介とか「してください」って側から、
ちゃんとスポンサードされて、
お金とってってところまで育ってる。
っていうの聞くと、そのレベルのテレビも
あるとは思うんですよね。
……慶一くんのソロと、ポカスカの組み合わせって
できないのかな。
鈴木 俺がポカスカに入ってなんかやる……
糸井 入ってやるのは、難しいでしょう。
鈴木 難しいね。あのリズム。
糸井 出番をサンドイッチにして。
で、どっちの客だかわからないっていう、
クラクラっと来るかんじのコンサートを、
実現できないかなあって。
鈴木 俺は、一緒にやりたいなって気持ちはあるよ。
糸井 小さいとこでもいいよね。
鈴木 それをどうするかはねえ……
糸井 俺のイメージではね、
アタマ、ポカスカジャンで始めて、
慶一くん入れてポカスカジャンで終わって、
慶一くんをユルくするわけ。
ライダーズ系の人たちは、
観客としてそんなにいなくてもいいけど、
好きなことだけやってるオッサンひとり入りました、
みたいにして、責任はポカスカジャンにある、
って構成だったら面白いと思うんだよ。
鈴木 そうだね。僕が責任をとるとなると、
かみあい方が、彼らがゲストになっちゃうよね。
糸井 なんか、オーティス・レディング
みたいのやってもいいな。
最後にみんなで口笛吹いて終わるとかね。
ヒュッ、ヒューッ、って。
観客席ぜんぜんもりあがらないんだ。
鈴木 それで俺、はさまれたときに、
下手に、笑わせなきゃいけないんじゃないかと思うと、
こりゃ大失敗になる。
糸井 だから慶一くんはいつものようにしてて、いいんだよ。
ただし、イヤなことはぜんぜんしない、
っていう。わがままな40分。
鈴木 40分イタダキっ。ちょっと彼らに、ギターで。
糸井 手伝わせたり。
鈴木 ひとりのライブは、いやホント自由だよ。
何が自由ってね、間奏っていうのがあんじゃない?
間奏が、おっきなヤマなんだよね、ひとりだと。
なにもないから。で、間奏途中で切っちゃったりさ。
糸井 それをさ、プーク劇場よりちょっと大きめのところでさ、
損はしないよ、って程度でやったら、面白いよね。
鈴木 もういっこ、ポカスカジャンの前になんかあるっていう、
もうちょっとイベント的にすることもできるよね。
糸井 そうか、もうひとつ何かを入れてもいいんだ。
鈴木 安易な方法としては、DJ的なものがあったりとか。
なんだろう、この日は? っていう。
糸井 チケットに書いてある言葉としてはさ、
「歌とお笑いの2時間半」とかさ。
なに? そのマッスグさは? みたいなさ。
……なんか、できるなあ。ちょっと、はさんでみたいなあ。
客入んないはずはないですよ。
もうひとつ欲しいのってなんだろう。
短編映画くらいでいいのかな。
鈴木 そうだね。
糸井 笑った後に音楽聞けて、
音楽聞いた後にちゃんと笑える、
っていう知性の人だけを呼びたい。
鈴木 現在って、客が凝視型でしょ。
ステージ上を見て動かないじゃない。
で、俺の場合もそうなんだけど、それを、
なんか、動けるような。飲んだりできて。
そういう、客がゆらゆらしているところで、
ポカスカジャン、パーッと出てくると、
見たい人前のほうへ、って。
東京No.1ソウルセットとかだと、そういう
ゆらゆら客や、ダベリ客多いけど。
ポカスカジャンの客も、みんな、こう、
(まっすぐに)見てるよね。
糸井 だってあれ、詰め込まれてるから。どうしようもない。
鈴木 そうだね。つい、見ちゃうよね。
糸井 もうひとり、俺も加わりたい、ってやつがいると、
ガーッと熱くなるね。
鈴木 うん。
糸井 小さいデヴィッド・カッパーフィールド
とかいないのかな。
鈴木 コカッパーフィールド(笑)?
糸井 おお。テヒット・カッハーヒールト、みたいなやつ。
できそうな気もするんだよなあ。
つまり、左脳的な人は入れたくないんです。
鈴木 ウン。ルー・ケーズや、ブルーノ・サンナルチノ。
糸井 話で面白いのを組み合わせたら、
昔の「ヘンタイよいこ」になっちゃうんです。
それは時代がちがうんですよね。
もっとね、……なんなんざんしょ。
ポカスカの面白さがわかって、慶一くんの歌がわかって。
妙な野心があっても困るし。
音とお笑いと、あと何があるんだろうね。
踊りでもないかなあ。
そういうのってさ、慶一くん、
相互観客関係っていうのがいいよね、舞台の上が。
俺も見たいから、じゃあ、客席にいるよ、みたいなさ。
で、またひっくりかえって、っていう。
ポカスカは、どこ連れてかれるかわからない、
っていう面白さが、やっぱり……
鈴木 それがね、最大の魅力ですよ。
すんげえ好きだよ、俺。ホントに。
糸井 じゃあ大丈夫だ。ギターもうまいって言ってるし。
鈴木 いやあ、ギター、うまいし。俺よりうまいし(笑)。
(第2シーズンおわり)

ポカスカジャンに質問! パート3

◇特別ふろく・ポカスカえかきうた◇

1999-05-06-THU

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