モノポリーエッセイ

2007年度モノポリー日本選手権
全国大会結果報告(その21)


こんにちは。
モノポリー日本選手権の決勝戦。
岡田@2000年世界チャンピオンが「破産」し、
ゲームから離脱したところです。
今年の日本チャンピオンの座は、
残る4名の争いとなりました。

オレンジ・レッド・イエローという、
典型的な「有力色の三つ巴展開」かとも思われる形から、
あっと思う間を突いて一気にまくったのは、
石川さんの経営するグリーンでした。

有力色
 止まる確率の高いカラーグループを指します。
 モノポリーは「刑務所」に入っている可能性があるので、
 刑務所から「刑務所に行け」の間のマスに
 止まる可能性がそれ以外のマスよりやや高いです。
 刑務所から「刑務所に行け」の間には、
 ライトパープル、オレンジ、レッド、イエローの
 4つのカラーグループがあります。
 サイコロを2個使いますので、
 刑務所から1、3、4マス目にあるライトパープルは
 やや止まりにくく、
 それ以外の3色はやや止まりやすくなっています。
 これらの3色のカラーグループを「有力色」といいます。
 明るい感じの色が多いのが特徴です。
 勝利に近い有力色は明るい感じで、
 それ以外が暗い感じとは、
 イメージと配色が一致しています。


レッドの岡田さんのみならず、
最大のライバルであると目された
オレンジの白井さんにも大ダメージを与えた今や、
石川さんのライバルは、
有力色のイエローを経営する山本さんです。

石川さんの駒位置は
「HARRYHAUSEN'S」(インディアナ通りに相当)であり、
イエローの手前の位置だったために、
山本さんはイエローを8軒にまで増築して
勝負をかけていました。
しかし石川さんは「LAUGH POWER」
(水道会社に相当)に着地。
ここでイエローをかわせたのはとても大きい気がします。

手前の位置
 モノポリーはサイコロを2個振りますので、
 サイコロ2個の目の合計が6、7、8は出やすく、
 2、3、11、12は出にくいです。
 カラーグループにコーン(家)を建設する際、
 非常に重要なことは、
 そのカラーグループにサイコロ一振りで、
 止まる確率が高いかどうか、
 つまりカラーグループから
 サイコロ一振りで止まる位置に、
 他のプレーヤーがいるかどうか、です。
 この位置にいることを
 カラーグループの「手前にいる」とか、
 カラーグループの「お客さんがいる」などといいます。


山本さんは明るく「50ドルいただきます!」と
元気よくコール。
これに対して石川さんも「はい、喜んで!」と
頭を下げます。
一見するだけでは、実にさわやかなやりとりです。
もちろん心の中では山本さんは
さぞや落胆しているところであり、
一方の石川さんはほっとしているところでしょう。

そして、ついに石川さんは勢いにのって、
なんとダークブルーを「自力」してしまいます。
勢いにのっている人は違いますね。

自力
 カラーグループの全ての権利書を購入すること。
 誰とも交渉せずにコーン(家)を建設することが
 できるので、かなり有利な状況といえます。


この石川さんの勢いは脅威です。
どこかで流れを変えないと、
石川さんがそのままチャンピオンになってしまいます。

ここで山本さんから長崎さんへの交渉。
山本さんは現在位置が
「DINOCO HELICOPTER」(ペンシルバニア鉄道に相当)
であり、次に10を振ったときにまだ売れていない
「TOW MATER TOWING & SALVAGE」(B&O鉄道に相当)を
購入する資金がないために、
貴重な「4枚目の乗り物権利書」を
競売に出してしまうことになり、
そうなるとトップの石川さんに
あっさりと買われてしまうことを危惧しています。
そうならないよう、つまりこの乗り物を購入できるよう、
今のうちに200ドルを作っておきたい。
だから今のうちにパワー(電力水道)を
買い取ってくれないか、という内容です。
「あなたのために働かせてください」
という山本さん得意のキャッチコピーを織り込んで、
ここは熱く訴えかけます。

競売
 最初にマスに止まった際、
 そのマスをそのプレーヤーは
 優先的に購入することができます。
 しかしそのプレーヤーは買わないこともできます。
 また物理的に購入できない
 手持ち現金が不足しているような場合ですね。
 その場合は、参加しているプレーヤー全員で
 「競売」となり、最も高い値をつけたプレーヤーが
 落札します。


山本さんは今までこの殺し文句で
1000人以上の対戦相手の心をつかんできたのです。
乗り物3枚とライトブルーという
不利な体制で凌いでいる長崎さんとしては、
この提案はもっともであると感じられたようで、
成立します。

確かに10を振れば展開はそのとおりですが、
それ以外の目であっても、山本さんにとっては
「イエローに9軒目を建築する資金ができた」
という見方もできるわけですよね。

9軒
 この連載中、何度も登場するキーワードです。
 モノポリーの家の建て方では、
 各土地に3軒目を建てるのが
 最も経営効率が良いとされます。
 レンタル料が2軒の際と3軒の際では
 かなり違うからです。
 9軒を建てるということは、
 3箇所の土地がセットのカラーグループで、
 (3軒、3軒、3軒)というふうに、
 全てが3軒目になっている状態を指します。


これを見た石川さん。にやりと笑います。
おもむろに9軒建っている自分のグリーンの家に
手を伸ばして、
何を思ったのか全て壊します。
その売却資金に手持ちの現金を合わせて、
岡田さんから手に入れたレッドのカラーグループへ
9軒を建築する、とコールします。
ライバルの山本さんを先に狙うためには
グリーンよりもレッドという判断なのです。
更に言えば、イエローの山本さんとの最終決戦において、
下流のグリーンではやや不利、
遅かれ早かれ転換するならそれは今でもいい、
という判断もあったかもしれません。
自力したばかりのダークブルーではなく、
ましてやオレンジを崩している白井さんの行方を
見守るわけでもなく、
思い切ったこの転換に、場内も歓声を送ります。


▲グリーンのコーン(家)を壊して、
 レッドに立替する石川さん(真ん中)。
 思い切った勝負に出ました


▲レッドに林立するコーン(家)。
 ここでライバルを直接たたけば、
 次の日本チャンピオンがぐっと近づきます

狙われた山本さん。
乗り物の4枚目の心配をするどころか、
一気に目の前が危険地帯となります。
しかしここは7を振ってピストンカップ(チャンス)着地。
カードの指示により刑務所へ入り、
まずはいったん凌ぎます。
そして先ほどの資金を使ってイエローを9軒に増築して、
勝負をかけます。

結果的には、刑務所を出た後で
結局その4枚目の乗り物に止まり、
既に資金を使いきっていたために、
競売に出すこととなってしまいました。
この乗り物は長崎さんが410ドルで競り落としました。
4枚中2枚が抵当に入った状態とはいえ、
これで乗り物4枚にライトブルーと、
多少は見れる形になってきました。

白井さんは乗り物などで家を段階的に崩しつつ、
イエローに止まって仮破産となります。
ここは長崎さんが救済します。
島朗杯で優勝し、
地元つくばのモノポリーサークルを盛り上げるために
と意気揚々と参加してくださった白井さん。
最後は長崎さんの引いた
「みんなから50ドルもらう」のカードで破産となりました。

長崎さんはライトブルーに頑張って建築し、
ちょこちょこと収入も得ていましたが、
やはり高額カラーグループとの殴り合いには
ついていけません。
それがわかっているので白井さんを救済して
オレンジを引っ張ってきて準備を整えていますが、
まだそのオレンジも抵当に入った状態。
とりあえずは自分が支払いを避けつつ、
乗り物とライトブルーで
資金を集めなければいけないという、
臥薪嘗胆とも言うべき「我慢の立場」です。

石川さんが刑務所に入ったところで、
山本さんからそんな長崎さんへのオファーがなされます。
「夢よもういちど、でどうですか?」
果たしてどんな交渉でしょうか。

(原文:1999年モノポリー日本チャンピオン 宮野徹
 監修:日本モノポリー協会専務理事・
 2000年モノポリー世界チャンピオン 岡田豊)

2008-11-07-FRI

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