モノポリーエッセイ

2007年度モノポリー日本選手権
全国大会結果報告(その16)


こんにちは。
モノポリー日本選手権の
決勝卓の様子をお送りしています。

局面はまさに前半の山場。
「カラーグループを揃える」場面での駆け引きが
見て取れます。

まずは岡田さんが白井さんに交渉して、
レッドを経営したいと打診しているところです。

レッド
 カラーグループの中で止まる確率が高いため、
 勝利に近いとされるカラーグループの一つです。
 米国人プレーヤーでは1、2を争う人気です。
 カードカードでレッドへの移動を
 指示するものがあり、
 直接集客できるのも大変魅力です。


岡田さんといえば、
2000年世界チャンピオンという「肩書き」が
とても有名ですが、
その次の大会である2004年世界選手権大会では
健闘つたなく敗れ去ったこと、
その会場からの去り際に、
全世界に向かって流されるメディアの前で
“I’ll be back”
と宣言していることは、知る人ぞ知る「話題」の1つです。
公約を果たすためには、世界の舞台に再び立つためには、
そろそろこの大会で勝っておかねばいけない時期です。
力が入るでしょう。

岡田さんがオレンジとダークブルーの2枚を放出して、
レッドを揃えます。
単純に見ても、優良カラー1枚と2枚の交換。
白井さんもこの内容には満足だったようです。
もちろん岡田さんにとっても、
自分の駒位置がGoマス手前なので、
無事に給料がもらえれば7軒は建つ勘定になり、
これは十分に成功した交渉でしょう。
チャンスカードで「レッドに進め!」が
そろそろ出そうなのが、
実はねらい目でもありました。

7軒目
 モノポリーの家の建て方では、
 各土地に3軒目を建てるのが
 最も経営効率が良いとされます。
 レンタル料が2軒の際と3軒の際では
 まるで違うからです。
 7軒を建てるということは、
 3箇所の土地がセットのカラーグループで、
 (2軒、2軒、3軒)というふうに、
 どこか一つが3軒目になっている状態を指します。
 勝負できる状況だといえましょう。


Goマス手前
 カラーグループを経営する場合、
 持ち現金が重要ですが、
 それに加えてGoマスに
 すぐに到着できるかどうか、も重要です。
 Goマスを通れば給料がもらえ、
 キャッシュが増える可能性が高いからです。
 今回のケースがまさにそれに該当します。
 ただし、安心はできません。
 Goマスそばには「所得税」という
 給与全てを奪ってしまう
 アンラッキーなマスがありますので、
 これに止まってしまっては
 「取らぬ狸の皮算用」です。
 実際、このゲームでは岡田さんは所得税にはまり、
 レッドの家を増やすことができませんでした。
 これは岡田さんにとって最大の誤算だったと思います。



▲交渉終了直後の岡田さん<左>と白井さん<右>。
 カラーグループが最初に揃うと、会場に緊張感が漂います


ところがここで、
家を建てようとする岡田さんに石川さんが声をかけます。
揃ったレッドをそのまま譲ってもらえないかというのです。
石川さんはこのゲームでは積極的に経営する意思を
見せており、その熱意がどう実を結ぶのかも注目です。

岡田さんは前述のようにレッドの経営はやる気満々です。
「俺もけっこう厳しいのはわかるよね?」と
念を押すように説き伏せ、
4軒スタートならOKと言い返します。
石川さんはそれを聞いて
「4軒ならさっきグリーンをやっている」と、
あきらめました。
岡田さんはレッドに家を4軒建てて様子を見ます。

山本さんは駐車場から
3ゾロを振ってイエローの最後の土地である
「ZURG’S PLANET」(アトランティック通りに相当)を
購入。
続けて3を振ってイエローを完全に抜ける位置まで
駒を進めます。
これで目の前の視界がぱっと開けて、
俄然交渉がしやすくなりました。

イエロー
 カラーグループの中で止まる確率が高いため、
 勝利に近いとされるカラーグループの一つです。
 コーンの建設費が同じレッドと比べて、
 「イエローに行け!」カードがないのは短所ですが、
 レッドより高額レンタル料であるのは長所です。


早速、山本さんと白井さんの、
イエローを揃える交渉です。
若干白井さんの姿勢が硬く取り組み難し、と見たのか、
山本さんはまず
「どちらがイエローをやるにしても、
 オレンジは出すべきだよね」
と釘を刺し、
同意が得られそうな角度からのアプローチを試みます。

白井さんの駒位置は
「GILL'S PIRATE SKULL」(セントチャールズに相当)。
白井さんがイエローを経営する場合には、
レッド経営者の岡田さんをイエローで捕まえるよりも先に、
自分自身がレッドに止まってしまう可能性が
高いと思われる位置です。
つまり、ここは安全位置にいる山本さんが
経営する形でしょう。
それをわかっているからこそ、
山本さんは全員の駒が
ややレッドに入りやすい位置にあることを指摘して、
「けっこう下流なんですよね、黄色って」
と渋面を作って見せます。

下流
 違うカラーグループに続けて止まる場合、
 最初に止まった場合は
 レンタル料をきっちり払うものの、
 次に止まった場合は現金が足りなくなって、
 現金を期待通り獲得できなくなります。
 この場合、「上流」は最初に止まるカラーグループ、
 「下流」は次に止まるカラーグループといいます。


これを聞いた岡田さんがたまらず
「また人を出汁に使う」と苦笑しつつも牽制します。
このあたりは大会慣れしている
ベテランプレイヤー同士の駆け引きというよりも、
単なるスキンシップのようなものかもしれません。
観客に軽い笑いが起こります。

この後、山本さんと白井さんの二人は、
お互いの現金を警戒しあいつつも、交渉成立させます。
山本さんはイエローと、
同時にこのゲームでここまで成績優秀な
パワー(電力水道)も同時にもらいうけました。
残りの権利書はすべて白井さんへ出します。
山本さんはイエローにとりあえず4軒建築。

(原文:1999年モノポリー日本チャンピオン 宮野徹
 監修:日本モノポリー協会専務理事・
 2000年モノポリー世界チャンピオン 岡田豊)

2008-10-29-WED

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