モノポリーエッセイ

世界選手権2004日本大会報告
〜第17回:決勝戦後編、新チャンピオン誕生〜


こんにちは。
世界チャンピオンが決まる決勝もいよいよ佳境です。
決勝卓を取り囲む国際色豊なメディア陣も
ヒートアップしています。


決勝卓のまわりはカメラの放列

決勝戦でスペインがオレンジを自力、
対抗してポーランドがイエローを経営開始、
といった局面のその後です。
アイルランドとノルウェーはようやく交渉をまとめ、
アイルランドがライトパープル、
ノルウェーが鉄道4枚を揃えました。
ちょっと遅かった気もします。
特に鉄道は早めに4枚にしておかないと、
オレンジやイエローへのけん制効果になりません(注)。
事実、この後のオレンジは余裕で増築して
4軒ずつに増やしています。

(注)鉄道の効果:
オレンジやレッドといったカラーグループは
権利書をそろえ、建設料を払って家やホテルをたてて、
その土地に泊まったプレーヤーからいただく
レンタル料を高くします。
一方、鉄道や電気・水道は家やホテルを
建てることができません。
しかし、鉄道は2枚になれば1枚の時の倍に、
3枚なら1枚の時の4倍に、
4枚なら1枚の時の8倍に、
それぞれレンタル料が大幅に増額されるので、
家やホテルを立てて手持ち現金が少なくなりがちな
カラーグループ経営者にとって、
なかなかの脅威になります。

そしてそのオレンジに、ポーランドが止まってしまいます。
イエローは崩壊。
この瞬間にゲームはかなり傾いてきました。
アイルランドには家が1軒ずつしか建っておらず、
対抗勢力たりえません。
このままではスペインの勝利は誰に目にも明らかです。
唯一お金を持っていたと思われるのはノルウェーですが、
鉄道とイエローを交換する交渉は
提示しているのかいないのか、
何度か話はしていたようですが、
権利書が動く気配はなく、
そのままゲームが進みます。

そうこうしているうちに、
アイルランドのアンソニー選手が
ニューヨークのホテルに着地。
これは救済されず、破産となります。
アンソニー選手は、
予選では上手な先行逃げ切りを披露していましたが、
追いかける側の立場となった決勝戦では、
これといった見せ場もなく消えていきました。
またの活躍を期待したいところです。

選手は残り3名となりました。
圧倒的に有利なのはスペイン。
残り2国、ポーランドとノルウェーは
協力して立ち向かわなければならない場面です。
ポーランドはイエローに家が2軒ほど残っていますが、
もちろんこんな勢力で
オレンジホテルにかなうとは考えられません。
一方のノルウェーは、
一回オレンジホテルに突っ込んでおり、
苦しいことは苦しいのですが、
それでもなんとかできそうな場面。

私見ですが、ここはポーランドも奮発して
ノルウェーを大応援しなければいけないところだと
思います。
イエローを中途半端な条件で経営スタートしてもらっても、
スペインにとっては脅威となりません。
圧倒的に有利なスペインを引きずり下ろすためには、
イエローの土地のどこかに3軒目を建ててもらい(注)、
そこにスペインが着地して
800ドル(または850ドル)の大打撃を与える。
そうしてオレンジとイエローが
「殴りあう」展開にしてもらうしかないのです。

(注)家3軒目の建設:
カラーグループの経営において、
家を2軒でとどめる場合と3軒目を建てる場合とでは、
その土地にとまった際に支払うレンタル料に
非常に大きな差が生じます。
例えばイエローの2軒のレンタル用は330ドルか360ドル、
一方3軒では800ドルか850ドルとなり、
レンタル料になり、
2軒の際の2倍以上にふくれあがります。
したがって、相手に大きなダメージを与えるためには
何とか3軒目を建てたいところです。

そういう展開になってはじめて、
ポーランドにも安くカラーグループを入手し
経営開始するチャンスが巡ってくるのです。
とにかくまずはスペインの「独走状態」を止めないことには
道は開かれません。
もちろん、その間、自分は両方の土地を
完全に回避し続ける必要があるので、
条件は非常に厳しいのですが、
何もしないで回っていて100%確実に負けるよりかは、
天文学的な数字に賭けてでも
「やるだけやってみる」ことが大切な気がします。

ギャラリー席に陣取っている地元日本人の観客たちも
そのことは重々承知しており、
「今しかない」とささやきあっています。
しかし交渉はおきず、
スペインのアントニオ選手はダイスを振り
マービンガーデンへ着地。
大きなため息が発生したのは、
糸井会長が陣取る日本人のいる一角だけでした。
「なぜやらなかったんだ?
 世界一を決めるゲームらしく、勝負して欲しかった」
苦笑しながらもそうコメントする、
「あと数分の世界チャンピオン」
岡田さんのコメントが印象的でした。


糸井会長と岡田さんが並んで観戦、
問題の場面では互いに大きなため息。


アントニオ選手は自分の身に降りかかりそうだった危機を
無事に回避したことがわかっていたのでしょう。
ここでライトパープルを追加経営開始です。
9軒建てます。
刑務所からフリーパーキングまでの第2辺上が
非常に危険なゾーンになってきました。
もう1周、ノルウェーとポーランドは
ここを無事に抜けられるのでしょうか。

やはり無理でした。
ポーランドがテネシー通りへ突っ込み、
950ドルの支払いです。
イエローを裏にしても500ドルも作れない状況。
これは仮破産です。
ノルウェーは
全力で救いにいく場面のように思われましたが、
救済せず。
ポーランドも破産となります。


スペインはイエローも追加経営して、
一気に最終局面に。


残ったのはスペインとノルウェーのみ。
ノルウェーは
抵当入りしているダークブルーの権利書の借金を
返したいところですが、
鉄道収入だけでは当分先になりそうです。
恐らくそれより早く
自分がライトパープルかオレンジに
止まってしまうでしょう。
しかしダイス運にかけるしかありません。
このあと2周、ノルウェーの選手は、
ペンシルバニア鉄道に着地して、
スペインの家を避けていきます。
さすがにここまで残るだけあって、すばらしい回避力です。
しかし逆転の可能性が1%くらいは出てきたかな?
という頃、ついに命運尽きます。
刑務所からのダイスで、
ノルウェー、3ゾロを振ってしまいました。
この950ドルは払えません。
ついに破産。
この瞬間、新しい世界チャンピオンが誕生しました。


セントジェームスプレースで破産となり、
ついに決着。



スペインとノルウェーは
握手でお互いの健闘をたたえる。



決勝まですすみながらあと一歩で夢破れた後も
メディアに真摯に答えるファイナリスト達。


次はいよいよ最終回。
おそらくゲーム界で最も華やかと思われる
表彰の様子を伝えます。

2005-12-26-MON

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