カリスマの名、
返します。

宮村浩気の「はじめの一歩」。

第5回 「似合う」って、どういうこと?


糸井 やっぱりヘアデザインのいいわるいって
100人いたら100人がみんな
わかるわけじゃないですよね。
どのくらいのひと?半分のひとくらいに
いいと言われたらいいんですか?
どんな感じなんですか?
宮村 パーセンテージはわかんないですけど、
たぶんピラミッドでとらえたら、
1番上の部分の考えは
たぶんそんなに受け入れられないようなのが
あるとは思うんですよ。
でも、スタイリッシュなものを
求めているひとにとっては、
そこの部分がすごくよくて、という。

でも、集客をするためには、そこから下の層の、
2番目3番目の層の支持を得られるようになると
ちょっとおしゃれで、
わたしたちも手に届く、というような。
糸井 切り替えができるんでしょうね。きっと。
今回はどれ用だって。そこがうらやましいなー。
ほかの職業では、例えば料理では
それはできないですよね、
手間はおなじになってしまうから。

ヘアデザインなら、このコストなら、
そのなかで1番になってやる、みたいな。
切り替えのできる商売って、
あんまりないですよねー。
宮村 だからたぶん限りがないのかなと思います。
糸井 飽きないですか?
宮村 飽きないですね。
たぶん、基本になるのって
あんまりないんですよ。3パターンくらい。
ワンレングスとボブとレイヤーっていう。
それのかたちのシルエット違いに、
長さや毛先の質感を変えたりとか、
その3つからバリエーションをつくるんで。
あとそこに、似あう似あわないというのが
入ってくると思うんですけど。
そこがお客さんをつかむ1番のポイントで。
糸井 「似あう」ってどういうことなんですか?
宮村 全体のシルエットを
ひしがたの雰囲気につくるのが
1番似あうんだとは言われていますよね。
糸井 そんな黄金分割みたいなのがあるんですか。
宮村 あるんですよ。
糸井 へー!じゃあ、いろんなスタイルあるけど、
何となくひしがただったりするんだ。
宮村 はい。
糸井 そうだったんだ!
宮村 ぼくも作品をつくるうえでは、なるべく
ひしがたのシルエットにするような。
そうすると万人向けになるんですよ。
糸井 そのひしがたをちょっとずつ
ずらしたりしながら、
ちょっととんがったものをつくったり。
宮村 そうですね。
糸井 じゃあ、あんまりきれいに
ひしがた狙っちゃうとおもしろくない?
宮村 そうですね。それはつまんないですね。
糸井 「つまんない」って言葉も、あるよね!
宮村 一世を風靡した聖子ちゃんヘアも、
ひしがたしてるじゃないですか。
糸井 あーそうだ、言われてみればそうだ。
宮村 で、紀香ヘアもひしがたなんですよ。
糸井 はー。言われなきゃわかんなかった。
そう言えばそうだ。何だろうね、それ。
それは美容学校では教わんないよね。
宮村 そうですね、何か造形学とか
そういうとこに行くんじゃないですか。
糸井 自分で似あうと思うのと、
ひとが似あうねって言ってくれるのとは
違いますよね、また。
それ、どっちに重きをおきますか?
宮村 やっぱひとの声でしょうね。
糸井 自分以上に。
宮村 ある程度年齢がいくひとこそ、
かたくなるじゃないですか。
逆に、そういうひとたちに
「こういうスタイルどうですか?」
と提案しても、もうだいたい自分を知っていて
顔がこうだからこういうのは嫌だとか、
そういう頑固チックなのがあるんですよ。
でも若いひとたちの場合には、
こっちからの提案はそのまま
すっと入るんですよ。
それプラス顔立ちのことを
少し言ってあげるんです。
「おでこが狭いから前髪おろしたほうがいいよ」
「あ、そうなんですか」
って。逆に信用してくれるんですけど。
少し上の世代に行くと、受け入れてくれない。
ただ、ある程度もっともっと上にいくと、
逆にすごく信用してくれるんですけどね。
糸井 自分を変化させたいって気分でしょうね。
宮村 「若返らしてよ」とか。
糸井 そこのところは宮村さん、
一瞬で見抜かなきゃだめだねー。
お客さんが座ったとたんに。
「どうしましょう」って言ったときには
もう決まってるんだね。
宮村 そうですね。ある程度。
こうだなあていうのを引き出しから
出すようにしているんですけど。
糸井 提案きかないひとには
本人の言うとおりにするしかないよね。
宮村 そうですね。
糸井 でも、ちょっとこうしようか?とか言うんだ。
宮村 はい。
糸井 それ、きいてると楽しいね、何か。
宮村 そこはお互いむつかしいとこなんですけど。
むこうも納得してこっちも納得すれば
そこは信用でつながっていくだろうし。

2000-04-09-SUN

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