カリスマの名、
返します。

宮村浩気の「はじめの一歩」。

第4回 ライバルについて


糸井 こんな話は、美容雑誌に載っているわけですか?
宮村 たまにインタビュー形式のものだと、
昔からの流れというのは話したりしますけど、
そこまでのつっこんだものというのは。
糸井 そういうのがいっちばんおもしろいのにね。
だって、自分でやってたって、
1番熱くなってるとこでしょ?
最近あいつがさぼってるとか、
例えば恋人ができて、
やる気なくなったりとか
あるじゃないですか。
そういうのって、そのまま
デザインのクリエイティブに出ちゃうわけだ?
宮村 出ますね。
糸井 かと言って、髪切ることだけに命かけてたら、
「ふくよかさ」がなくなりますよね。
そういうのって自分では
どういうふうに考えるんですか?
宮村 そうですね。
いろいろ情報をヘアデザインと言っても
過激なスタイルをつくるわけじゃなくて・・・。
糸井 使えるスタイルをつくるんだよね。
宮村 はい。一般のひとに受け入れられるものを
つくらなきゃいけないんで、
で、これだったらこのひとにも
届きそうかな、という範囲のものと、
ちょっと届かない、というくらいまでを
つくるようにしているんですよ。
そこから先になっちゃうと、
今度は自分で作品としてやればいいんで。
集客をするための作品としては、
「届いて、届かない」
ような、そういうぐらいまでが。
糸井 別に、商用の商品みたいな
アイデアもあったりするんだ。
宮村 はい。イメージはイメージでつくりますんで。
その下と上みたいに。
糸井 そうすると1番とんがったクリエイティブが
1番楽しくなっちゃったりはしないんですか?
宮村 それはその部分でアートなんですけど、
なかなか栄養につながらないものになるので。
ただそういうひとは、それを美術雑誌とかで
作品として発表すればいいですよね。
糸井 絵描きなんかだと、お客がついてこなくても
行っちゃうというのがあるじゃないですか。
でも、髪を切るっていうのは、
人間にくっついているものだから、
「作品づくり」とかみたいに
走っちゃわなくていいんだね。
宮村 はい。
糸井 これは、もしかしたら、
制約だけどうらやましいかもしれない。
「あいつさえわかればいいんだ」
っていう世界に行ったら、
ヘアデザインとしては、失格なんだね。
宮村 そうですね。
糸井 ショーのときの情熱は違うんだ?
宮村 違いますね。
糸井 そのときは違うライバル意識があるよね。
どっちが勝つか、みたいな。

宮村さんって、
「あいつには負けたくない」
とかいうひと、いる?
宮村 いましたよ。ぼくの先輩で。
先輩がいいのをつくったら、
ちきしょう、ぜったい負けないとぼくは思って、
向こうもそうだったと思います。
おたがいに出して、
それを下で見ている後輩たちは、
「今回いいよね」
「今回こっち駄目だね」
とか、そういう目で。
糸井 きついねー。
でもそういうのはわかるんですか?
宮村 もう一目瞭然ですね。
糸井 そのまま劇画にしてもおもしろいよ。
宮村 先輩もほんとに負けず嫌いで。
ぼくも負けず嫌いで。
つまり、いい意味でのライバルという感じで。
糸井 ヘアスタイルとかメークとかって、
バリエーションに限りがありますよね。
俺は出尽くしたのかなあって
落ち込んだりすることはあるんですか?
宮村 こんなパターンしかないのかな、
というときはあるけど、
でも、そう思ってしまうと
どんどんこうだめになってしまうので、
常にこう何か、どこか変えていかないと。
でも、基本というか、自分のスタイルの基本は
はずさないようにしたいなあと思いますけど。
糸井 壁にぶち当たったなと思うことはあるんですか?
宮村 壁というか・・最近はそういうの全然ないですね。
糸井 今はのりのり自信たっぷりという感じなんだ。
宮村 何か、そうですね。自分でやりたいときですね。
糸井 俺に任せれば何でもできるぜ、っていう。
宮村 思ってはいないですけど。
糸井 でも、気分としてはあるでしょ?
答えは出てないんだけど、
「宮村さん、これ難しいけどお願いします」
っていうのがあったら、答え出ないけど
「できますよ」
と答えますよね。
そういうの、いいんですよー。
じゃあどうするんですか、って言われても
まだ自分ではわからない。
やってみるとわかるよ、っていう。
何なんだろうなー。あれ。
宮村 わかんなくて、
ああどうしようどうしよう、
って思いながら撮影に入ったときも、
何かこうふっと出てくるのがあるんですよね。
はじめから考えてたときよりも
はるかにいいものになってしまう
場合もありますから。
糸井 おもしろいなー。
打率じゃないけど、
失敗っていうのはあるんだけど、
失敗を失敗に見せないだけの説得力があれば、
大丈夫ですよね。
宮村 最近は、反応がこわいですよね。
例えば撮って、もうまわりのひとも
目が肥えているんで、編集のひとが
ポラロイドを見るときに一目瞭然で
かわいいとすぐに
「あーかわいい!」
って言うんです。
糸井 あー、言うね。
宮村 でも、言わないと、
「ふーん」
っていう感じなので、
あ、これいけてねえんだなあ、って、すぐ。

2000-04-08-SAT

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