カリスマの名、
返します。

宮村浩気の「はじめの一歩」。

第3回 商品としてのヒットヘアー


宮村 身長がないとかそういうので
モデルになれないとか、
顔はかわいいんだけど
スタイルがあまりよくないとか。
でもヘアの写真を撮るとすごくかわいいとか。
そういう面では、素人さんのほうが。
読んでるひとも、
「ああ、これプロのモデルだろうな」
という見方ではなくて、
「素人でもけっこうかわいくなれるんだ、
 じゃあわたしもこうなれるんだな」
というひとが、すごい殺到したと思います。
だから、ほんとにいいスタイルをつくって
それが受けると、そのひとつのスタイルで
だいたい200人から300人のお客が来るんですよ。
それの積み重ねというか。
まあヒットヘアーと呼ばれるんですけど。
糸井 200から300の商品と考えると、
だいたいひとりあたりいくらなんですか?
宮村 だいたい12000円くらいですね。
糸井 そうすると、200とすると、240万。
1クリエイティブが240万の売上なんだ。
・・・案外、安いね。
200とか300回転すると、終わらせるの?
宮村 飽きちゃうんですね。
糸井 それはつくる側が?見てる側が?
宮村 つくる側もそうですし、たぶん見てる側も。
糸井 両方が。
宮村 200人300人というひとたちが
それをやって、また次々とどんどん出てきて、
またいいものがあれば、またそうなったり。
糸井 おもしろいなあそれ。
そんな話、きいたことないよ。今まで。
宮村 それが集客をするための1番の近道ですね。
例えば200人来ました、ってなったときに、
それで終わりにしてはいけないんです。
それで終わればそれまでなんですけど、
200人のひとが、今日カットして
明日会社とか学校とかに行くと、
「どうしたの?それ、どこでやったの?」
ってなるじゃないですか。
そしたらもう、
「ヘアディメンション」
「え、誰がやったの?」
「宮村さん」
「え、じゃあわたしも今度行く」
って、そしたら自然な広告になるじゃないですか。

そっから200人が400人、
400人が800人になっていくじゃないですか。
そこで紹介して、来てくれるようになったら
ぼくたちの勝ちなんですよ。
切ったところで終わってしまって
「もう来たくない」
「こんなもんかなあ」
というようになったら
ぼくらの負けなんですけど。
糸井 じゃあ一方では街に出て
モデルスカウトのような
足をつかうことをしながら、
言わば200人売り切り商品というか
次のカットのデザインを考えているわけだ。
その研究っていうのはどうやってるの?
宮村 ボブが流行ったあとに急に
ロングが流行ることはないんですよ。
糸井 ないね(笑)。
宮村 それはもう、
美容師の無責任な提案になってしまうので。
切ったからには、
今度はそこからの微妙な変化ですよね。
そこからパーマをかけたりとか
カラー入れたりとか前髪つくったりとか。
そこらへんのちょっとのニュアンスを変える、
それを提案してゆくことになりますね。
糸井 研究会みたいなのはあるんですか?
宮村 そういうのは特にしないんです。
出したものに対して、
これはこうやってこうパーマした、
とかいうのをスタッフ内では知らせますけど。
糸井 でもさ、美容師の間は、
ライバルじゃないですかある意味。
でも、同時にチームですよね。
その関係ってすごく興味あるんですけど。
「これは教えねえ」っていうのもあるでしょ?
宮村 はい。プライドの高いやつは、
例えばぼくが1番下で、仮にいいものを
つくっちゃったとするじゃないですか。
先輩としては、
「そんな、お前のなんかきくわけないじゃん」
そういうひとも、かげでこっそり、
どうやって切ってるのかなあ、って見たりする。
後輩には「こうやるんだよ」と言えば
素直にみんなきいてくれるんですけど、
そういう盗み見とか・・・。
糸井 それはおもしろそうだねー。
きついけど、1番楽しいよね!
やっぱり、やきもちやいたりするんでしょ。
「こんないいの、つくりやがって」とか。
宮村 そうですね。
逆にぼくが後輩にいいのをつくられたりすると、
「何だよ、じゃあこっちも、
 それに負けねえもんをつくろうか」
っていうことになって、
知らないうちにどんどん高くなっていく。
糸井 はー。その話が1番わくわくするなー。
そうすると、メディアに
自分たちをばらまいている時期というのは、
そういう事実をたくさんのひとに
知らせたいというよりは、
「俺らがこういうところにいるんだよ」
というのを、いつも確認していたい
というだけだったみたいな気がするね。
宮村 そうですね。

2000-04-07-FRI

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