坂本美雨のシベリア日記。
一日一日が、かけがえのない一日。



1/9/2002 
シベリア鉄道の旅 DAY 14 PART 2
ウリァーナの家。



彼女の家は、木造の小さな家。
木の小さな門を開けると、
家の外で無邪気な犬が犬小屋に繋がれたまま、
キャンキャン動き回っている。
家の中に入っていくと、アヨーシャさんの家のように、
もわぁ〜んとあったかい空気に包まれる。
またまた、カメラのレンズ、曇る。
入ってすぐがキッチン。
いきなり、バブーシカが、抱き締めてくる。
バブーシカとは、おばあちゃんのことだ。
彼女は鮮やかなピンクの花柄のスカーフを頭に巻いて、
顎のところで結んでいる。
(一時期日本でも流行った、頭に巻くスカーフや布を
“バブーシカ”と呼んでいたが、
それはロシアのおばあちゃんということなのです。)
キッチンと繋がった部屋には
小さなソファーとタンスがあり(リビングルーム?)、
その奥にダイニングテーブルが見える。
親戚が集まっているようで、
みんなの笑顔とHUGに迎えられる。
ウリァーナは凍った髪の毛を溶かすように
三つ編みの髪をほどいて、
ブロンズ色の髪をブラシでとき、
またきつく編み直す。
その腰まである髪の長さにギョッとする。
軽く揃える以外は生まれてから一度も
切ったことがないそうだ(!)。





昨日会った、ウリァーナのお姉ちゃん
オーリヤも家で待っていた。
ポッテリな真っ赤なクチビルが可愛い★。
お母さんは随分とおめかしに気合いが入っていて、
おじさんはただただアヤしい‥‥。
胸元に入れて持って帰りたいくらい可愛い子猫がいて、
ブルブルブルブルふるえていて、
寒いの? 寒いの? とむりやりずっと抱いているが、
どうやら私の手が冷た過ぎてふるえていたらしい‥‥。
ごめんよ。台所の端にはダンボールと樽が置いてあって、
布巾がかぶせてある。
何かがモゾモゾと中でうごめいているので、
恐る恐る布をまくってみると、ニワトリだった!!
ニワトリも、マイナス20度以下では
さすがに死んでしまうらしい。
だからダンボールに入れて
家の中に置いているらしいのだが、
しかしこの狭いダンボールに
何匹も一緒に閉じ込めるのもどうなのかなぁ。
外に出て、犬とも遊ぶ。
もちろんマイナス温度の世界。
かわいそうとも思ってしまうけれど、
犬は犬で身体も精神も適応しているわけだから、
これでいいのだろう。
ごはんが骨だけ? にもちょっとびっくり。



ウリァーナとバブーシカと一緒に御飯の仕度をする。
ペルメニと、ブリニー。
ペルメニは、ロシアン水ギョーザ。
ブリニーは、ロシアのクレープ。
薄くササッと焼くのだが、
さすがウリァーナ、手際が良い。
坂本家では、クレープを焼くのは
兄の役目だったので、
あまりやったことがないが、
なんとかうまく焼くことができる。
次に、パン生地のようなかたまりを
餃子の皮のように薄くして、中身の肉を包む。
それを大量に作って、どんどん茹でていく。
ペルメニを茹でている間に、漬け物を切る。
様々な野菜の漬け物。
ピクルス、ピーマン、なす、きのこ。
ピーマンの色彩がものすごく鮮やかで、
一つ一つが違う色をしていて、
ピカピカに光っていて、本当に綺麗だった。
全部家庭菜園で収穫した食材。
漬け物は長い間漬けられていて、
瓶の封は開いていなかったから、
本当はとっておきの物なんだろう。
そんなところからも、
日本からゲストがやってきたこの日が
家族にとってスペシャルイベントなのだ、
という事が伝わってくる。
ガマンできなくて、切りながらピクルスをつまみ食い。
すっっごく美味しい!!



食卓に乗り切らないくらいお皿を並べ、
さぁやっとみんなで食事。
ボウルに積まれた大量のペルメニは、
サワークリームとロシアンわさびをつけて‥‥キャー!
むっっっちゃくちゃウマい!!!
ブリニーは、サワークリームや自家製ジャムをつけて、
焼きたてを頂く。これもほんっっとうにオイシイ‥‥。
止まらなくなる。CREWにも
「早く! 冷めないうちに早く食べて!」
とすすめて、みんなで食卓を囲む。
CREWのみんなもおじさんと仲良くなって、
よかった(笑)。

食事が一段落したところで、
エカテリンブルグに古くから伝わる歌を
家族で歌ってもらう。
おじさんが一人で暴走して
家族が呆れているのが可笑しかった。
おばあちゃんの歌っている時の口が
たまらなくかわいい。
お姉さんのオーリヤはお年頃の若者らしく、
たまに「やってらんないわよね〜」
という顔をしていた(笑)。
そして、恥ずかしくて気が進まなかったけれど
あまりに期待されているのでしょうがなく、
自分も「Shanandoh」を歌う。
小学校の頃からコーラスグループで歌っていたこの曲。
アメリカの民謡ともいえるかもしれない。



バブーシカは私の亊を
「もう一人の孫」と言ってくれた。
初めて会った人々なのに、
家族の中にこれほどまで受け入れられている、
というのが信じがたい。
なんでこんなに優しくしてくれるんだろう?
なんで初めて会ったのに
これほどまで私の事を分ってくれているような
目をしているんだろう?
おばあちゃんは、なんでも分っているような気がする。

家族から、木のカップとスプーンの置き物を
プレゼントされた。
オーリヤは自分の描いた馬のイラストを
プレゼントしてくれた。
最後におばあちゃんとおじさんが
「私達が出会ったのは偶然ではないんだ」と、
そして、幸せになるようにと、
2人の言葉で、願ってくれた。

本当に心から家族に感謝して、バイバイした。
だけどやっぱり、
アヨーシャさんの家に行った後に感じたような、
自分に純粋さが足りないような気持ちが
どこかに渦巻いている。
今日かれらが与えてくれたような、
同じような愛情を私も返せるか?
ずっと同じ気持ちで居られるのだろうか?
と考えてしまう。
なんで私にこんなに良くしてくれるんだろう?
という風に思ってしまう事自体、
自分に誠意が足りていないような、
後ろめたさが残る。
でもこのあったかさはうそじゃなくて、
自分の中にある親愛の情もうそじゃなくて、
そのことだけが本当。
絶対忘れないとか絶対また会いに来る!
とか誰にも約束できないけれど、気持ちだけが本当。


坂本美雨オフィシャルホームページ
「stellerscape」
詩画集『aqua』
長年書きためてきた詩や散文と、
山口由起子さんの絵がいっしょになり
詩画集『aqua』ができました。
リトルモアより刊行です。
(定価1,400円)


ジョアン・ジルベルトの
トリビュートアルバムに
参加しました!

『フェリシダージ・トリビュート・トゥ・
 ジョアン・ジルベルト』


9月3日発売!!
東芝EMI/TOCT−25177/
¥3,000(税込)



9月に初来日したボサノヴァの神様、
ジョアン・ジルベルト初来日記念アルバムに
ナタリーワイズと一緒に1曲参加しました。
ジョアンのカヴァーを中心に、
ジョアンの歌声にインスパイアされた
オリジナル曲も収録予定です.

<参加アーティスト>
宮沢和史・畠山美由紀+Cholo Club・
小野リサ・THE BOOM・
Nathalie Wise&坂本美雨・
Ann Sally・青柳拓次・
saigenji・CHORO AZUL・
ナオミ&ゴロー・Dois Mapas・
中村善郎・AURORA・
So Aegria(順不同・敬略)

くわしくはこちらのサイトへ

坂本美雨さんプロデュースのアクセサリー
“aquadrops”が誕生しました。
aquadrops(アクアドロップス)は、
坂本美雨さんがデザイン・製作、
トータルプロデュースを手がける
オリジナル・アクセサリーです。
美雨さんからのメッセージをどうぞ!
aqua drops...

揺れる水の粒。
したたる、春の慈雨。
冷たい水に触れる、指先。

透明感のある繊細なエレガンス、
毅然としたハードさ、フェミニンな揺らぎ。
耳から首筋、鎖骨へのしなやかなラインは
女性の美しさの象徴のような気がします。
そこを、水滴が一粒流れ落ちるような...。
そんなイメージを抱いています。

幼い頃から、母親や友人や自分のために
ビーズでアクセサリーを作るのが
好きでたまりませんでした。
最近、人を綺麗に見せるラインの洋服が
どんどん消えていき、
女性がドレスアップして行く場所も少なくなった。
そんな中で、おもわず背筋がピンと延びるような、
髪をキュッとアップにして出かけたくなるような。
生活の中で愛しい人や物を
真っすぐに見つめられるような。
自分が大切に作ったピアスを
耳にかける時に感じる、そんな気持ちを、
身につける一人一人にも感じてもらいたいと思い、
一つ一つ作り始めました。

坂本美雨

http://www.miuskmt.com/
 
限定通信販売もスタート!

aquadrops取り扱い店
<20471120>
東京都渋谷区神宮前3ー29ー11 
03ー5410ー2015
12時〜20時
<RICO>
渋谷区恵比寿西2ー10ー8 
03ー5456ー8577
12時〜20時

坂本美雨さんへの激励や感想などは、
メールの表題に「坂本美雨さんへ」と書いて
postman@1101.comに送ってください。

2003-10-10-FRI
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