糸井 | お店にはいま 成犬が2匹、子犬が3匹、 猫も3匹、ケージに入っていますね。 |
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友森 | この子は「おばあちゃん」です。 |
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糸井 | 名前が、おばあちゃんなんですか? | |
友森 | 名前が、おばあちゃんです。 | |
糸井 | おばあちゃん、かわいいね。さわがないね。 | |
友森 | 最初は吠えてたんですけど、 ここにきて、気持ちが安定すると 吠えなくなりました。 日本犬は、あまりむだ吠えしないんですよ。 愛護センターにいたときは、 センターの中をぐるぐる徘徊してたけど、 いまは回らなくなったし、 毛もフワフワになってきました。 |
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糸井 | ちょっとゼエゼエしてるね。 | |
友森 | 肺に、癌が転移してるんです。 |


おばあちゃんは、友森さんが2013年6月に
東京動物愛護相談センターより引き取ったのじゃ。
フィラリア陽性で、
炎症性乳癌であることが判明。
肺まで転移していたので手術はしないことにした。
<友森さんのTwitterより>
「長くないだろうから、美味しいもの食べさして、
高いサプリメントをたくさんやって、
人の手は怖くないのを教えよう」
「おばあちゃん爆睡。
乳癌だけど、誰かもらってくれないかな。
肺転移してても元気だし」

糸井 | 年は、わかってるの? | |
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友森 | わかんないです。 放浪していたところを2月に収容されたんですが、 あきらかに大きい乳腺腫瘍がぶらさがっていました。 そのとき店で老犬を3〜4頭保護していたので うちの引き取りは無理だったのです。 「いまはこの子を出せないし、 ほかの団体もだめだったら、処分なんだろうな」 と思っていました。 「ごめんなさい」と手を合わせてた。 センターに入ると、ふつうは1週間で殺処分だから、 翌週、いなくなってるはずなのに、 行ったらまだグルグル回ってて。 |
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糸井 | まだいたんだ。 | |
友森 | センターの人に 「あれ? いつ処分だっけ?」 と訊いたら、 「あぁ、あの乳腺腫瘍の子ですよね。 あの子、広場に出すと ずっと回ってて、機嫌がいいんですよ」 |
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糸井 | 機嫌が(笑)。 | |
友森 | 「どうするの? あれ」 と、さらに訊くと、センターの人は、 「ほら、ミグノンの老犬枠が いずれは空くじゃないですか」 と。 |
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糸井 | そんな枠‥‥。 | |
友森 | 「それまで、センターで飼っておきます。 いつでもいいですから来てくださいね」 と言われました。 |
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糸井 | センターとミグノンは つねに手を読み合ってる気がするなぁ。 |
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友森 | そんなふうにして センターの人たちは、この「おばあさん」を みんなでかわいがってたんです。 そうこうしているうちに、 うちにいた老犬が2頭、続けて亡くなっちゃって、 「場所が空いたな」ということになり、 迎えに行って、ここにいます。 |
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糸井 | ミグノンのホームページに紹介されてて、 引き取りのおためしをした 「よしだただし君」はどうなったの? |
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![]() ▲よしだただし君 |
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友森 | 中野新橋のシェルターにいます。 この前のトライアルは結局成立しませんでした。 そのあとも申し込みがあったんですが、 10kgを超えるペットを飼えないマンションに 住んでいらっしゃることがわかって その話も流れてしまいました。 よしだ、幸せになってほしいんだけどな。 |
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糸井 | うちのカミさんが、よしだのこと、 いつも気にしてるんだよ。 |
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友森 | 「ほぼ日」の事務所の入口の ゴリラ人形の横でよしだを飼うのはどう? よしだはあんまり動かないし。 |
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糸井 | 木とか壁を食べちゃうとかいう噂が‥‥ | |
友森 | あの子、まだ1歳だから、歯が痒いみたい。 | |
糸井 | でも、訓練すれば大丈夫なんですよね? なぜ1歳ってわかったの? |
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友森 | 捨てた人が判明したから、 誕生日がわかったんです。 |
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糸井 | 捨てた人? | |
友森 | 捨てたのはブリーダーでした。 お店でよしだが売れ残って、 いっしょに住む家族を募集してたところを 見に行ったお客さんがいたんです。 その人が、うちの譲渡会にいたよしだに わざわざ会いに来てくれました。 「この犬が家族募集に出てるのを見たんだけど もらわなかったんです。 ミグノンさんは、どうしてこの犬を 保護したんですか?」 と訊かれました。 「捨てられてて、 センターで期限切れしてたから引き取った」 と言ったら、その方、 「あぁあ」とおっしゃって、 そのときの写真を見せてくださいました。 まぎれもなく、よしだでした。 「右目逆さまつ毛だし、間違いない」(笑)。 |
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糸井 | ほんとうに捨てたの? センターに持ち込んだんじゃなくて? |
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友森 | うん。 よしだは道で保護されたんです。 |
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糸井 | あんな特徴的な顔なのに‥‥。 | |
友森 | 他県から東京まで捨てに来たみたい。 動物の遺棄は、犯罪になるんですよ。 |
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糸井 | かわいそうに。 | |
友森 | まぁ、訴えることもできるかもしれないけど、 そういうのも、なんだか嫌でしょう。 相手方を訴えて、証拠を集めて、 ガーガーガーガーやって それに動物とボランティアさんが 巻き込まれていく。 |
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糸井 | そうだよね。 | |
友森 | 愛護団体だから、 ほんとうはそういうことも やるべきなのかもしれません。 みんなにはこう説明しました。 「今回は、黙ってよう。 あまりにも、似たような犬が 次々捨てられるようだったら、訴えよう。 よしだで1回こっきりだったら、 知らなかったことにしよう」 |
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糸井 | なんで「よしだ」っていうの? | |
友森 | 愛護センターで、 「よしだ、よしだ」って呼ばれてたんです。 愛護センターの職員のみなさんも おもしろい人が多くて、 「よしだ」と呼んで、かわいがっていました。 もともと、ああいう犬種を好きな愛護団体がいて、 12月にお取り置きを申し出たらしいんですけど、 それが春になっても迎えに来なかった。 センターの人たちは3ヶ月ものあいだ、 よしだを養っていました。 で「年度末だし」ということで私が引き取りました。 |
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糸井 | そうだったんだ。 | |
友森 | よしだ君ね、すごくおとなしいんです。 | |
糸井 | 怖がりで、散歩とかできないんだよね。 | |
友森 | 散歩したことがないから、外の世界が怖い。 | |
![]() ▲シェルターにいた、よしだ君。 |
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糸井 | 何kgあるんですか? | |
友森 | 25kg。 よしだは怖くて外を歩かないことはわかってたから、 犬のケージにいれて「よいしょ」と運んだら、 「あ、腰やばい」となりました(笑)。 |


よしだ君は、あたらしい家族が見つかったのじゃ。
ほんまに、よかったのぅ。

(つづきます)
2014-01-06-MON